2011年10月8日土曜日

失業した理由シリーズ007 輸出製造業は自由貿易の夢を見るか?

話が大きく脱線してしまったが、ようやく輸出製造業の不景気の原因分析に戻る.

中国や韓国の追い上げがきついから輸出製造業が不景気なのだという話はとりあえず正しいが50点の回答である.

いまのところ中国も韓国も製造技術だけの国だ.彼らの製造技術は日本が輸出したものだ.彼らの製造設備は日本が輸出したものだ.真相は、中国や韓国が追い上げてきたのではない.日本企業が中国や韓国に製造技術を移転せざるを得なかったことこそが真相だ.

そして、日本企業が中国や韓国に製造技術を移転せざるを得なかった理由は「円高」である.円高にあぶり出されるようにして日本企業が中国に出て行った.前回、前々回で書いたのはその様子だった.あるいは、リストラされた日本人エンジニアが韓国企業に雇われて技術流出した.

円高の原因について考えてみよう.

-----日本は資源の乏しい国だから、貿易立国しなければならない.そのためには、自由貿易を否定することは許されない.事実、アメリカは自由貿易の名の下に日本製品や中国製品を気前よく買ってくれた.そのおかげでアジアは経済発展することが可能だった-----    これは一般的な見方だろう.

しかし、わたしはこの見方が貿易の半分しか見えておらず、通念にダマされていると思う.

貿易では物流の反作用として通貨決済が生ずる.今日の世界情勢は、この通貨決済について、すごくおかしな事態になっていることにお気づきだろうか? それは、自由貿易が不可侵の国際通念になっているのに、通貨決済はアンフェアなまま放置されていて、とりわけ円だけが不利な情勢に追い込まれているということだ.

通貨決済がアンフェアだとはどういうことか?

現在の地球上に、自由に取引できる通貨は、ドル、ユーロ、円の3つしかない.
新興著しい人民元やルーブルがあるじゃないかって? それは甘い.
人民元もルーブルもウォンもみんなドルに連動しているので、ドル安円高局面では、人民元もルーブルもウォンもみんな連れ安してゆくのである.つまり、日本の競争相手である中国も韓国もその通貨の実態はドルなのである.

リーマンショックによる金融危機でドルが、ギリシャのデフォルト危機でユーロが、通貨安競争に明け暮れている現在、円を除く全ての通貨が減価競争状態になっている.そのため円だけが独歩高になっている.このように通貨決済がアンフェアな状況で自由貿易もクソもないだろう.そのアンフェア=円高のせいで製造も設計も日本国内に維持できなくなっているのだ.

アジア諸国の中では歴史が100年進んでいたから今までの日本は幸福だった.ゆえに現在の日本が不幸をかこつのは仕方がないなどと、日銀あたりは考えていそうだが、そんなの知ったことか!?

だから、日本は、こう主張するべきなのだ.
「自由貿易だけでは困る.通貨も自由化してくれ.通貨の自由化とは、メジャープレイヤーとなりつつある新興国がみなそろって変動相場制へ移行することだ.」

また、日本の輸出製造業は、先の見えない円高の先に何を期するべきかというと、
「世界の通貨が多極化し、円が5番目ぐらいのちっぽけな通貨に格下げされ、それにつれて1ドル=¥150ぐらいのローカル通貨に成り果てた時代の到来を待つ.それまでは、空洞化もやむを得ない.我慢するしかない」

まぁ、中国も韓国もロシアも変動相場制に移行したら投機筋に通貨高を演出され、日本が味わっているのと同じ塗炭の苦しみが待ち受けていると知っているので、そう簡単には変動相場制に移行したがらないだろう.

となると、新興国がもうドル連動する気がなくなる状況が早く訪れるように努力するのが日本の正しい戦略になるだろう.

どうするか?

気分はもう戦争的な手口としては、手持ちの米国債を売りまくって、ドルを暴落させてしまえばよい.1ドル=¥20になって世界経済は大混乱し、輸出製造業もバタバタと倒産するだろうが、どうせ黙っていても死ぬのである.ドルが破綻し、ついでに円も破綻した後に、人民元やルーブルやウォンが変動相場制に移行し、存在が軽くなった円が下落した時、ようやく日本の輸出製造業は満足に呼吸できる時代を迎えられる.

緩やかな手口としてはどんなのがあるのか、わたしには判らない(SDR?、トービン税?).  がっ、いずれにせよ、新興国のドル離れを促進することが日本の戦略であろう.円高であるかぎり日本輸出製造業の将来はない.

----輸出製造業は自由貿易の夢を見るか?はこれにておしまい----     つぎへ       前へ

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