2016年3月27日日曜日

水中呼吸装置トリトンは眉唾ということで

カラパイアにて、これはすごいと思ってしまう発明品を目撃しました.

トリトンという水中呼吸器具で、口にくわえた器具が水中の酸素を取り込んで浅い水深で45分間活動できるそうです.こんな風に.
ちなみに日本人にとってのトリトンはこちらの映像です.トリトンはトリトン族の末裔ですから水中呼吸器具は不要でした.
トリトン族ではなく人間であった「海底少年マリン」は水中呼吸ガムを用いていました.こちらの方が発明品とマッチします.
さて水中呼吸装置のトリトンですが、コンセプトとしては、水中の酸素を、特殊フィルタで採取し、ポンプで圧縮し肺へ送るという原理.

水中を泳いでいるビデオまでupされていて大変興味深く観察しました.しかしこれは製品イメージ画像であるらしく、このような実用段階にまで達しているわけではないらしい.

ひら的着眼箇所としては、以下を考えました.

・フィルタで仕切られた2つの部屋で、酸素分圧が低い水の部屋→酸素分圧が高い空気の部屋へと酸素を汲み上げる必要がトリトンにはあるが、これをどうするのか?

・空気の部屋の気圧をポンプで減圧させて、酸素分圧を劇的に下げれば、水中→気中への酸素の汲み下げが可能になるかもしれぬ  (後段で再び加圧するのはいわずもがな)

・トリトンにはポンプとバッテリーが搭載されるようだが、そのようなポンピングが可能なほどの大容量ポンプとバッテリーだとは思えない
・減圧方式によって水中から汲み下げられる気体は、酸素だけではなく、二酸化炭素や窒素も分け隔てなく混入してくるのであろうか? 解説では酸素だけを選択的に採集すると読める.

・ならば特殊フィルタの穴径で酸素分子だけを選択分離できるとでもいうのか?
   窒素分子直径  3.78 Å
   酸素分子直径  3.64 Å
   二酸化炭素直径    短径 3.3 Å    長径 4.6 Å
この数値だと、窒素は除去できる可能性はあるが、酸素と二酸化炭素は混ざってしまう.もっとも、3.78/3.64Åを分離できる膜を量産できる気はしないが.

・空気は窒素80%酸素20%ぐらいである.ぶっちゃけ水中で呼吸する人にとっては、酸素の4倍も窒素が必要なのであるが、トリトンはその窒素も水中から採取するのだろうか?

・飽和溶存気体量ではあるが、水1リットルあたり酸素は28.3ml、窒素は14.3ml溶ける.水への融けやすさが酸素:窒素=2:1なのに、水から汲み下げたい気体は酸素:窒素=1:4だという要求からすると、恐らくトリトンは「窒素の再利用」を達成しないと実用化が難しいと思われる.

・イメージビデオでは、排気を水中にバンバン放出しているが、トリトン実用化の暁には排気されるのは少量の二酸化炭素のみとなるのだろう.

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このトリトン、売値が$299だの$399だのと云われ、クラウドファンディングで資金集めに成功しちゃったらしいんだけど、ひら的には眉唾認定しときます.投資なんかしてあげなーい.

エイメン


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16 件のコメント:

  1. 発明した人はデザイナーさんみたいですね。
    この人のページ(?)みたいなところに行くと、「僕の考えた未来の道具」的な書き方してますね。バッテリーは現行の30分の一のサイズにしなきゃいけないねー。とか書いてますけど・・。
    この人詐欺に巻き込まれてないですかね。心配です。

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    1. この人が詐欺そのものだったりして、おぞー

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  2. デザイナーさんのページが載っているサイト。
    https://www.behance.net/jeabyun
    英語なのでよくわからないけど、実現に向けての科学的裏付けが薄弱な感じを受け取ってしまいました。
    誰か別の人がそのあたりを担当しているならよいのですが。
    ここから集金サイトにもリンクされているので、巻き込まれているわけではなさそうですね。

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    1. 意匠屋さんみたいですかな

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    2. 皆さんこのページ見て出資する判断しているならそれはそれで良い気がしますね。

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  3. う~ん、伏龍の潜水缶を思いだしちゃったぜい。

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  4. 気圧を考えないと空気の分圧と水の分圧が時間をかけて平衡し、最終的には空気と同じ分圧相当となります。
    水中でも十分な隔膜面積で空気と接しますと同じく平衡すれば空気中と同じになり、肺で交換して約100mmあれば末梢組織に30mmくらいで届き、酸素、炭酸ガスともに移行し平衡して安定します。
    (幕は分子サイズより遙かに大きく、水の親水性、撥水性も含めて機液分離できればOKです)
    交換速度が必要十分量であればよく、酸素が多すぎても酸素中毒になり、炭酸ガスが多ければ交換的に酸素を吐き出してしまい、一気に危険領域になります。
    (ヘモグロビンは結合すると言うけれど、活性炭のようにドンドン吸い込んであまり吐き出さないのではなく懐が深いような感じで多ければ吸い込み少ないと吐き出す、少量で多くの呼気、酸素と炭酸ガスを扱える訳です)

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    1. 機液分離 気液分離です。
      見てきましたが、さすがはコリャー・ネーズミサイズでも無理というレベルです。
      大きな水槽に分離膜を張ってnekoを入れて1週間くらい水中で生活出来たとかで、不可能ではないようです。(幕が折りたたんでないので怪しいと思ったのですが)

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    2. ほう、猫が.シュレディンガーの猫のようでなければよいのですが

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    3. 水中nekoを探したら、水面も飛べるんだ。
      www.youtube.com/watch?v=OULR8ccvWZo

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    4. nekoではなくてハムスター版
      aqua2ch.net/archives/15084216.html

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    5. 気相液相 ガス交換 テフロン膜
      何のことはないゴアテックスです。
      www.dic-global.com/ja/r_and_d/review/pdf/dic_r_and_d_1999_publish10.pdf
      気液だけ分離し、ガスは分圧に従って通過するので、面積さえあればエネルギーは要りません。
      気相では分子運動の関係で拡散が早く、液相では常に流れて新鮮な流体がないとガス交換がされません。
      逆にROは限外分離で浸水疎水に関わらず、分子の何倍かの穴で分けるので、通過圧力が必要です。

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    6. ちょっと間違っていました。
      ROは液体への浸透圧を克服して分離。
      www.dic-global.com/jp/ja/products/membrane/
      気液分離とガス分離があるようです。
      潜水に使う場合、液側は膨張がないのと圧力負担が必要なく表側に向いて流れてくれれば良く、気側圧は液圧と同じになり、容積が大きく深度が変わると、補給、放出が要り、また幕面に滞ると肺に届かないことになります。

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    7. さらに説明してあるページ。
      www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/5040.pdf

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