ガンダムUC 1-5のネタバレと少々残念な感想の件 （全体的感想）

ラプラスの箱はガンダム世界の中心だった？
宇宙世紀００年に連邦が起こしたと言われるラプラスコロニーの大惨事が、その後のジオンの勃興や１年戦争の原因であった、という設定をガンダム世界に持ちこむことを、富野由悠季やサンライズが認めるにはそれなりに逡巡があったのではないか？とわたしは思いました．初代ガンダムから３０年後に参加した福井晴敏にセカイ観の根幹を上書きさせてしまうわけですから．

５巻までで参加者は出揃った？
ブライト艦長がスタンスを明らかにしたので、主要なポジションを占める勢力は出揃ったように思いました．やっぱし福井晴敏の原作は舞台設定が明かされるまでが果てしなく長いですね．

バナージ            単なる平和主義者だが、ミネバの言いなりになるだろう
ミネバ                当初は現状維持派だったが、ビストを見て嫌になり、現状打破に転向
フル・フロンタル   手段を選ばぬ現状打破

ジンネマン          現状打破だが、マリーダを手荒く扱うのには反対

マリーダさん        あまり意志はなく、ジンネマンのいいなり

カーディアス・ビスト  現状打破、死亡
サイアム・ビスト      現状打破
マーサ・ビスト         現状維持
アルベルト・ビスト    現状維持

アーセナル議員      現状維持でビストと共闘するも、ビストへの対抗心もある
リディ                    不本意ながら現状維持に転向したが、自由に生きるミネバやバナージがうらやましくて次第にやさぐれてゆく

連邦軍        ビストとアーセナルのいいなり、現状維持

ブライト       連邦がビストに壟断されるのは気にくわない、現状打破

カイ・シデン  アンチジオンだが、ビストも気にくわないという、反骨精神は相変わらず

ルオ商会     ビスト財団のコンペチターという意味で原状打破

UCは面白いか？
初代ガンダムとはやってることが全然ちがうけれど、面白いと思います．

UCは良いアニメか？
問題はここなんです．アニメ作品としては褒められる部分はずいぶん少なく、脚本だけで持ってる作品だと思います．サンライズはこういうプロダクションになってしまったんだなぁと認めざるを得ないのが悲しいです．ルルーシュも面白かったけれど、あれも脚本オンリーな作品で、アニメ的にはさっぱりな出来でありました．
どういうことかというと、画面レイアウトがショボイ．１－５の全編通して、あぁこのシーンいいなぁと思ったのは、このシーンだけでした．２話でリディに「ジークジオンって言ってみろ」と言い掛かりをつけられて無言無表情でリディを見据えるミネバです．いくつもの死地をくぐり抜けてきた者の様々な想いを内に秘めた表情といえまいか？ ここ好きだな～

モビルスーツ戦については、３Dでたくさん動かしてはいますけど、地上戦にせよ宇宙戦にせよ、基本的に突っ立ったまま撃つか撃たれるかでしかありません．イケてる画面レイアウトを描く才能のあるスタッフを呼んでくるという意志がサンライズにはもはやないみたいです．優れた脚本と、最新３Dテクノロジと、オフショアで制作する、それだけの会社になってしまったサンライズがUCガンダムを観ると透けて見えてしまいます．どうかせめて、「カウボーイビバップ」の頃のサンライズに戻ってくださいと願います．

この、モビルアーマーが空母を襲うシーンには最も弱りました．これじゃまるでタイムボカンみたいです．

現在のサンライズには、初代ガンダムのこれらのシーンほどかっこよく作れとまでは言いませんけど、初代ガンダムがこれらのシーンを作れた理由は、これらのシーンをバシッとキメたいと思う意欲がまずあって、そのために脚本とか演出が一生懸命に付帯作業をしたから出来たのであって、そうでもしなけりゃ名シーンなんか作れっこありません、ということを理解されたい．
ところがいまのUCガンダムのスタッフの行動原理は優れた脚本をダラダラとアニメにしているだけであって、それでは名シーンなんか一つも出来はしません．その倒錯状況を、サンライズは真摯に反省なさってはどうでしょうか？ サンライズは日本における有力なプロダクションなのですから．
というわけで、わたしにとってUCは残念な作品にカテゴライズされることになりました．すごく面白いんですけどね．でもそれは福井晴敏が面白いのに過ぎず、アニメで得られる喜びではありません．

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