回路設計について上から目線で蘊蓄を語る.
1年ぐらい前と、つい先日にも生じたリアルな技術論.
お題:コイルをドライブする回路をどうやって設計するか?
↑たかだかこれだけ.簡単だろそんなの?と思うよねフツー
だけど、コイルドライバ回路は案外難しいもんでさ.
1年前の出来事:
巨大な鉄心に電磁石でインパクトを与えたい.たぶん「ゴンッ」と音をたてるぐらいの強さ.電流は巨大だし、周波数は数100kHzぐらいある.イメージ的には、300kHz1AをON/OFFするかんじかねぇ.どうしたらいい?
つい先日の出来事:
2uHぐらいのコイルに、100MHz5mAを流したい.綺麗な波形でよろしく頼むぜ.どうする?
40年前の出来事:
わたしがコイルドライバ回路であれこれと苦労し始めたのは、新入社員の1年目だった(1987年).当時はソニー御殿山にあったDATコンタクトプリントの開発部隊に混ざって業務用DATを設計してた.これは自慢だがわたしは入社初年度から設計してた.
記録ヘッドはコイルである.記録ヘッドに20MHz20mAぐらいを流す回路だ.デジタル回路の感覚からすると20MHz20mAなんか楽勝に思えるけど、負荷がコイルだと意外と厄介なのである.
変な現象もあった.記録アンプ~ヘッドまでのシールド線の太さと長さを調整するとエラーレートが劇的に変わるんだ.最終的にシールド線と長さを設計仕様にしちゃった.
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1年前の出来事の詳細、
コイルのパワードライブの概算はこんな感じだった.
鉄心コイルのインダクタンス=100mH(自己共振周波数はとりあえず無視)
周波数=300kHz T=3.3uSec
電流1A
逆起電圧=L di/dt≒0.1/1uSec=100kV ←だめだこりゃ電磁砲じゃねぇんだぞwww
回答というかアドバイスは、、、
実現不可能なので、インダクを下げて、電流も下げて、逆起電圧=数100Vオーダーまで下げて、それでsystemを練り直したらどうですか? ちなみに500Vぐらいの高電圧高周波電源は売られています・・・
コイルドライバ回路の基本は3つである.これ以外を模索しても無駄である.
1)アンプ~コイルを最短で配線して浮遊容量を少なくする(メカ設計)
2)コイルの自己共振周波数を高い周波数に追いやる(巻き減らし)
3)逆起電圧に打ち克つために電圧を高くする(500Vとか)
↑ここまでbreak downすれば、「そんなの簡単にできるかい!」と思うようになれるだろう.そうなんだよコイルを駆動するのは難しいのさ.
トランスで昇圧したらどうか、とかは枝葉のハナシなのでお好きにどうぞどうぞ.でもトランスは万能じゃないのでやってみそ.何事も経験じゃよ(笑)
1年前は巨大パワー、先日のは小信号高周波、という違いはあるが、コイルドライバは容易に物理現象にぶち当たって詰む点で同じなんだ.
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つい先日の出来事の詳細、
設計者が変なことをやってた.
アンプ ~ シールド線30cm ~ コイル
これは上記1に反するので間違いなんだ.
でもね、見かけ上の変化なら起こせるのよ.
↓こんな風に、
・シールド線30cmには30~40pFの浮遊容量がある
・すると、自己共振周波数が下がる
・すると、帯域上方にQの盛り上がりが降りてくるので、軽く高域boost作用を得られる
・しかし、自己共振周波数よりも上の帯域はもはやコイルでなくなる
・部分的な見かけに騙されて本質を見失ってしまう(木を見て森を見ず)
ところで40年前、
上で書いたDATにおける謎対策、
記録アンプ ~ シールド線 ~ ヘッド
22歳のヒラサカも同じことをやらかしているでしょう.
俯瞰すると、浮遊容量を調節することで、位相特性を調整してるんだ.これは磁気記録の非線形ビットシフトを抑圧する効果があるの.重箱の隅なので詳解はやめとくけどさ.
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以上、22歳のときの経験が61歳になっても活きているという蘊蓄だ.どうだウザいだろう.
40年前のIT技術はあまり役に立たないが、40年前のアナログ回路技術は原理が変わらないので通用する.
シールド線30cmの担当者には、
「それ間違い」「常識だよ、常識」
などとと言ってしまったが、世間一般にコイルドライバで苦労した回路設計者が多いわけがない.常識ではあるが、知らなくても当然だ.
まとめると、いろんな回路への対応力は単に「経験」である.経験とは単に「場数」である.だからいろんな回路を作っては壊すのをたくさんやるしかない.
発振回路でハートレー、コルピッツなどがあるが、わたしは発振回路を設計した場数がゼロなので、発振回路は設計できない.負性抵抗とか全く知らない.
雑誌「トランジスタ技術」は場数を増やす啓蒙書として尊敬しうる.
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「場数」に関連した話題
入社希望者の履歴書、職務経歴書を読んで感想文を書いたことがある
そのヒトのキャリアパスはこうだった
20歳代 回路設計
30歳代 開発リーダー
40歳代 中間管理職
50歳代 役職解かれてドサ廻り
まぁよくある感じだよね.部長とか事業部長にはなれなかったタイプ
だけど、わたしが一番ピンと来なかったところは、
「会社に庇護されて、会社の中にあるリソースを回してきただけのヒト」
に見えたんだ
そうゆう技術者は必要ないなぁ
面接の常套句でこんなのがあるが、
「御社の仕事を早く覚えて、早く役に立ちたく思います」
↑技術者が中途面接でこんなコト言ってちゃダメだよ
わたしが中途の技術者に求めるのはこうだ、
「わたしは御社にない設計知識を持っているので、それを御社に注入してあげます」
「それは上手くいきませんね、理由はかくかくしかじか・・・・」
「わたしの名前で特許検索してもらうとXX件ヒットします」
会社人生で早めに設計から足を洗ってしまって、会社人生の後半がダラーッと中間管理職のドサ廻りになっちゃったヒトは、なさけないくらい「設計の場数を踏んでない」
ゆえに設計対応力が全然身についていない
体制の不備がたくさんあるような小さな会社では立ち回れない
ヒラサカに「あぁそれは上手くいかないのよ」とか言われまくってしまう
技術者は孤独である
かしこ