今回はサラッと終わらせる.加算回路の解説だ.
↓加算回路というとopampを使ったこのような回路が示される.だがここはトランジスタを使った回路にしか興味が無い人のためのページなのでこれではダメじゃ.
↓これがトランジスタ一発で実現した加算回路である.V2とV3が入力され、出力はR5に現れる.出力電圧は(V2+V3)x5である.
まず大枠として、どういうわけだかベース接地になっている.なんでコレクタ接地じゃないんだよ?と思うだろう.もちろんそれには理由がある.
一口に加算回路と言っても、信号には電圧と電流がある.だから、加算回路には次の4通りが考えられる.
1)電圧入力-電圧出力 ←通常これが便利
2)電流入力-電流出力
3)電圧入力-電流出力
4)電流入力-電圧出力
4つの中で便利なのは1番である.
出力についてはコレクタ抵抗から取り出せば電圧出力になるので疑問はなかろう.
キモは入力である.
ベース接地の入力端子はエミッタである.エミッタのインピーダンスはほぼゼロだ.
インピーがゼロの端子に対して電圧入力すると理論的に無限大の電流が流れてしまうので無茶である.
だが回路図には、R6R7=100Ωがついている.すなわち、
R6を通じてI2=V2/100の電流がエミッタへ流れる.
それだけではない、
R7を通じてI3=V3/100の電流がエミッタへ流れる.
つまり、V2由来の電流と、V3由来の電流がエミッタへ流れ込むのである.
いやいや、I2I3はエミッタへ流れ込むだけでなく、R4へも分流するでしょ? と思ってはいけない.
なぜなら、エミッタ電圧はベース電圧-0.7Vで不変だからだ.上の回路ではエミッタ電圧は2.3Vぐらいとなる.エミッタにI2やI3が流入したからといって、2.3Vがひよひよと上下するか? しないもん.
エミッタ電圧が2.3Vで不変であるならば、R4の電流も不変だ.ならばそこへI2I3が流入したときの行先はエミッタ以外にない.
I2I3が全部エミッタへ流れ込むとわかると、電流的にI2+I3という加算作用がベース接地のエミッタで生じているとわかる.電流加算を実現するためにベース接地を採用したのである.
そしてI2I3の源をたどればV2V3に他ならない.ゆえに、上の回路はV2+V3加算回路なのである.
R4=220Ωは加算や増幅に何の寄与もしない.(DC電流設定の役割だけ)
では、増幅度はどのように決まっているのか?
増幅度=コレクタ抵抗/エミッタ抵抗 である点は変わりない.すなわち、
V2の増幅度は、R1/R6=500/100=5倍
V3の増幅度は、R1/R7=500/100=5倍
これに加算作用があるのだから、総合的増幅度 = (V2+V3) x5 となる.
simulationで確かめてみよう.
黄色がV3で、1Vppである.周波数は1.7MHz.
緑色がV2で、0.4Vppである.周波数は5MHz.
出力はR5の端子電圧である.V2V3が加算された結果で角が生えたような波形になっている.振幅は約6Vppである.
(V2+V3)x5に当てはめてみると、(1+0.4)x5=7Vpp となる.
simulationで出た6Vppと遠からじってことになる.
様々な波形を加算して遊ぼう!
かしこ
>エミッタにI2やI3が流入したからといって、2.3Vがひよひよと上下するか?
返信削除>しないもん.
何かここ、個人的に非常にウケましたw
※回路理論を知ってれば、(と言うか、教科書的な言い方をすれば)
「Q1のエミッタ端は、2.3Vの電圧源に相当するので、
即ちインピーダンスはゼロとなる。よって、R4の抵抗値は、
R6およびR7を流れる電流に寄与しない」とでもなるのでしょうか。
(まぁ、ここで言う電流とは正確には「電流変化(AC成分)」なんですが)
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ところでこのシリーズって、もしかして「技術書典」に出そうとしてます?
※というか、出してほしい気がする。
技術書典も中止だったんですね.行ったことないですけど.
削除お金とれるほどじゃないもん.