わたしの知り合いには新自由主義信奉者って一人もいなかったんです.
なぜか?
わたしの知り合いは工学部系が多いわけです.金融不動産商社の知り合いはほとんどいないなぁ.
工学部系ですから多くが製造業なんですが、製造業というと日本の地方工場で行われているように、労働者の雇用を通じて労働分配に寄与する産業というポジションにあり、とりわけコンスーマエレクトロニクス産業は女性労働者を多く雇用できるのでより労働分配に寄与できるポジションにありました(過去形).だから、製造業の社員であれば自ずと空洞化による痛みに直面する機会が多く、その結果、新自由主義的な思想が最高だと思うような人格形成がなされる機会が基本的にないので、わたしの知り合いには新自由主義信奉者がひとりもいないのだろうと推測しています.
たしか昨年の初夏の季節だったと思いますが、飲み会で何人かの初対面の人と、ソニーはどうよとか、MSはB2Bが主力なの?とか、XBOX360はどうよとか、MSのサービスセンターがとか、石油は儲かってるとか、そんな話をしていました.そのうちのひとりが、竹中平蔵の政策はすばらしいと言い始めました.
おおっ、と思いました.だって、初めて新自由主義信奉者の実物を見たんですから.だが、底は浅かった.新自由主義者以外は全て社会主義者というレッテルを貼るので、このわたしが社会主義者のレッテルを貼られましたw.未だに左翼と右翼という二項対立でしか世界を認識できないようでは深い理解をできていない証拠です.
その人曰く、金持ち減税をもっと断行すれば、金持ちがより金持ちになることで税収が増え景気も良くなると力説するんですけど------「トリクルダウン理論」というんですが--------、新自由主義の御本家USAからしてトリクルダウン理論なんか完全に主流から脱落していて、オバマ政権は金持ち増税をやろうとしているわけです.国家間でも黒字国の資金を赤字国に環流させる仕組みを何とかして作らない限り、黒字国が赤字国に投資なんかしないわけです.資本主義経済が「トリクルアップ理論」だっていうのはマルクス経済学の常識じゃないですか? 新古典派経済学とか新自由主義が経済政策の主流に返り咲くことは向こう50年間はないですよ.冷戦の勝者である西側で一時的に新古典派経済学が流行したことがあった、というのが後生の経済史の評価なんじゃないか?
というのがヒラサカの世界観なんで、その新自由主義信奉者の世界観に、まだいたのか!と驚愕したわけなんですが、わたしの驚きを増したのは、その人が商社マンで、世界数10ヵ国への渡航経験あるいは駐在経験があるという、とても国際経験豊富な人だったからです.
わたしのような、秋葉原-中目黒の往復以外はしたくない超ウルトラドメスティック人間が、自宅でポツポツと思考しているのに比べたら、その商社マンはわたしより何十倍も比較文化論的視座を発展させる機会に恵まれていたはずじゃないですか? それが、左翼vs右翼、資本主義vs社会主義、新自由主義っていう旧いジャンル分けごときにどっぷり浸かってしまって離れられないでいる.いったいなにが起きたの?って話です.
そこで次の仮説を思いついたんです.
製造業の社員には、自ずと新自由主義的思想に染まりにくいというバイアスがかかっている?
商社マンには、自ずと新自由主義的思想に染まりやすいというバイアスがかかっている?
商社マンの中には、防衛関連のようにドメスティックな人もいて様々なんですが、ワールドワイドに活動している人がいたら、どうなんですか?と訊いてみたいと思っているんです.
そういえば、ワールドワイドな商社マンが他にも知り合いにいるなぁ.でもその人はたぶん民族主義者なんだな.全然逆だw.
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