2021年4月28日水曜日

石定盤 自作3Dプリンタ、extruderトルク不足、BL-Touch振動問題

3Dプリンタを作ろう!

盛大にトラブっております.トラブルの顛末を記しておくのは大切です.3Dプリンタというのはこういうトラブルに遭遇するものなんだーと、勇者諸氏に思っていただけると幸いです.

いきなり巨大物体をプリントしています.170x170mmの平板です.隅が剥がれたりするので巨大平板をプリントするのって難しんだよね.ところがextruderにトラブル続出です.それだけでなくBL-Touchのトラブルにまで発展しました.

ーーーートラブル1----
extruderのモータートルクが不足していてフィラメントが進まなかった.
↓トルク増大のため、driverの電流制限を大きく調整する.フィラメント進まずはひとまず治った.
↓しかし電流増のせいで別の問題が発生.extruderモーターが熱々になっていて、熱のせいで固定のためのモールドがメルトダウン寸前という状況.キャーッ!!
↓手持ちのFANをテキトーに取り付けてプリント再開.
いままで、extruderの放熱器やFANなんか不要だろと思っていたのですが、いやいやそんなに甘い物じゃなかった.高電流駆動しないといけないextruderは発熱するのでした.

ーーーートラブル2----
プリント中に突然、樹脂が吐出されなくなりました.トラブル1と似ているけど、トルク不足ではありませんでした.原因はフィラメントが何処かに引っかかってビクともしなくなっていました.

フィラメントが入らない原因がなかなか複雑でした.
誘因
extruderは、ギアでフィラメントに傷をつけてしまいます.傷のついたフィラメントがhotendへ入ってゆきます.削りカスも同時にhotendへ入ります.
フィラメントが詰まった場所はV6 hotendの赤線のところでした.溶ける場所ではありません.引き戻しOFFでやってるので引き戻し帰責ではありません.
引っ掛かり原因
詰まったとの表現は不正確で、引っ掛かっていたのが正確でした.赤線の箇所で穴径が4.5mm→2mmに変わっています.ここに削りカスが多く付着していました.でも削りカスは真の原因ではなさそうです.真の原因は、穴径が細くなる段差にフィラメントの傷が当たって引っ掛かっていたのです.
対処
穴径が細くなる段差の角をなるべく滑らかにします.細い丸ヤスリを突っ込んで角を削ります.こうすることでフィラメントに傷があっても引っ掛かりにくいようにします.
結果
現在、正常に動いています.

ーーーートラブル3----
しばらくは正常なプリントが進行していたのですが、インフィルのプリントに移り、速度が60mm/secに増速したらまたしてもフィラメントが入らくなりました.トラブル1と同様にトルク不足でステッパモーターが脱調を起こしています.
  30mm/sec    トルク充分  OK
  60mm/sec    トルク不足  NG
という微妙な事態です.

改善対策をやってみた順に列挙します.
1)電流をmaxで流す(A4998の電流制限ボリウムmax)
2)FANで冷却
3)extruderモーターを1/16マイクロステップ駆動をやめて標準駆動にする
4)extrudeモーターを17HS2408(12Ncm)→17HS3401(28Ncm)に変える
5)12V電源を5A→20Aに変更

1~4は効果が無く、5番でようやく効果が認められました.プリント品質も安定しました.
12Vの消費電流は常時モニタしています.average 2.5Aぐらいです.しかし5番で効果があったということはpeak電流は5A近かったのだと推測します.

ーーーートラブル4----
インフィルプリント時には多かれ少なかれ「樹脂の塊」が出現します.中には高さ1mmを超えるような樹脂の塊が出来ることもあり、ノズルが乗り越えられなくてそこでプリントは死亡します.

原因を推測するに、非力なモーターゆえextruderがトルク不足な状態ですと、樹脂の量が不安定だからか樹脂の塊が出来やすくなるように感じます.
←これは正常な状態
そこでなんとかしてモータートルクを強くしたいので、driverをDRV8825に変えてみました.根拠薄弱ですがDRV8825はA4998よりも大電流時の挙動が安定しているように思われるためです.やってみたらextruderの動作が安定し樹脂の塊も少なくなりました.結果オーライ

なお、フィラメントの引き戻し(リトラクション)量の増減も試みましたけど、これは手応え無しでした.スルーします.

恒久対策として、extruder+モーターを換装します.
MK8 extruderと組み合わせて使われるモーター仕様を調べると、17HS2408(12Ncm)や17HS3401(28Ncm)ではなく、17HS4401(40Ncm)かその上が採用されているようです.なのでモーターを巨大化させます.
またこのextruderはギア形状が工夫されていてフィラメントの喰いつきが良いそうです.
¥1700也

ーーーートラブル5----
インフィルパターンをジャイロイドに変えたら、信じられないトラブルが発生しました.

ジャイロイドとはこういう内部模様です.sine波のような波打ち模様で、層によって模様が変化します.それゆえ樹脂の塊ができやすい構造と言えます.
←これは失敗状態
多少の樹脂の塊があっても、ノズルはそれを乗り越えて強引に進んでゆきます.ノズルを通じてhotendが上下振動を受けます.すると振動のせいでBL-Touchのピンが降りてしまうのです.プリント中にピンが降りてしまったら加工物に引っかかって瞬殺です.ステッパモータがグガガッと音を立ててプリント位置がずれて一巻の終わり.トラブル4もこれが原因だったのかもしれません.

そんな振動なんかでBL-Touchのピンが降りるもんか? と思う賢明な勇者殿にはこの動画を見ていただきたい.カッターナイフで軽く叩いているだけなのに、ピンが降りてしまうんです.ピン収納のソレノイド磁石はとても弱いようです.
電気的ノイズを疑って、フィラメントを供給せずに3DPを稼働させる(=空振りさせる)ならピン降りは発生しません.電気ノイズはシロ判定でよいでしょう.

BL-Touchのこの問題を回避するのはきびしいものがあります.どうしよう...

追記:静電容量型の近接センサを試そうと思います.BL-Touchから離れる方向で.


かしこ



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よろしくでーす.

13 件のコメント:

  1. 動画を先に拝見したので、ヘッドをバシバシ叩いてるのはナゼなんだろう?っと思ってました。
    先人あらばこその苦労、人柱まことに乙でございます。きっと、後に続かれる勇者諸氏の礎となりましょう。

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    1. 叩くといえば・・・、昨日 老母の電子レンジが火を吹き逝きました。
      銘板を見ると”87年”っとありましたので・・・昭和62年製です!。
      昭和の家電は、ゆうこと聞かなければ叩くものっと決まっていましたが、さすがに電子レンジは反撃(電撃)が怖くて叩けませんでしたので素直に廃棄しました。昭和・平成・令和と仕えてくれて、ご苦労様でしたと。

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    2. BL-Touchを自作したろうかと思い走りました。

      暫定措置としてはプリント開始直前で一時停止させ、テープで落ち止めするしかないかと思います。

      恒久措置は思い浮かばじ、、、

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    3. 扇風機の出火はちょくちょく聞きましたがレンジとは珍しいですね。煙をかぶった食品は喰えないだろうし散々。でも87年製造じゃぁ無理も無いか、、、

      ご安全に!

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  2. このあたりが一番大変で楽しい(?)ですね。見て(読んで)いる分には楽ですが、これだけの障害要因を見抜いて乗り越えるのは自分には無理だなーとおもっちゃいました。
    デバッグはどれだけ手数を繰り出せるかが勝負とは言いますが、精神力がもたなそう・・。

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    1. XYZ軸についてはあれこれと予防線を張って進んできましたが、extruderという「どーせ楽勝」と思い込んでた箇所でグダグダになるとは思ってませんでした.

      フィラメント型3DPの本質:
      1)意外と電流を食う、現状totalで12V 4.5Aぐらい食ってる(放熱必要)
      2)プリント速度を上げられない、30mm/secぐらい(内部は60mm/sec)
      3)加工トルクが基本的にゼロなので、XYZ軸はあまりトラブらない
      4)押し出しトルクと樹脂の粘りに苛まれるフィラメント搬送系にほぼ全てのトラブルが集中する
      5)フリーソフト、フリーツール、どうもありがとう

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    2. モーターとかソレノイド的なものは挙動にある程度予想が付きそうですが、熱で溶かしてみたいなのは粘度とか放熱とか本能的にイヤーな感じ。自分とかならXYZ軸精度とか強度でつまづいてそうですが・・。

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    3. 化学のセカイは電気屋には苦手です、オロオロ...

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  3. なんか、前にも言った、吉田製作所のこの動画
    https://www.youtube.com/watch?v=2dMgFv2VWPA
    の、3DPも、「同様の問題」で、不安定だったんじゃないかと思いました。
    ※スピードを遅くすると改善するとか、いろいろ類似点がある。
    やはり、「アマチュアが見よう見まねで作った」と言えど、
    3DPは「立派な工作機械」なんだなー、と思いました。
    ※工作機械も、設計開発中のテストだと「アームが曲がったり」とか「ヘッドが燃え出したり」とか、よくありますw
    (もちろん、「周りの安全を確保した」うえで、限界性能テストとかしてますが。火災とか起きたら大変だし。)
    しかし、「12V5A」って、すごい消費電力ですね。単純に60Wって、半田が溶けそうです。
    ※これくらいのパワーになってくると、やはり「装置系の電源」が、24Vである意味が分かるような気がします。12Vでは、やっぱりキツイのかもしれません。

    ※電源増強もいいですが、くれぐれも「火災に」ご注意ください!

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    1. >くれぐれも「火災に」ご注意ください!
      吉田製作所の動画のどこかで、
      「中華モノの評価は、火事が怖いので、家の中のいたるところに
      『火災報知器(電池で動く簡易版ですが)』を置いている
      と、言ってました。(ここは借家だからとも言ってましたが)

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    2. >スピードを遅くすると改善

      それが3DPの真実の姿といっても良いと思います.
      溶けた樹脂という厄介物を丁寧に搬送するには速度を遅くするのが効果的なようです.120m/secぐらいでサクサク積層したいものですが、なかなか素人には追い込めない感じがします.

      ガンプラの成形なんかよくやってるもんですね.エライですー

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    3. >半田が溶けそう

      hotendが200~230℃くらいですからギリ半田が溶けそうな温度になりんす.
      冷えた状態から90秒間ほどは12V3Aが流れます.
      目標温度に近づくとチョッパー制御で平均Aは少なくなりますが.

      あと、extruderに1~1.5Aぐらい流さないとトルクが出ません.

      その他のモーターがちびちびと喰って、トータル5Aほどは余裕で喰ってるです.

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    4. 一応パソコン部屋に火災警報器はつけてありますけど、アセトンとかアルコールに引火しませんように.

      あと、秩父の三峯神社でもらった火災避けのお札も貼ってあるんです.

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