【物理】時間は発生するものなのか？

昨今の物理学では時間は存在しないかもと云われている．

温度の本質が分子運動であるように、時間の本質は何か別の物なんじゃなかろうか？という説だ．

こうゆう事情からそう言われている．

　・ニュートン力学は時間の不可逆性を含まない

　・相対性理論は時間の不可逆性を含まない

　・量子論は時間の不可逆性を含まない

ゆえに時間は幻なんじゃないの？という展開だ．

ならば物理学に時間の不可逆性を含む理論は１つもないのだろうか？

いやある．

相対性理論や量子論よりも数10年前に提唱されたボルツマン方程式がそれ．同方程式はエントロピーの法則を示している．

エントロピーの法則とは、「水に砂糖を溶かしたら元には戻りません」と言っていて、すなわち「物理には不可逆な過程もあるんだぜ」と言っている．不可逆ならそれは時間の矢だろう．物理理論が時間の矢を前提としているじゃん．ゆえに時間はあるはずだ．

ここまでで、ボルツマン方程式だけが浮いた存在だと思っていただければ幸いである．

その「浮いた状態」を解決されるべき難問として定義したのが、ヒルベルトの６番目の問題というもので、ヒルベルトという人は1900年ごろに活躍した数学者だ．

2025年になってようやく、ヒルベルトの６番目の問題を解決したと主張する者が現れた．

それを報じる記事が２つある．

　ナゾロジー　数学により物理学の3つの主要理論を統合することに成功

　Gigazine　　125年越しに解決したかもしれない「ヒルベルトの第6問題」とは？

いずれも物理数学の成果として報じる内容となっているが、、、Gigazineの方が面白いことを示唆している．

Gigazineから引用：ヒルベルトの第6問題は流体力学に対して、「ニュートン力学に従う粒子の運動から流体全体の運動法則を、数学的な厳密さを伴って導出できるか」ということを問うています。

↑これってサラっと言ってるけど、けっこう意味が深い．

　ニュートン力学→ボルツマン方程式→流体力学

という演繹過程で、

　１）時間可逆なニュートン力学を使って粒子運動を記述する

　２）その粒子数を増やすと、

　３）時間の矢を含むボルツマン方程式が導出される

と言ってる．えぇ～っ！

「シュレディンガーの猫」が似た話である．（意訳）

　・素粒子の性質は観測するまで確定しない

　・猫は観測せんでも生きているか死んでいるか確定している

　・ならば素粒子の個数がどれだけ増えたら猫的になるのか？

マクロスケールになると量子的性質が隠れてしまうんじゃないのか？という話だ．

それと似て、もしも「ヒルベルトの第6問題」が証明されたなら、マクロになると時間の矢が自然発生すると言える．

なんだかすごいと思わないか？　時間は在るものではなく、発生するものなの？

Gigazineから引用：時間可逆的なミクロなニュートン力学から、時間非可逆なボルツマン方程式を導き出すことで、時間の非可逆性がどこで生まれるのかを明らかにすることが根本的な意義である

なお、この論文には「重大な欠陥が存在する」との指摘もあるらしい．

かしこ