2016年4月6日水曜日

STAP細胞を改めて振り返ってみる (1) USで再現?

3月にUS発のニュースで、STAP細胞に似た手法で細胞の初期化に成功した、というのがあり、STAPの状況をおさらいしてみたくなりました.予感では5回シリーズぐらいになりそうに思いますが、はてどうなることやら...

STAP騒動からもう2年が経ちますが相変わらず面白さ満載と思えてなりません.

・騒動の中心人物である小保方については、あの「STAP会見」の時点でこいつはダメな奴だ、と断定したわたしでしたが、その後の小保方晴子御本人が「STAP潰しの陰謀」を口走るという、陰謀論大好きなヒラサカにとって美味しくてたまらん餌食になってくれています.
・その小保方説に乗ってかどうか知らないけど、「STAPを潰そうとしている勢力の存在」を信じるネット民も一定量存在するようで、そいつらには「陰謀論の行使の仕方がなってない」とお説教をしたくも思います.
・さらに、ES細胞を混入したのは誰なのか?というミステリーもある.(そもそもES混入説自体が理研のでっちあげという陰謀論もあるから余計に面白いのだがw)
・な、なんと「あの日」が出版された.

何を信ずるか、、、それによって色々な図式が描けてしまうSTAP細胞事件は、まことに楽しい.

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まずは、2016年3月にUS発のSTAPライクな初期化現象について、ニュースは何と云ってるのか?
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14306.html

損傷を受けたマウスの骨格筋のなかに、新しい幹細胞の集団を発見しました。これは分化した筋原性細胞が部分的に初期化されたものであり、多能性によく似た状態を示しました。
これは、STAPのように意図的に細胞を虐めたのではないが、怪我した部位の筋肉細胞が、赤いキャンデーを食べたメルモちゃんのごとく「初期化」されたと言ってます.なのでSTAPに似た現象と云ってもよいでしょう.

その細胞を単離して培養したところ、幹細胞状態(ES細胞様)になり、皮膚、筋肉、心臓、肺、腎臓、脾臓、および脳などの組織をつくったことが証明された。しかし、生殖機能の臓器(胎盤)をつくる能力はまだ証明できていない.
STAPがもし本当だったら、STAPは胎盤にも分化できたわけだからSTAPの勝ちではある.しかし、STAPが取り下げられた今となっては、このニュースの細胞が事実なら新発見※となる.

ただし、既存の幹細胞が傷口に集合しただけなのかもしれません.
STAPでは、TCR再構成によってその残念な仮説を否定した、いや否定できなかったとかなんとか怪しい成り行きでしたが、論文自体を取り下げてしまった時点で真偽不明になったみたいです.このニュースの細胞でTCR再構成と類似な試験をしたのかどうかは記事からは読み取れません.

実はこのUS発の細胞の件は、2015年の12月に既にネットで話題になっていたんですが、それから3ヶ月経過した今でも上でリンクした記事がせいぜい目立つくらいで、さっぱりメジャー化していません.洋の東西を問わず、羹に懲りて膾を吹くというのは共通なのかもしれません.あるいは科学業界からはゲテモノ扱いされているのかも.

真偽については外野から見守るしかなさそうですね.

※「だから小保方は正しかった、小保方名誉回復」には絶対になりませんので、幼稚な陰謀論者は素直に死のうね.その件は本連載で後に書きます.

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自殺された笹井さんにはiPSへの対抗心が在ったという週刊誌ネタもありました.仮にSTAPが真実だったとして、それがiPSを打ち負かす最終兵器になりえたかどうか?

iPSは最初から人体の細胞でやれる、できる、再現性あり、というレベルの発見でした.だからすぐに応用研究に着手できました.ノーベル賞もサクッと授与されました.

しかしSTAPはマウス細胞でしたから、人体細胞で出来るかどうかはやってみなけりゃ判らないという基礎的研究でした.人体細胞っていうのは動物細胞よりも気難しい細胞で、動物実験では成功したけれど人体細胞ではうまく行かなくて断念しました、なんていうネタはたくさんあるんです.

だからわたしは「あの日」のパラレルワールド的後日談を次のように予想するんです.

あの華々しいSTAP発表の熱気が持続したかというとそうではなかった.「人体細胞への応用で足踏みしてます」という冷却期間が長く続き、やがて人々の記憶から忘れ去られた頃になってドイツの研究機関が人体細胞でのSTAPライクな現象を発見した.人体細胞を初期化する条件はマウスでのそれとはだいぶ異なるものだったが、過去に遡ってバカンティ+小保方+ドイツチームがノーベル賞を共同受賞した...

もしもSTAPが再現されたとしても、このようなスローテンポな成り行きで、笹井さんの野望が直ちに達成されはしなかっただろうと思います.

かしこ

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2 件のコメント:

  1.  新説を唱えると、そりゃSTAP細胞だろうというやり取りがあらゆる学会でなされている。日立金属の久保田博士のCCSCモデルなどもそのターゲットになった。この理論、トライボロジー(機械の摩擦を扱う分野)で半世紀近く謎とされてきた境界潤滑の原理を解明しようとする説で、自動車の燃費などにかかわる重大分野。博士は潤滑油が過酷な摩擦を受けるとダイヤモンドに変質するとラマン分光法の結果より主張。ところが某大学教授が「それはSTAPだ。」と根拠も述べず。切り捨てようとした。ところが豊田中研の研究者はそのことを知っていて絶賛。その教授はは名誉教授であり名誉がかかわることなので誰とも言わない。

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    1. 「STAP」が「異端」の意味に転化していますね(笑)

      ダイヤモンド析出説はとても面白いですね.オイル添加剤の触媒材料研究が一気に進みそうでめでたいです.
      ちなみにトライボロジはわたしの昔の仕事のビデオデッキでも重要なテーマでした.テープには潤滑剤が塗られていたり、ダイヤモンドライクカーボンがスパッタされたりしていたんです.

      学会にせよ会社にせよ、多少は腐敗したまま惰性で流れているものです.
      ところが、たまにやりすぎる奴が現れて、容認できないくらい酷い腐敗をやらかして明るみにしてしまい、その結果少しの腐敗も許されない窮屈な体制に転換させてしまうことがある.それが建設業界でいえば姉歯でした.学術業界でいえば小保方でした.後続者にとっては大迷惑でお気の毒です.

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