2013年9月20日金曜日

【無念】 理想郷のはずのエリジウムはハリウッド病で瀕死

「第9地区」の監督がつくった「エリジウム」が今日から日本公開されました.第9地区では、なんて品のある3D映像を作る人なんだろうと感心しまして、それがエリジウムではどうなっているかを確認するのが目的といっても過言ではありません.

しかし、エリジウムは、ハリウッドの病で瀕死の状態の映画でした.残念です.

まず、「第9地区」を観て、わたしがこの監督の次回作も観たいなぁと思った理由から書こうと思います.

とその前に「第9地区」のあらすじから.(記憶がウロなので間違っているかもですが)
南アのヨハネスブルグに、巨大な謎の宇宙船が降臨してから10年ぐらい経った現代社会.宇宙船の目的は全く不明だが、ヨハネスブルグの一部を占拠して宇宙人が住んでいる.宇宙人はエビのような姿をしているのでエビ野郎と呼ばれ、あまり強くないし頭も悪そう.南アには、エビ野郎を取り締まる特務機関みたいなのがいて、エビ野郎のアジトを捜索したりと強権を振るっている.また特務機関はエビ野郎が所持する兵器もたくさん収集していたが動かし方がわからない.あるエビ野郎が長年手塩にかけて少しづつ精製してきた謎の液体があった.その液体は宇宙船の燃料だったのだが、あるジャーナリスト(主人公)がその液体を被ってしまい、彼は次第にエビに変身してしまう.ホモサピエンスとエビ野郎のキメラのような状態で特務機関に捕えられた彼は、エビ野郎の兵器を使いこなせることがわかり、人体実験のために殺されそうになる.特務機関から逃走した彼は、エビ野郎の兵器を使って闘う.逃走の途中で助けたエビ親子が液体を作った張本人で、彼はエビ親子を逃がす事には成功し、宇宙船はヨハネスブルグを後にして宇宙のどこかへ旅立つ.地上にはエビ野郎の多くが取り残されており、すっかりエビに変身した彼はエビのままヨハネスブルグに住んでいる.ヨハネスブルグの日常にはなんら変わりがない.

こんなあらすじなもんですから、何のテーマ性もありませんし、ハッピーエンドでもありませんし、後味の悪いダークな映画なのです.でもどうして「第9地区」のことが好きなのか? それはたぶん、「第9地区」が映画学校の卒業制作とか同人誌のようなノリで作られていて、監督が「オレはこういう映像を撮りたい」っていうパッションだけで作ってしまい、その映像がかな~りカッコイイからだとわたしは思っています.また逆説的に、そういうパッションだけでこんな映画を撮れたのかぁ、うらやましいなぁと思う映画ファンの憧れもありました.なので、この監督が次はどんな映画を作るかを楽しみにしていました.もちろん、コケる可能性もあるわけですが.

↓エビ野郎のアジトの地下に埋まっていたシャトルが泥をまき散らしながら浮上するシーンが味わい深くてよいです.
↓やたらと細かいところまでカチャカチャと動くモビルスーツを操縦して闘う主人公.このモビルスーツのメカと機動は超カッコイイ.

-----------以下はエリジウムのネタバレです-------------
「エリジウム」のあらすじはどうなっていたかというと、、、、、
↓地球はこのようなスラムと化している.
↓スペースコロニーエリジウムには金持ちだけが住んでいて、こんなに綺麗な場所.病気も戦争もない理想郷.
↓ジョディフォスターが扮するのはエリジウムの治安担当のタカ派の長官.
↓ロサンジェルスに住むマラドーナのようなこの男はサブキャラだが結構重要な役割.マラドーナは、エリジウムへの不法移民を手引きするのを生業としている.
↓だが不法移民は大抵失敗する.しかもジョディフォスター長官は不法移民の乗ったシャトルをミサイルで撃墜するのを好む.しかしエリジウムの指導者はそのような手段を好まず、生け捕りにして地球へ強制送還するやりかたを好む、といった具合に路線論争がある.
↓マットデイモン扮する主人公は、地上でマジメに工場で働く男.その工場の労働環境は劣悪で、ある日彼は事故で放射能を浴びて余命5日と宣告され解雇されてしまう.
その工場はロボットなど宇宙で使う機材を製造しており、社長はエリジウムを作った設計者の一人であった.社長はジョディと知り合いで、ジョディからエリジウムのクーデター計画に誘われる.ジョディからの依頼は、エリジウムのメインコンピュータを再起動して一切の権限をジョディが掌握することであった.社長はそのためのプログラムを作成し、電脳に格納し、シャトルで軌道へ上がろうとしていた.

↓余命5日のマットデイモンは、マラドーナの処に行き、エリジウムへのシャトルの手配を依頼するが、その代償としてエリジウム要人を襲ってパスワード等を盗むことを強要される.
↓マットデイモンが襲うのは、いうまでもなく自分を余命5日にした社長である.社長のシャトルを撃墜し、電脳データを自分の脳に転送する.この左の男が社長.社長はここで死ぬ.
社長が襲われたことを知ったジョディの指示で、地上にいるエージェント(殺人狂)がマットデイモンを捕らえ、電脳データを欲するジョディの元へ彼を護送する.電脳データを取り出される寸前でマットデイモンは脱出し、マラドーナと合流してメインコンピュータへと向かう.エリジウムを初期化して、市民と非市民の区別を無くすのが彼らの目的だ.

↓この男がエージェント.マットデイモンの初期化に乗じて自分がエリジウムの支配者になるべく、ジョディを殺してしまう.そして、メインコンピュータへと向かうマットデイモン達と肉弾戦を繰り広げる.マットデイモンは辛くもエージェントを殺す.
ラストシーンで、メインコンピュータに取り付くマットデイモンとマラドーナ.初期化プログラムを電脳から取り出すと死ぬことがわかったが、マットデイモンはそれを承知でエリジウムを初期化する.マットデイモンの死と引き換えに、地上の人々もエリジウムのテクノロジを享受できる明るい時代を迎える.

というわけで、「第9地区」とは異なり、ストーリーとか内容がある映画でした.....

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この監督自身が痛感していることと思われますが、ハリウッド流の映画制作の掟に翻弄されて、瀕死の重傷の映画を作ってしまったことを悔いていると思われます.

エリジウムを初期化するのが生死を分ける映画なわけですから、ジョディ+エリジウムシステムによって、追い詰められ追い詰められ、にっちもさっちも行かなくなりながらもマラドーナの頭脳とマッドデーモンの腕力によって一発逆転的にエリジウムの初期化に成功する脚本でなければならなかったはずです.ところが、ジョディは格下の部下にあっけなく殺されてしまい、マッドデーモンが闘う相手は殺人狂のエージェントであって、エリジウムシステムによる反撃は特になし
なんでこんなプアなストーリーになってしまったのかというと、それはハリウッドの投資家の弁護士が「頭の悪い鑑賞者に理解できるような平易な脚本にしろ!」と言ってどんどんつまらなくした結果であろうと、わたしは推測します.
「第9地区」はまだ無名の監督が安い製作費で作ったので、投資家の弁護士から横槍を入れられることがなく、またテーマなんか何も無い映画を作っても顰蹙を買わなかった.そういうノーマーク状態で作られた「第9地区」であったがゆえに、味のある映画を作れた
エリジウムは、監督の名は高まって金も豊富に使えたであろうが、結果的に映画をつまらなくする弁護士にマークされまくって制作せざるを得なかったため、このような瀕死の映画になってしまったのでしょう.残念なことです.

「第9地区」で秀逸だったメカの機動はどうだったかというと、あのやたらとカチャカチャ動くモビルスーツが出てこなかったので残念でした.航空機の動きは、まぁまぁというところでした.「第9地区」の方が良かったです.エリジウムは派手に動かしすぎって気がしました.第9地区のように、あまり派手に動かさず、報道ヘリのカメラ目線のロングショットで撮っていた方がよかった.なので、エリジウムを観てもこの監督の次回作を期待するなどとは思わないでしょう.
エージェントとの肉弾戦とか、エリジウム内の通路での撃ち合いが多かったですが、これらすべてがつまらなかったです.地上のスラム街での撃ち合いの方がマシでしたが、これとても「第9地区」の画面レイアウトとカット割りに比べると劣っていました.なので、エリジウムを観てもこの監督の次回作を期待するなどとは思わないでしょう.

とりあえず次回作に期待します.再起をかけて作れよ!  >  監督殿

かしこ


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12 件のコメント:

  1. ソニーOB:佐藤2013年9月20日 11:29

    今日は2時25分に緊急地震速報がなりましてびっくりしました。うちは震度2くらいなのでそれほどの揺れではなかったので良かったです。
    でもアメトークの前後は鬼門だなぁと前々から思っていましたが今回も当てはまっていやな気分です。
    今日の震源地はMは小さいけど未だにもにょっているようです。
    茨城県ももにょっているので関東も心配ですね。

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    1. 次回の危険日はいつでしょうか? 備えよ常に.

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    2. ソニーOB:佐藤2013年9月21日 1:53

      緊急地震情報の携帯履歴(2011年4月5日以降)を調べてみたら
      月曜日:1回
      火曜日:0回
      水曜日:3回
      木曜日:6回
      金曜日:4回
      土曜日:3回
      日曜日:3回
      という結果になりました。あくまでも宮城県が緊急地震情報のエリアに入った回数ですのであしからず。
      次回ですか。予言者でも体感あるわけでもないからなぁ。2,3日後に館山の南30kmあたりでしょうか?なんてね。

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    3. 金曜日に巨大地震が多い説があるので、金曜日は備えよ常にな日かも.逆に週の前半は安全日ですね

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  2. ソニーOB:佐藤2013年9月20日 11:35

    今日はiPhone5S,5Cの販売のニュース。
    ユニクロもそうだけど入る時のハイタッチを観るのがとっても嫌です。
    ソフトバンクには10日から並んだ先頭の方は会社員44歳とは。本当に会社員か?って
    思ってしまいます。

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    1. あれは理解できないです.
      自らの苦行により、Appleへの忠誠心をアピールしても、Appleはなにも恩義には感じませんので、平熱に戻るのが吉と思います.
      というか、その熱意で仕事したらどう?とおもっちゃったりして.
      すでにクビになってるかもですがw

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  3. ソニーOB:佐藤2013年9月21日 2:07

    先日TV観て初めて知ったのですが、3億円事件の犯人は警察幹部の息子が有力(ほぼ黒)で事件の5日後に自殺したとなっていたとか。自殺は青酸カリの服毒自殺で青酸カリの包み紙が家の天袋から発見されたがその包み紙から指紋は息子本人のは出ず、父親(警察幹部)の指紋だけ発見されていたとの捜査資料があったがずっと隠匿されていたそうです。
    さらにモンタージュ写真はある犯罪で捕まった事のある男の写真で、その男は事件の1年前に事故でなくなっているとか。その警察幹部の息子と良く似ており、使用したとのこと。
    いやあ警察幹部の息子の大事件でも不祥事であるという事から隠匿されるようでは政治家なんていわずもがなって感じですね。

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    1. そりゃぁすごいです.しかしその金は誰の手に入ったのでしょう?

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    2. ソニーOB:佐藤2013年9月21日 13:27

      番組はYoutubeにありました。
      12分30秒あたりからです。ただ金の行方についてのコメントはないです。
      http://youtubewara.blog10.fc2.com/blog-entry-7030.html

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    3. あのころの3億円っていまの50億円ぐらいの価値があるとかなんとか.
      当時の総理大臣は佐藤栄作で、自民党の金庫に入ったりして.

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    4. ソニーOB:佐藤2013年9月21日 19:04

      3億円の事件によってけがをした人もいない事から強盗ではなく窃盗扱いで、さらに3億円は保険で補てんされたことから、“憎しみのない強盗”のあだ名もあるという事です。
      ただこの事件の捜査だという事にして当時激しかった大学紛争や安保闘争に関わっている人達のあぶり出しやヤクザの名簿作成と公安のやる仕事をやっていたということで警察組織はかなりの情報を手にすることが出来たという事でした。
      ザ・ベストテンか何かでモンタージュ写真が五木ひろしに似ているとかやってなかったっけ?

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    5. わたしはハニワな顔だなぁと思っていました.つまり五木さんはハニワだったのか.

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