2015年6月26日金曜日

新型光ストレージへの妄想  その6 ( ドラが乗ればさらに倍!PM変調)

本連載第5回は、PM変調っていろいろと厄介だったりするけれど、電波の世界では大流行しているという結びでした.今回はそのPM変調のあれこれについて書きます.

↓まず、AMラジオの変調方式であるAM変調はこんな波形です.例えばニッポン放送は1242kHzの搬送波ですから、下図の細かなサイン波が1242kHzに相当します.包絡線が音声信号に相当します.
↓FM放送の変調方式であるFM変調はこんな波形です.FM東京は80MHzの搬送波ですから、下図の細かなサイン波の平均周波数が80MHzに相当します.青いのが音声信号で、音声信号の電圧に比例して周波数が高低します.実際のFM東京がこんなに深く変調かけてたら妨害電波をまき散らして大迷惑をかけてしまいますので、この図は極端に描いています.
↓PM変調にはいろいろな種類があります.一番簡単なのがこのようなPM変調です.青いのが変調信号であるデジタルデータです.赤いのが、PM変調された信号です.デジタルデータ=0の時に位相は0度です.デジタルデータ=1の時に位相は180度(位相反転)です.
↓いろいろあるPM変調ですので、こんなPM変調もできます.赤い信号が、0度、90度、180度、270度の4つのバラエティになっています.これだと便利なことに、2bitのデジタルデータを伝送できます.タンヤオ ドラ1で得点が2倍の2000点になったような便利さです.
↓どうせなら、3bitのデジタルデータを伝送したくなります.そのために、4つの位相角だけでなく、振幅にも2つのバラエティを持たせたらどうでしょうか? AM変調とのあいのこみたくなります.これだと、合計8つのバラエティを享受できますから、3bitのデジタルデータを伝送できてしまいます.タンヤオ ドラドラで得点がさらに倍! 3900点になったような幸福です.
↓位相角のバラエティが増えるとだんだん波形が判りにくくなりますので、ベクトル図で表示するのが一般的です.最初に例示した、0度と180度のベクトル図はこのようになります.つまり、0度か180度のどちらかだと言ってます.
↓0度、90度、180度、270度の4つのバラエティのPM変調のベクトル図はこのような、4つのどれかだと言いたげな図になります.
↓0度、90度、180度、270度の4つのバラエティに加えて、振幅のバラエティを2つ持つPM変調のベクトル図は、このようになります.実際にこういう事例は無いと思いますので、飽くまでも概念としてご理解ください.
↓以後は、ベクトル図だけでの例示とさせていただきます.位相のバラエティを8つに増やしたら、このようなPM変調もありえます.これは8PSKと呼ばれ、実用化事例のあるPM変調だそうです.
↓位相だけでなく振幅も細かく制御すれば、このようなベクトル分布をするPM変調もありえます.これだと16個のバラエティですから、なんと4bitのデジタルデータを伝送できてしまいます.さらに倍!タンヤオドラ3で7700点ですね.これを16QAMと呼び、地デジで採用されているらしいです.
↓人間の欲望は留まるところを知らず、こんなもう無茶苦茶と言いたいようなPM変調も実用化されていて、地デジで採用されているそうです.64QAMという呼び名で、64のバラエティがありますから、6bitのデジタルデータを伝送できてしまいます. タンヤオドラ5で跳満の12000点という高い満足度です.
↓実際の64QAMを受信したベクトル図はこのようにノイズでバラついてしまうようです.というかこれだけ綺麗なら充分に高SN比でノーエラーで無問題だろう.
というわけで、電波通信の世界でPM変調が大流行している理由が判っていただけましたでしょうか? PM変調は、位相(と振幅)のバラエティを細かく刻むコトによって、伝送bitを容易に増やせる、という特徴があるため、電波通信では人気なのです.(とヒラサカは思う)

ところでこの連載はストレージについて語るのが目的です.
ここまでPM変調を持ち上げて来たからには、HDDや光DISKでもPM変調が大流行しているのかと思いきや、全然そんなコトはありません
実験室レベルではPM変調の応用例はいろいろあるんですけど、ストレージ製品として(デジタル)PM変調が実用化された事例は皆無なはずです.例外的に、VHSの低域変換クロマが低性能なPM変調であった、とは言えますが....

ストレージへのPM変調の実用化を阻む要因は2つあります.
1) 磁気記録にせよ光記録にせよ、非線形なので、1か0かの記録再生は得意だが、位相というアナログ情報を記録再生するのは基本的に不得意である.
2) 回転ムラによる時間誤差がストレージにはつきまとうから、PM変調がダメになってしまう.

本連載を通して読んでいただければ、回転ムラによる時間誤差を克服するためにストレージ技術者がどのように闘ってきたかをご理解いただけると思います.

次回は、タイトルにある新型ストレージへの妄想に近づいてゆきます.

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かしこ


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