サイモン・シンの著作では「フェルマー」の次に評判が高いと思われるのが「暗号解読」かと思っています.個人的には5段階評価で、
フェルマー ★★★★★
宇宙創成 ★★★★☆
暗号解読 ★★★★☆
ひら的には数論という題材がなにより面白かったので「フェルマー」に★5つ.
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人類の暗号の歴史について、本書から抜き出した年表は下記のようになりました.コンピュータが発明される前後でやってることが全然違います.有名なチューリングの暗号解読マシンは想像してたのよりもショボイ物でした.
~1400年 アルファベットのスクランブル
1400年代 複数のスクランブルキーを逐次切り替えるスクランブル
1500年代 26通りのスクランブルキーを逐次切り替えるスクランブル(ビジュネル暗号)
1800年代 ビジュネル暗号がハッキングされる
1824年 ヒエログリフ解読
1900年代
第一次大戦 ドイツのADFGVX暗号 (過去の遺産の延長強化) →ハックされる
第二次大戦 ドイツのエニグマ暗号機 (電気接点型スクランブラを複数回通す)
→運用がタコいエニグマ暗号は解読された、運用が賢いのは未解読
→チューリングのエニグマ解読マシン登場 (全自動電気接点型総当りマシン)
1953年 線文字B解読 (ギリシャ)
1969年 安全な鍵配送方法考案 → UK政府が隠蔽
1973年 素数を使った公開鍵・非公開鍵考案 → UK政府が隠蔽
1975年 公開鍵・非公開鍵のアイデア発表 →RSAへ
1976年 安全な鍵配送方法発表 → DESへ
1977年 素数を使った公開鍵・非公開鍵を発表=RSA
1984年 量子暗号のアイデア
1985年 量子コンピュータのアイデア発表
1989年 量子暗号の実験に成功
1991年 PGP発表
1994年 量子コンピュータ用素因数分解プログラムのアイデア発表
1997年 UK政府が隠蔽を解除
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本書から判る暗号の歴史は4段階に分類できるように思われました.
1) 暗号の基本的手法はアルファベットにスクランブル(並び替え)をかける手口で、1800年代までは手作業によるスクランブルの複雑さが徐々に高度化してゆく歴史であった.
2) 1900年代前半には、メカトロニクスによるスクランブラで複雑さが一気に増す.
3) 1970年代に公開鍵・非公開鍵が発明され、コンピュータが普及した1980年代に同方式による暗号通信も普及.
4) 1980年代に量子暗号/量子コンピュータのアイデアが考案され、現代に至る.
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ひら的には、暗号というものは宇宙人の言語のような奇奇怪怪なモノなのではないかと思っていたのですが、全然そんなコトはありませんでした.基本的にアルファベットのスクランブルでしかない.それはどうしてかというと、軍用暗号にせよ民生用暗号にせよ、暗号の専門家でない人がハンドリングできる程度の使いやすいツールでなければ普及しないからのようでした.
ゆえに本書では2000年に渡る暗号発明者と暗号解読者のスクランブル合戦が描かれているわけですが、それとは異次元の粗暴な暗号通信で戦争をやってた奴らが居たんです.その粗暴な奴らとは、太平洋で日本と戦争していた頃のUSAです.ドイツやUKよりも暗号開発に遅れている米軍が通信士として採用したのがインディアンでした.喋れる者がとても少ないインディアン語で鉄板の軍用電波通信していたそうです.
まるで宇宙人の言語みたいだと、ひら的には本書で最も感心したのがここでした.それと同時に、USAってのは侮れん奴らだとビビりましたよ.
サイモン・シンの著作には「代替医療解剖」というのがありますが、医療にはあまり興味ないなぁというわけで、いまのところ読む予定はないんです.
かしこ
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ナバホ族の言葉が複雑怪奇なので、コードトーカーとして採用された、という逸話でしたっけ。うーん「暗号解読」は、まだ途中で読むのをやめてしまっています。再開せねば。
返信削除下巻の最後の方は資料ページなので分量が少なめなのと、下巻は知ってる時代なのでサクサク読んでしまいました。
削除頭の良い人間にかかるとちょっとした隙から、どんどん復号されていってしまうのだなーと、感心してしまいました。
返信削除たまに差し込まれている小話も残酷だったりして。
フェルマーか暗号解読に出てきた、感じの悪い女性数学者がひどい殺され方する描写はたまに思い出しちゃいます。こえー。
暗号解読の才能があったとしても報われないものよのうと思っちゃいました.
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