先日のブログで、衆議院議員会館というところに行ったと少し書きました.なんでそんなところに行ったかというと、インフレターゲット(インタゲ)政策でデフレを脱却でき、ゆえに増税は不要であるということを主張している政治団体のシンポジウムに参加したからです.そこで学者とか政治家がしゃべっていたことを書きます.
インフレターゲット政策は昔から提唱されてきましたが、ハイパーインフレを招くオカルト学説扱いされています.そのシンポジウムはインタゲ論推進派の集まりなので、オカルト説を主張する者の意見はなかったことを念頭に置いた上で、以下のQ&Aをお読みいただければと思います.
ひら的には、
これまで新自由主義でやってみたけれどダメで、今デフレ容認増税路線を採ろうとしているわけですが、その前にインタゲしてみたらいいんじゃないかと思っています.
Q: デフレ容認増税路線の果てはどうなるの?
A: デフレ容認とはGDPが漸減することと同義であり、GDPが減ると税収も減る.消費税1%あたりの税収も減る.法人税も減る.すると、財政難になって増税したくなるというネガティブスパイラルに陥る.1997年の橋本政権増税によって、景気が冷え込んで税収が減ったのがその実例である.
Q: インタゲ政策の目標は何なの?
A: デフレを打ち切って、3%ぐらいの管理されたインフレに誘導すること.
仮に、1990年以降の失われた20年を、インタゲ政策によって、インフレ率3%かつ実質経済成長率1%で回したと仮定すると、今日の日本のGDPは1000兆円になる計算.これは今のGDPの2倍で、わたしが失業することもなかったと思われます.また、日米の長期金利差も縮小するので円高も是正されると試算されるそうです.インタゲ論がオカルトじゃなかったとしたら、すげえおいしい話ですね.
Q: インタゲ政策は具体的にどうするの? どうなるの?
A: 金融技術的にやることは、日銀がマネーサプライを40~60兆円ぐらい増やすこと.
と言われてもなんのことかさっぱりわからんのですが、こんな金の流れになるそうです.
1)政府が、国債を40~60兆円発行し、景気浮揚のための公共投資をする
2)金融機関が、40~60兆円の国債を全部買う
3)日銀が、金融機関保有の国債を買い取り、替わりに現金を金融機関に渡す(国債買オペ)
4)市中の現金が増える(マネタリーベース増加)と円の通貨価値が下がり、インフレになる
5)インフレになると、日米長期金利差が縮小し、円高が是正される
インフレ率を3%に誘導するために必要なマネタリーベースの必要額は60兆円であり、そのインパクトで円ドル相場は、1$=¥110 に修正されると試算される.←おいしいじゃん
Q: 国債を60兆円も発行すると財政赤字が増えるんじゃないの?
A: 政府機関である日銀が国債を買って、日銀に利払いするだけなので、差し引きチャラで問題ないそうです.
Q: 景気刺激策で、税収はどれだけ増えるの?
A: 景気刺激策だけではダメで、日銀のエンタゲ策だけでもダメです.両方同時にやらなくちゃいけないそうです.名目経済成長4%に誘導できて3年目の税収増は20兆円増と試算されていたと記憶しています.なので60兆円の国債発行が3年で元を取れる計算.
Q: 長期金利が上がると、国債の利払い費用が財政を圧迫するんじゃないの?
A: ここは、わたしもインタゲがオカルトなんじゃないかと疑うところです.よくわかりません.
Q: インタゲしたら円安になるの?
A: 上で述べたように、60兆円のマネタリーベース増で$1=¥110になると試算されています.
Q: インタゲすると財政赤字が縮小するの?
A: シンポジウムではそう主張されてました.デフレ容認増税路線には資本主義の未来が無いことはわかりますが、インタゲによる長期金利上昇による国債利払い費増による財政圧迫の影響があるのも事実だと思われ、国債利払い費増を超える税収増がもたらされるかどうかにかかっているのではないでしょうか? だから、インタゲ+景気浮揚策の両輪が必要なんでしょう、きっと.
Q: 日銀はどうしてインタゲしないの?
A: 戦後のハイパーインフレのトラウマから、日銀はインフレ抑止が中央銀行の存在理由であるという考えで固まっているそうです.そんな日銀ですから、ここでインタゲに切り替えるのは過去の先輩方の伝統を否定することになるので、プロパーの日銀マンにはそんなことはできないと考えているそうです.こういうところは、上層に行くほど無謬性に足を取られてバカになってゆくという日本文化の特徴だと思います.
ちなみに、第一次大戦後のハイパーインフレを味わったドイツの中央銀行も、国債の買いオペは絶対にダメと言っているそうです.ユーロがヤバイのにそんなこと言ってられるんでしょうか?
Q: インタゲするとハイパーインフレになるの?
A: 今の日本はデフレなので、ちょっとぐらいマネタリーベースを増やしてもハイパーインフレにはならないそうです.ただし、上で60兆円で3%というのは、ホントに当たるかどうかはよくわからないらしいです.なので、インフレが3%になるまでマネタリーベースを増やして、3%になりそうなところでパシッと打ち切ることが必要だそうです.インフレ指標のタイムラグにどう対処するのかはわたしは知りません.
Q: 戦前戦後はハイパーインフレになったではないか?
A: 高橋是清がインタゲ政策をとってうまくいったんですが、頃合いを見てインタゲをおしまいにして軍事費を減らそうとしたら2.26事件で暗殺されたので、歯止めがかからなくなったのがハイパーインフレになった真相なので、そこんところを正しく理解しましょうとのことです.
A: アメリカのQE1,QE2はインタゲ政策だと思います.EUはインタゲしてるとは言えないんだろう.
Q: 大蔵省はどうかんがえているの?
A: 日銀と似て、先輩方の伝統を否定することはできないとの考えから、長年のインフレ時代の政策の柱である、政府支出抑制+増税路線から離れられない.
Q: 政治家はどうかんがえているの?
A: 3種類いるようです.少数派から順に、
まず、与謝野薫のような、インフレにさえならなきゃいいんだョっていう人.こういう人は、デフレ容認増税路線なわけです.与謝野薫が菅政権の中にいたことからわかるように、民主党の上層部はこのグループです.自民党の上層部もこのグループです.
つぎに、デフレ脱却議連メンバーのような、デフレ脱却のためにはインタゲでも国債でもなんでもやれっていう人.人数で150人ぐらいいるそうです.
最後に、最大多数は興味が無い人.どっちでもいいやと考えているので、それぞれの政党の上層部の考えになびきます.
Q: 日本でインタゲするには?
A: これがそのシンポジウムのテーマでもあったんですが、いまのままでは無理です.まず、日銀はやる気がない.白川日銀総裁をクビにする法律もない.民主党と自民党の上層部もやる気がない.デフレ脱却議連は過半数には達していない.なので、デフレ脱却議連メンバーが過半数を占めるようになり、日銀法を改正して、白川総裁をクビにして、政府は景気刺激をするようにして、というなが~い段取りを経なければならない.
というわけで、先の見えない円高とデフレで、皆さん苦しみましょう.