なぜ人類はこんなに残虐な種族なのか？

読者の方から「なぜ人類はこんなに残虐なのか？」という問いかけをいただきました．

わたしも人類は残虐だと思います．

人類は１００万年ぐらいかけてサルからホモサピエンスに進化しましたが、たった１００万年でこんなに特殊化した生物はあまりいなかったのではないでしょうか？ 人類を生んだサルの一派が急速に進化できたのは、生活集団が小グループだったので、病気になる突然変異にせよ、頭が良くなる突然変異にせよ、比較的短い時間（数世代）で集団の中に変異が固定化されたからだろうと個人的に思っています．そのミュータントサル集団によって旧サル集団が絶滅させられ、ミュータントサルだけが生き残る、そういうループが１００万年の間延々と続いたのが急速な進化のドライブ要因だったのではなかろうか？ 残虐だ．

ネアンデルタール人や北京原人の他にもいろいろと亜種人類が派生したもののホモサピエンス以外は全部滅んでしまいました．ネアンデルタールとの遺伝的交雑の痕跡はほとんどないらしいので、ホモサピエンスがネアンデルタールを滅ぼしちゃったんじゃないですかねぇ？ 狩って食べちゃったりとか．そんな原始時代にホモサピエンスが勝ち残ったのは、環境圧力が厳しくなったときに生き残れたからだというのは穏当な表現に過ぎて、あらゆる他の種を最も効果的に滅ぼすことができたから勝ち残ったというのが身も蓋もない真実でありましょう．残虐だ．

有史時代になるとさすがにホモサピエンスの数が増えたので、コーカソイドにネグロイドやモンゴロイドが絶滅させられるようなことにまでは発展しませんでしたけれども、たかが数10年前のナチスは白人優越主義を先鋭化させてアーリア人以外全部絶滅を目指しましたから、ホモサピエンス同士の内ゲバの絶滅戦争の危険性は依然としてあると思われます．そんなレベルのホモサピエンスです．つまりホモサピエンスは、狩ったり狩られたりしていた頃のDNAがそのまんまで固定された野生種に過ぎず、性根が残虐でないわけなんてないのです．

社会主義や共産主義が機能しなかった理由は、野生種である人類の残虐さを織り込まなかったからです．資本主義がバブル（新生）と恐慌（絶滅）の狭間で曲がりなりにも機能しているのは、人類の残虐性を織り込んだシステムだからかもしれません．

ホモサピエンスはもっと温厚な種あるいは知的な種に進化するのでしょうか？

自然進化ではその可能性はないと思います．サルが急速に進化できたのは、少人数の生活集団に突然変異が固定し、ミュータントサルが旧サルを絶滅させたからだと上で書きましたが、現代人類は莫大な数で交雑するので突然変異が薄まって固定化されません．また、たった１００人のミュータント戦士に全人類が絶滅させられる場面も考えにくい．「ガンダム」はスペースコロニーの無重力環境が人類の眠ったDNAをオンしてニュータイプが覚醒したという進化メカニズムを含意していたはずですが、そういう知らないDNAが都合良く目覚める幸運でもなけりゃ、もう人類は自然進化できないでしょう．

一方、人類を人工進化させちゃえば？というSFはいろいろあります．「Apple Seed」には温厚な性格に品種改良された”バイオロイド”が登場します．「風の谷のナウシカ」で腐海のほとりに住んでいる人類は、腐海の毒に耐性を持つよう改良された人類です．「エヴァンゲリオン」には箱根に人工進化研究所っていうのが出てきました．

陰謀論には、世界の支配者が人類をあらかた死滅させて少数の人類による進化の道筋を描いているとする説があります．死滅させられるのは困りますが、人類の品種改良、人類の人工進化というテーゼ自体にはわたしはどっちかというと容認なんです．そうでもしなけりゃ人類は野生種のままで、残虐さは変わらないと思いますので．

かしこ


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