今年の4月にスペインで大停電があり、いろんなインフラが停まってしまって大変だったそうです.
その原因が「無効電力」だったという動画を目にしました. →こちら
力率悪化→無効電力増加→コンデンサON→力率改善→無効電力減少
みたいな電力系統の理屈を電気屋なら知っているでしょう.
しかしひら的には、発電所や変電所でやってるこの制御がそんなに難しいものだとは思ってなかったのだけど、、、
どうやら、再生エネルギーのインバーターが「軽い電力源」になっていて、電力系統が力率悪化に対して脆弱化しているのが背景事情なんだとか.
要するに、力率制御の応答速度をもっと早めないと太陽光発電所の軽さに対応できないってことで、日本でも起きる可能性がある事故だなぁ.力率制御の応答速度を早めるのが可能なのかどうかは知らなーい.
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無効電力や力率改善を説明するポエム:
下図は、
発電所→送電線→負荷
という電力の流れですが、負荷がなんでコイルなんだよという疑問はごもっとも.工場とかで巨大モーターを回すとモーターはコイルなので需要家の負荷がコイル過多になっちゃう場面が無効電力問題の発端です.
↓ところがもう少し微細に眺めると、これでもコイルには結構な電流が流れているんです.simulationによると実効値で3Aぐらいです.この3Aが無効電流です.
↓コイル電流だけでなくコイルの両端電圧も描くと、両者は位相が90度ズレています.つまり電圧電流の関係がsin/cosの関係ですから、電力=電圧x電流=sinxcos=0ということになってエネルギー消費はゼロになってしまいます.自転車の空回り状態です.
↓コイルの電力消費はゼロだけど、送電線は抵抗ですから発熱します.simによると100Wぐらいの熱損失です.これが無効電力です.無効電流のせいで送電線だけでなくいろんな場所で発熱するわ燃費が悪化するわでロクでもありません.無効電流は悪だ!
↓そこで力率改善コンデンサをON!
コイル電流とコンデンサ電流をplotすると、ちょうど両者が逆位相で同じ電流になりました.つまり、打ち消しあって送電線に流れる電流をゼロに出来るんですねぇ.便利だ.結果として、送電線の熱損失はほぼゼロになり、それだけじゃなくて発電機の損失も少なくなって超ラッキー.力率改善コンデンサのおかげで無効電力を最小にできました.という力率改善制御をどこの国の送電網でもやっているのですが、スペインではそれにしくじった.しくじった原因は再エネ発電だった、というオチかなと.
再エネ発電が増えると力率改善制御が難しくなるポエム:
原子力とか火力発電所は巨大な発電機が回っているので、回転エネルギーが力率変動への再初期の対応力になっています.一瞬耐えるぐらいの主体的能力を持っている.
ところが、再エネはインバーターなので、耐える気がまるでない、あっという間に逝ってしまうような主体性のない供給源なんです.来ているACに合わせてチビチビと電力を打ち返すような仕組みですからねぇ.よわぴ~ww
再エネ=電力系統不安定化、とは10年前から云われていて、たしか九州電力が「再エネ買取拒否宣言」したよ. →これ
雰囲気的には不安定化するのに同意なんだけど、具体的に「無効電力でとどめを刺される」とは失笑を禁じ得ない.あははー
しかしながら再エネ原因なら日本で起きても不思議じゃないし、土地が安くて太陽光比率が多くなりがちな地方の電力系統はより危ないんじゃなかろうか?
太陽光はほどほどに.
かしこ