2019年12月24日火曜日

【回路】電撃トランジスタ講座(小信号アンプ設計) (12) ベース入力インピーダンス

第12回はベース入力インピーダンスを説明する.こういう風にベース剥き出しでトランジスタが置いてあって、一体このベースはどんなインピーダンスなのだろう?というのが今回のお題だ.
ベースエミッタ間はダイオードだ.なので抵抗値は小さめと思って良い.だからといってベースインピーはゼロではない.

では幾らぐらいなのか?
  エミッタ電流1mAの時    →  26Ωx100 = 2600Ω
  エミッタ電流10mAの時  →  2.6Ωx100 = 260Ω
これよりエミッタ電流が大きいケース小さいケースは脳内補完してくれ.憶え方は「1mAなら26Ωxhfeで電流に反比例」がいいんじゃないかな.

Q:えぇっ、電流値で変わるものなの?
A:yes

Q:x100って何?
A:hfeのこと.hfeは品種や温度でヒヨヒヨ変わる.だからベースインピーもヒヨヒヨ変わる.

Q:こんなクソデバイスは嫌いだ
A:そだねー.でも心配御無用.上手い回避方法があるんだ

Q:回避方法はなんだ?
A:エミッタに100Ωを入れよ.  またこれw
エミッタ抵抗100Ωの時のベースインピーはこうなる。
  エミッタ電流1mAの時   → 26Ωx100 + 100Ωx100 = 2600+10k =12.6kΩ
  エミッタ電流10mAの時 → 2.6Ωx100 + 100Ωx100 = 260+10k =10.26kΩ
100Ωx100の項が追加された.これはエミッタ抵抗のhfe倍である.
エミッタ抵抗由来の10kΩの方が巨大であるとこがポイントだ.
エミッタ抵抗由来のインピーダンスの方が巨大であるということは、26Ωや2.6Ωといった小さい成分を無視しても差し支えないとなる.どんどん簡単化してしまおう.

結論:ベース入力インピーダンス ≒ エミッタ抵抗 x hfe
エミッタ抵抗が100Ωならばだいたい10kΩってかんじー.

↓改めてこのアンプを見る.
今までは、18.3kΩと1.7kΩのベースバイアス抵抗が1.56kΩの合成抵抗を形成しており、それが入力インピーであると説明してきた.
ところがもうひとついるじゃないか? ベース入力抵抗10kΩがいるじゃん.
だとすると、このアンプの入力抵抗は、18.3kΩと1.7kΩと10kΩの合成抵抗、1.35kΩになってしまう.
↓そして、10倍アンプ2段直結回路のトータル増幅度は100倍にはならずに、57倍に下落してしまう.なぜかというと、黄色で囲った範囲の全合成抵抗が574Ωしかないからだ.

かつてわたしが読んだトランジスタの本には、こういう2段直結アンプのゲイン計算が長々と数式で書かれていた.無視しちゃっても差し支えないパーツは無視しちゃえばいいのにかったるいなぁと思った.
たとえば上の回路では、18.3kΩと10kΩは無視したって、得られるゲイン計算に大きな誤差は生じない.
↓実際に計算してみると、630Ωの6.3V出力と計算される.こんな風な大雑把計算でもいいのよトランジスタ回路なんて.

まとめ:
ベース入力インピーダンスは何Ωなのか?という話題を今回は書いた.
それなのに、ベース入力インピーダンスなんか計算上無視しちゃっていいや、という話の流れに「騙されたぁ」と思う勇者諸君は多かろう.
現実はそんなもんなのよ、あははー.

次回予告: エミッタフォロアで出力インピーダンスを下げよう!

かしこ

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