2011年12月22日木曜日

現実がSFに追いつくとなんとはなしに幻滅 ----フェルマーの定理----

堀晃の短編集「太陽風交点」は好きなSFのうちの一つです.

表題の「太陽風交点」が最も好きです.恒星観測ステーションのコンピュータが、恒星のバーストを予知して主人公に退避警告をする.コンピュータはステーションごとバーストで消え去ってしまいます.そのコンピュータは、死別した彼女の脳細胞を培養した生体コンピュータで、会話の端々に彼女の面影が宿っていた.彼は恒星が発するバーストの光球内には二度と入れなくなる....

どうもわたしは、アンドロイドとの恋愛感情をモチーフにしたSFに惹かれる傾向があるようで、眉村卓の「わがセクソイド」も初めて読んだのは中学生だったけど今でもたまに読みます.マンガ家の江口寿の短編にもアンドロイドものがあって好んでいます.

話を戻しますと、その短編集のなかに「遺跡の声」という作品があります.「太陽風交点」のバーストの直前に保護した結晶生命体が優秀なAIとして活躍しています.AIの名前はトリニティ.ある異星人の遺跡を調査したときに、その遺跡のコンピュータがトリニティに X^n=Y^n+Z^nを満たす自然数の組み合わせはn>2で存在するか?という問いを投げかけてきました.フェルマーの定理です.

やがて、トリニティは遺跡のコンピュータと融合を成し遂げて新たな生命体となって消滅してしまいます.消滅する間際に、主人公は生命体に問います.フェルマーの定理は解けたのかと.生命体は「フェルマーの定理の問題は解決した」と答えます.フェルマーの定理を満たす自然数は存在したのかと問いましたが、もう遺跡からの返答はなかった.....

ほほぅ、ここでフェルマーの定理を出しますか.カッコイイなぁというのが読後感でした.

と・こ・ろ・が、リアルワールドでフェルマーの定理は証明されちゃったんですよね.自然数は存在しなかった.

この輝かしい成果のおかげて、わたしにとっては「遺跡の声」の価値が半減してしまったといっても過言ではありません.トリニティと異星文明が融合することでしか解決しなかったほどのフェルマーの定理が、一気に人類の手で解決できちゃった諸問題へと格下げされちゃたと.

SFの世界は具現化しないほうが好ましいかと思います.

1 件のコメント:

  1. サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」は名作です。
    読んでなかったらおすすめします。(・ิω・ิ)ノ

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