2014年8月9日土曜日

【失敗事例研究】 気持ちの整理がつかないショックとは何か?

結婚するという知人に、新居を借りたのでエアコンの移設・新設をやってくれない? と言われ、のこのこと出かけて行きました.なるほど世間の電気屋が超多忙なこの時期に、こんなアクロバティックなエアコン工事につきあってくれる奇特な電気屋は居そうにありません.

2日間でやったエアコン工事には、A,B,C,D,Eの5台のエアコンが登場します.
1.既設のAを撤去
2.新品のBをAのあった所に設置
3.Bを撤去
4.既設のCを撤去
5.CをBのあった場所に設置
6.既設のDを撤去
7.新品のEをDのあった所に設置
8.Aを新居に設置
9.Dを新居に設置

2と3を謎に思われる事でしょう.設置した新品Bを即座に撤去とは何事だと.

所要時間は45秒ほどだったと思われますが、
新品のエアコンBをまさに秒殺でオシャカ
にしてしまいました.それがショックの正体です.
2年ほどの短い我がリフォーム人生にして、最悪の一日になりました

最悪の一日
10時頃から作業開始し、Aを撤去、配管を流用してBを設置し、試運転の冷風を浴びてあ~涼しいと思ったのは12時頃.とりあえず1台完成したので、そろそろ昼飯を食いに行こうかと知人と話していました.

室外機のカバーを取りつけて、工具を片付け、配管の引き回しを整えていた刹那、、、、
バンッ、バシューーーッ
という大音響と共に配管取り付け部から白いガスが噴出しました.配管断裂です.インパクトドライバでカバーを外し、スパナでバルブの蓋を外し、六角ドライバでバルブを閉じます.その間の体感時間は約45秒.機器内の冷媒ガスは半分以上が失われたと推測します.
最悪だ、新品エアコンを45秒でオシャカにしちまった、、、
事故部位をケータイ撮影したのがこの写真です.液相側フレアの首の部分が断裂したかに見えます.中古配管をそのまま流用したツケか???
オシャカのエアコンBはとりあえず放置しておいて、既設のCを撤去して取りつけることにしました.

しかし、フレアが失われた配管はもう使用不能です.どうにかせにゃぁいけません.バイクで島忠葛西店へ向かいました.フレアツールが売られていたら買う.無かったら新品配管を買う.それが目的です.フレアツールとパイプカッターを¥17000で買い、事故現場へ戻りました.その時点で時刻はすでに15時.作業進捗は朝10時の作業開始時のフリダシに戻ってしまっています.

既設のCを外し、Bの有った場所にCを設置して最悪の一日は暮れていたのでした.ちっくしょう...

事故原因究明委員会
その日の夜には有識者からなる事故原因究明委員会が組織されました.

委員会の公式発表を引用する前に予備知識として配管接続の仕組みを説明しますと、まず配管末端に「フレア」と呼ばれる広がり構造をフレアツールで作ります.対向面には富士山型の凸があり、フレアナットで密着・締結されるという仕組みです.
さて、これが委員会の発表による断裂部分の写真です.左が正常なフレア、右が事故品のフレアです.事故品の特徴は、
 1) フレアの首の断裂ではない
 2) フレアが伸ばされて元のパイプに戻っている
 3) フレア径が小さくなっている、というかフレアがほとんど無い
 4) フレアの厚みがペナペナに薄くなっている
 5) 三日月型の破片があった  (写真には撮らなかった)
これじゃぁ配管が外れるのも無理はありません.しかし、どうやったらこんなおかしなフレア変形が生じるというのでしょう??? 百合じゃなかったユリ・ゲラーがヒラサカに憑依して金属変形超能力を繰り出した、というのが事故原因究明委員会の第一次中間報告でした.そして事態を重く見た委員会は事故の再現調査を継続することにしたのです.

事故再現実験
フレアリングツールを入手したので、何度でも再現実験をできるようになりました.

薄くてペナペナになったフレアを見るにつけ過大トルクを疑いたくなります.しかし過大トルクで締め付ける実験を何度やっても再現しませんでした

そのうち、フレアナットを締め付ける手応えがおかしい場面に遭遇しました.フレアナット(凹)と固定側(凸)が当たった手応えがあってから、フレアナットを3回転ぐらいも締め付け出来てしまうと思われる場面です.
その場面で分解してみたフレアはこれ.再現に2度成功しました.薄く延伸され小径に変形したフレア.三日月型の破片もありました.同じ症状です.

事故原因推定
事故原因を以下のように推定します.

配管(フレア)を手前に引いた状態でフレアナットを締め付けた場合はOK (下図のOK).
配管(フレア)を奥に押した状態でフレアナットを締め付けた場合にフレアのエッジがネジに噛んでしまうのがNGのキッカケと推測.(下図の○部分で噛み)
締め付けの進行順に描いたのが下図です.
 ①締め付け始めでフレアがネジに噛み込んでしまった
 ②そのまま絞め込むと、フレアが延伸しつつ変形する
 ③さらに、フレアが三日月状に破断し、破片として残る
 ④フレアの延伸と断裂によって、フレアは薄く小径になってゆき、弱く締結された状態になる
 ⑤配管に力を加えただけでフレア部分から脱落した
このストーリーで合っていると強く思います.

付随的に思うのは、
・径が細い液相側で延伸が生じましたが、大径の気相側では物理強度的にこのような延伸は生じにくいように思います.
・銅の価格高騰によって、配管の肉厚の薄い製品が多くなっていると聞きます.そのせいで延伸が生じやすくなっていると言えるかもしれません.
・今回の事故は東芝製エアコンでした.老眼の目視ですので気のせいかもしれませんが、東芝のフレア受け形状が下右図のように裾野になっているように思います(下左図のような円錐でない).その事がフレア噛みを生じさせやすい事と関連するかもしれないとほんの少し思います.

バカな素人のレアケースか?
今般の事故は、バカな素人がしでかしたレアケースと言えるのでしょうか?
締め付けトルク規定はあるものの、フレアを変形させつつ、するするとフレアナットを締め付け出来てしまう事態をトルク規定で防げるとは思えません.不幸にも初期動作でフレアとネジが噛んでしまったら、プロでも起こりうる現象ではないでしょうか?
もしかしたら、配管(フレア)を手前に引いた状態でフレアナットを締め付けるのが常識なのでしょうか?

オシャカのエアコンはどうなるのか?
現在、わたしの家のガレージに置かれています.
町内会で懇意にさせていただいている近所の電気屋さんに相談したら、冷媒をチャージすりゃ治せるとのことです.明日チャージする予定です.かもーんR410a! らっきぃ~

修理後の機体は、後日、新婚家庭に設置される予定です.
10.既設のFを撤去
11.新品のBをFのあった所に設置
12.Fを新居に設置
アクロバティックなエアコン移設工事はまだ続く、、、、

かもーんR410a!

追記: R410aで復活しました!


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15 件のコメント:

  1. 大変だったですね~。

    この記事を見て、原発が心配になってしまう今日この頃。

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    1. 血反吐を吐きました.
      原発も配管たくさんありますー

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  2. フレアツールはリジッドとエスコが有り、
    (両方ともスリコギ式に動く、1度に10個ぐらい購入、1年ごとに買い換え)
    リジッドは昔使って良かったんですが、
    エスコ(コピー品らしい)は品質にムラがあり、半数近く返品しました。

    ご存じと思いますが、以前のR22は圧力が低く、
    R401等は圧力が高く、間違わない様にサイズも細くなっています。

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    1. R410の間違いでした。(R410a)
      これらは混合冷媒で、メーカーごとに配分などに違いがあるようです、
      特にガスは問題ないのですが、オイルがアルキル系を必要とし(吸湿性が高い)
      内部オイル量をどのようにして計るか、(全排出は出来ない)

      作る場合は、専用チャージシリンダーで入れ、ガスはほんの少し多めに入っていて、設置時に少しの漏れには対応できます。(モーター式膨張弁の場合、キャピラリー式なら、高低圧を計って、チャージ量を決定)

      研究過程では0.1gまで計れる10kgの秤でオイルの加減をしていました。

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    2. 本業の人にやり方を見せてもらいます.

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  3. 締めるときはフレアナットにいっぱい引き込み、
    トルクレンチで回して、堅くなったら面接状態、
    カチンと鳴ったら、弾性締め付け状態、
    (場合によっては面滑りが違い、面接から規定締め込みにする場合もあります)
    2回目は面接状態から1/8回転締め込みで、以前より少し締め込まれ、
    OKのはずですが、締める前に厚さが少なくなっていたら、カッターの凹みを使って、
    フレアーだけ切り落とし、再度フレアーにします、
    古い管は振動で硬化して堅くなっているかもしれません。
    この場合はフレアから切れることもあり、交換した方が楽です。
    オイルを塗る人もいますが、ナット面に付けると、オーバーしやすく
    内面に微量塗るくらいでないとだめです。

    次は一義的な間違い。
    http://www.abit-tools.com/kougu_de_pages/kou_torq.html
    トルクと締め付け圧とは比例するがいつも同じではない。
    http://www.sanwa-i.co.jp/labo/report/n6.html
    ただし、メーカー指定のトルクレンチは規定内にはいる様に考えられている。

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    1. やはり「フレアナットにいっぱい引き込み」これがポイントかと

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  4. 次には同質冷凍機油を塗る様に書かれていました。
    メーカーごとに違うようです。
    http://wwwl7.mitsubishielectric.co.jp/wink_doc/common_files/TEC_MANUAL/M-P0055.pdf

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  5. 此方には 410a が有ります。
    http://wwwl7.mitsubishielectric.co.jp/wink_doc/common_files/TEC_MANUAL/M-P0450.pdf

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  6. ソニーOB:佐藤2014年8月9日 23:28

    タイの乳幼児の件で24歳の日本人が関わっているとの報道ではネットで光通信の創業者の息子の一人とさらされていますね。それでいてパスポートの写真もさらされています。
    パスポートの写真ってどうやって入手したのだろうか。そんなのがさらされるなんて怖いですね。

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    1. 男性+代理出産+9人+乳幼児、というキーワードがさっぱり理解できないわたしはマジメに記事を読んでないので、いったいなにが?と戸惑いを隠せません.
      想像するに、24歳の日本人男性がタイの女性に9名の子供を産ませたとなりますが、それがなんで代理なの???とやはり判らなくなってしまいました.あぐー

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    2. おそらく、客の希望で、卵子、精子、を集め、
      他国で代理母に産ませて、少し大きくし、客届ける商売だったろうと思われます。
      これ自体は人身売買、客は自家用と更に人身売買もありかと思われます。
      国により、小さい子はパスポートが要らないことが多く、
      更に 妻も数人、引き連れているのも見ました。

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    3. ぐぐると変なのが出てきました。 重田光時?
      http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1074.html

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    4. なんと、まるで動物のブリーダーみたい.

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    5. ソニーOB:佐藤2014年8月10日 16:28

      ニュースでやってましたが本人の顔写真とパスポートの写真は現地メディアの新聞に掲載されたようです。TVではぼかしてました。
      本国タイでは疑惑の段階で写真晒されてしまうんですね。
      その昔、ソニー・マグネプロダクツ・オブ・タイランドってありました。

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