アニメ「四月は君の嘘」監督イシグロキョウヘイとは何者なのか？

やってるコトがあまりにもハイブローなのでヒラサカさん大絶賛中のアニメが「四月は君の嘘」です．
しかし残念ながら、世間のアニヲタあるいは一般人の興味をあまり惹きつけてないようです．なぜなら、当ブログの同作品についての記事のPVが全く伸びず、ほとんど最低記録更新中っていうくらいスッカラカンだからです．

「宇宙戦艦ヤマト」の記事だとネタバレ系ではありますが最高で25000PVに達しているし、「ガンダムUC」では最高3600PV、「謎の彼女X」だと1000～3500PVぐらいがザラという状況です．これらは固定読者によるPVではなくて、ネットの検索でたくさん流れてきているPVです．
一方で「四月は君の嘘」のPVは40未満ですから．このPVの差違が残念ながら「四月は君の嘘」が世間では着目されていないという残念な状況の現れだと思われます．

しかしわたしは、そんな逆境にひるまずに「四月は君の嘘」について書きまくり、「四月は君の嘘」を布教しようと思っています．
ちなみに、こうして「四月は君の嘘」という言葉を文中にたくさん書き、且つ長文で画像もたくさんあると、検索にひっかかりやすくなるみたいです．その典型例が、いつもPV順位一位の「フルーツバスケット」の記事なんでありましてｗ    （ネタバレというのもkey wordだったりするようです）

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多大な資金を投入して、３Dアニメの到達点を形成した「宇宙戦艦ヤマト２１９９」を観ていると、やはり集団の合議制で作られているから監督のカラーみたいな（癖とも呼ぶ）印象は薄れた作品になっています．

反対に、個人の少ない資金で爪に火を灯すようにして制作された「言の葉の庭」なんかは露骨に監督の設計意図で大統一されているのが観ていて判ります．それが視聴者の好みかどうかは別として、監督のカラーはとても濃いです．

「四月は君の嘘」はどっちなのかというと、モロに後者．イシグロキョウヘイという新人監督のカラーでベターッと塗りつぶされています．しかも新人監督なのに、統一された自分のスタイルが確立されていて、迷いやブレが感じられません．フツーはもっとあれこれと試みて失敗したりするもんなんだけど、どっしりと安定しています．ひら的にはイシグロキョウヘイは彗星の如く現れた期待の新人アニメ監督でありながら、不思議な人物です．

以下、イシグロキョウヘイについての感想です．

今どき時間停止演出をする演出家が居たとは、、、
時間停止演出とは何か？ 一言でいえば「巨人の星」の演出です．星飛雄馬が投球して伴宙太のミットに収まるまでの一瞬を引き延ばして、１５分間ぐらいのエピソードにする演出です．思うがままに大量のセル画を使ってグリグリ動かせなかった、零細リミテッドアニメの時代に、演出の努力で３０分アニメを成立させてしまうというのは、現役演出家や演出家志望者にとっては刮目すべき大事件だったようです．その演出家の名は長浜忠夫．アニメ業界では超有名な演出家です．

ただし、それが好きかどうかというと、ひら的には大嫌いです．リミテッドアニメ時代の徒花として、不幸な歴史遺産としての価値はあったとは思いますが、やはり伸び伸びと動くアニメを観たいヒラサカとしては長浜忠夫が編み出した時間停止演出を容認するわけにはいかない．
加えて、アニメ業界の志向も同様だったように思うんです．なぜかというと、「巨人の星」の時代に比較すると、その後の時代は一貫してアニメの作画クオリティは上昇の一途だったから、セル画を節約できる時間停止演出は顧みられなくなったし、アニメ演出家としても進んでやりたくはない手法として半ば封印されていた．それが「巨人の星」以来４０数年間ず～っと続いたアニメ演出の共通認識だったのではなかったか？

そういう前提で「四月は君の嘘」を観ていると、イシグロキョウヘイは随所で時間を止める演出をするんですよ．とりわけ、コンクールでの有馬の５分間の演奏時間を、第9話Bパート～第10話全部に渡って引き延ばして制作しました．イシグロキョウヘイが長浜忠夫を好きなのかどうかは知りません．それどころか１９８０年生まれのイシグロは「巨人の星」を観た経験すらないかもしれません．そんなイシグロキョウヘイが２０１４年になって確信犯的に時間停止演出をしたのには、今どき珍しい演出をするものよのうと驚きました．
「四月は君の嘘」の時間停止演出が不快だったわけではなく、逆にとてもGOODでした．

止め絵を効果的に使える演出家じゃん
止め絵っていうと、杉野昭夫のキラキラしたどアップの止め絵を思い出しますが、あれはもはやアニメというよりもイラストか紙芝居に近いような気がして、伸び伸びと動くアニメが好きなひら的にはこれまた好みではありません．どアップも嫌いだしな．昭和５０年代の１４インチのブラウン管テレビにはどアップレイアウトがマッチしていたのかもしれんがね．．．

↓「四月は君の嘘」では第２話のバイオリン演奏シーンをマトモに動画で制作していたので、こんなに動画を使いまくったら早々にスケジュールがパンクするぞ！と腰が抜けそうになりました．第２話の時点では、イシグロキョウヘイはゴリ押し的に動かしまくる演出家なのか？と思っていました．こりゃまたリスキーな人だなぁと．

ところが、第10話の有馬の演奏シーンは基本的に止め絵で組み立てられているじゃありませんか？ なんとまぁ、新人監督なのに両方できる人なのね．
↓具体的には第10話で有馬が演奏を中止してしまったBパートの始まり～１分４５秒間がほぼ止め絵で構成されています．止め絵なんだけどゆっくりパンさせたり、汗を滴らせたりして退屈しないような補強もキチンとやっているので飽きないように作ってあります．新人なのにどうしてこんなに小技テクが上手いの？？？ もうびっくりだよ．

画面レイアウトがしっかりしている演出家じゃん
このシーンは神であると認定した第６話の下校シーンを解説．
有馬と宮園が演奏家同士の精神感応状態にあり、それに参入できない澤部が不満を抱えている．
↓澤部と宮園の帰り道が別れる交差点．良いレイアウトだ．街灯のハレーションもいい感じ．

↓一旦さよならするんだけど、宮園は学校にいる有馬の元へこっそり戻る．遠くに見える澤部はそれに気づかない．

↓宮園が去った後でカメラのピントが澤部に合う．その先には踏切が見える．踏切は、有馬と宮園の関係から澤部が遮絶される象徴として設定されている．暗い夜道をトボトボと歩く澤部．ひら的にはこのカットが大好き．初見した時に身を乗り出して凝視したくらいです．

↓俯いて踏切を渡る澤部．

↓ちょうどその時、澤部に告った先輩から電話が入る．

↓「（下校）時間が合いますね、私達」と言った瞬間、有馬・宮園が別世界にいると悟る澤部．

↓さらにその瞬間、踏切が鳴り出して閉じてゆく．踏切の向こう側の有馬・宮園時空間がもはや到達不能領域になってしまったコトを象徴している．

このシーンねぇ、、、ロングショットを基本とした各カットのレイアウトも優秀なんだけど、それに加えて時間の流れが巧みに仕込まれているでしょ．初監督作品でこれをすらすらと出来るイシグロキョウヘイってどれだけ才能があるんだろうか？？？

トリミング型の画面レイアウトが効果的な演出家じゃん
↓まずは、第５話のラストの方のこの画面レイアウトにはシビレました．どアップではありません．これはもうトリミングです．

↓そして第10話では至る所にトリミングレイアウトが出てきますが、これらなんか一目観ただけじゃ意味が判らないでしょう．でも、作品の流れの中でたまに挟まるこれらの画が効果的に雄弁に状況を描写しています．上手い、上手いですぞ、イシグロキョウヘイ．

新人なのに異常に巧みな演出家
以上、いくつかの観点から「四月は君の嘘」の演出を分析してみましたが、ちょっと一体どうしちゃったのぉ？と言いたいぐらい、イシグロキョウヘイがやっているコトはハイブローです．何度も書いたとおりこれが初監督作品とは信じがたい．だからわたしは「四月は君の嘘」で大騒ぎしているのです．

「四月は君の嘘」を観ていて、イシグロキョウヘイは生まれながらにして演出家の才能があるのだろうけど、フェチを発散させたがるタイプではなさそう．たぶん、「四月は君の嘘」を初監督していて、やりたかったコトを思う存分に出来て嬉しくて仕方ないっていう状況が今なのでしょう．ただし、嬉しくて仕方ないだけでは演出家を長期間続けるにはだんだんしんどくなってゆくのではないかと思います．

イシグロキョウヘイの正体をこれからも考え続けたいと思います．

かしこ

＃イシグロキョウヘイをアゲるのが気にくわないっぽい者がコメント欄に乱入して来ました．そいつのコメは丁寧に削除しますが、わたしとて四六時中PCの前に座っているわけじゃないので、削除するまでに数時間のタイムラグが発生する可能性があります．なので、ちょくちょくこの記事をチェックしていると、そいつのカキコとヒラサカの削除合戦を見れるかもしれません．魚拓のチャーンスってコトでご期待をｗ
比較的年配の演出家崩れで、新人演出家の登場を妬んでいるっていうのがヒラサカによるプロファイリング結果だｗｗｗ


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