2013年7月17日水曜日

耐震診断はどんなことをするか?

東北大震災はマグニチュード9でしたが、その図抜けた巨大さを知ることができるのがこの動画です.2:05に3.11が炸裂します.表示スケールが振り切っているんじゃないかと心配になるほど巨大です.
大震災の後、建築物の耐震診断の需要がより多くなり、ちょくちょくアルバイトをしているわたしです.
技術的には耐震診断の流れはこんな感じになります.
  1) 建物のCAD図面が完備していれば、それで構造解析する
  2) CAD図が無い場合は(昭和の建物は無いのが普通)、調査員が現地で建物の寸法を測定する.わたしのアルバイトはこの仕事です
  3) 実測寸法を元に、CAD図を描く
  4) それで構造解析する
  5) 補強プランもsimulationする
技術的には理路整然としているわけですが、補強するのにすごいお金がかかるので、そのビルを解体して建て替えようかとか、、、、お金にまつわる要件にビル関係者は次第次第に振り回されてゆくことになるのが常であります.お気の毒様でございます.

わたしのアルバイトは戸建て住宅は対象とせず、ビル・工場・店舗などのような巨大な物件ばかりです.それらは、鉄筋コンクリ(RC)の建物か、鉄骨造の建物のどちらかになります.

RC造の場合
RC造はこんな断面構造になっています.
したがって、建物の寸法を実測するには次のようなヶ所を測定をします.
 ●スラブ(床)の厚さ
 ●壁の厚さ
 ●梁のサイズと構造
 ●柱のサイズ
 ●開口部(窓・ドア・ダクト)のサイズ
 ●鉄筋の太さと本数    →レーダーで探測します
 ●コンクリや鉄筋の健全さ    →直径8cmぐらいのサンプルを採取します
だいたいこのくらいの情報でCAD図を描きます.

RC造の場合は、スラブ厚はどこでも同じだし、梁の構造もどこでも同じ、柱もどこでも同じ、という具合に、寸法や構造に普遍性があるので、寸法を測りながら建築士の人が建物の構造を推定しつつ進めることで効率よく採寸できます.

実際には、採寸したい場所に巨大な棚が置かれていたり、梁が天井裏にあるので天井を剥がして覗いたり、ホールの天井高が5mもあったり、棺桶がたくさん積まれた地下室がホラーだったりと、採寸を妨げる要因が満載なので一筋縄ではいかないもんですが...

鉄骨造の場合
鉄骨造はこのような竹を割ったような簡便な造りと思っちゃうわけですが、残念ながら耐震診断にとっては簡単な構造とはとても言えたもんじゃありません.
↓柱が基礎に締結される部分を採寸するには、柱の足元を露出させるために、わざわざ削岩機でコンクリを壊します.大きな騒音が出ます.採寸するのは、
●柱のサイズ・肉厚     →肉厚は超音波で測定
●プレートの大きさ・厚さ
●ボルトのサイズ・本数・位置
↓梁の材料としてH鋼が主に使われますが、このH鋼には様々なサイズがありまして、測定すべき着眼ヶ所は
 ●H 、 A 、 t
ですから、H鋼を何カ所も測定しなくちゃいけません.しかも梁は天井付近にあるのが常ですから、高所作業になって採寸が困難です.
↓さらに、H鋼の継ぎ目のところも測定対象です.
 ●接合プレートのサイズ・厚み
 ●ボルトの本数・位置・太さ
↓柱の天側で梁と接合される部分は、この図のように腕が飛び出ていますので、
 ●腕の採寸
もしなくちゃいけません.しかもこいつのサイズはバラバラで一貫性があまりありません.
↓まだ終わりません.木造の筋交いに相当する斜め材として、ブレースという自転車のスポークみたいなものもありまして、この構造も正確に採寸することが必要です.
 ●ブレースの配置・太さ・本数
 ●ブレースのネジサイズ
 ●柱や梁への締結構造
↓あともう一つだけ、
 ●溶接ヶ所の品質もチェックするんです
いまは工場で溶接するので高品質な溶接が実現されているそうですが、昔は現場で溶接していたので技能の差によって溶接部位の耐震強度もまちまちだということで、超音波診断の専門の人に判断してもらいます.全部のヶ所を診断するわけにはいかないので、一部の結果から全体を断定するという曖昧さはどうしても耐震診断にはつきまといます.
鉄骨造で増築を繰り返したケースだとカオスのような継ぎ足し方がされてたりしてアグアグ~と言ってしまいます.鉄骨造の耐震診断は大変なのだと言いたかったわたしなのでしたー.

かしこ


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7 件のコメント:

  1. ソニーOB:佐藤2013年7月17日 23:49

    出所は同じかもしれませんがこちらの方がよりわかります。

    http://www.quakemap.info/?y=2011&m=4&d=6&s=31

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    1. あ、ほんとだ.まったく宮城県ってところは地震なんだからもう.

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    2. ソニーOB:佐藤2013年7月18日 0:43

      3月9日に大きく揺れて(震度5かな)、その後にくしゃみが出そうで出ないような状態が続いていたとは思いもしませんでした。
      確か報道では「ここ1週間は余震に注意して下さい。」といつも程度だったと思います。
      こんなに同じ場所が立て続けに11日まで続いていたらもう少し強い警告が出せたんじゃない?って思います。「こりゃあちょっと余震にしては動きが変だぞ!」って思った気象庁や地震学者はいなかったのだろうかって思います。
      9日はちょうどGSで給油中だったので屋根がきしむ音がすごかったです。あっこれは宮城県沖地震では?と思ったものです。
      11日の本震は買い物から帰ってきた直後でぺヤングにお湯を入れたところでした。揺れた瞬間にふたが空きお湯が飛び出しました。40インチの液晶テレビが倒れそうなのでテレビを左手でテーブルを右手で抑えて地震がおさまるのを待ってました。というかその状態から次の行動が出来るとは思えないほどの揺れでした。これで震度6強でした。
      お教えしたURLは直近の地震も時系列でわかりますから興味深いです。

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    3. 意外なことにGSはとても安全な場所だそうです.
      11日は自宅の屋根裏で工事してまして、こりゃぁ日本のどこかが壊滅的被害を受けたに違いないと察知しました.

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  2. 地震の動画2っ見ました。地球のどこかで日単位で起っているのかと思ってしまいました
    今日TVで富士山の宝永の大地震2を心配される状態に有るとか?
    楽観視ばかり出来ない様な、不安を少し感じます。

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    1. 3.11はあまりにも大規模だったので、地球の自転周期が少し変わってしまったそうです

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  3. 3.11はあまりにも大規模だったので地球の自転周期が少し変わってしまったそうです

    ほんとですか?
    中学生のころ、巨大ロケット打ち上げで、地球の自転周期に影響が無いのかな?なんて
    くだらない事を考えた事が有ります。
    大きな地震では、回転軸に対する、重力変化も有るので影響してくる事はあり得るのか?

    大昔と現在では、計測技術の精度の違いも有るが、自転周期、公転も違っていた?
    地球の質量、回転軸、自転軸と重力バランスなどの変化?
    SFの世界は、興味が有ります。

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