2016年12月28日水曜日

コンピュータが8000倍も高速化するんですって、よかった!

変化の激しいコンピュータ業界ではすでに旧聞に属する話題なのかもしれませんが、約1ヶ月前に発表された、コンピュータが8000倍高速になるという話.
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1032912.html
http://www.publickey1.jp/blog/16/hpethe_machine.html

そりゃすごい、一体どういう技術なんだい?と思うでしょう.

現状のPCのメモリ階層構造は、CPU→キャッシュ→DRAM→ストレージ になっています.

これを、CPU→ストレージ のみから成る(数TBの)平べったい不揮発メモリ構造にするんだそうです.今風なPCアーキテクチャで喩えれば、L1キャッシュが数TBのストレージになっちゃった状態といったところでしょうか?

確かに速くなりそう.でもそれだけで8000倍も速くなるの? と思いますし、メモリ階層構造が8000分の一もの律速になっていたの?と驚いちゃいます.

キーテクノロジはCPUとストレージのデータバスをどうするのかにあり、それは光インターコネクトでなんとかする構想みたいです.オンダイ光コネクトとかプリント基板埋め込み型光配線のような技術をアテにしているとひら的には推測します.

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ハナシは逸れますが、今時のバスは、SATA,SAS,USB3,PCI-expのようなシリアルバスが主流です.最新規格で8Gbpsぐらい出てますかね? これらシリアルバスが規格制定され始めたのは2000年頃でした.それ以前はSCSIやPATAやPCIのようなパラレルバス規格が主流でした.
SCSIの最終規格なんか、32bit幅のLVDSなどという絶滅寸前の恐竜王国みたくなっちゃってたもんねw  この先どうなるんだろうこいつ、と心配してたけどSASが出てきて安堵しました(嘘).
←懐かしのSCSIlコネクタ

PC業界の人々はシリアルバスの方がケーブル価格が下がって好ましいのは判っていただろうに、2000年になってようやくシリアルバス規格が出てきたのは何故なのか?

ひら予想に過ぎないのですが2つの理由があったと思うんです.
1) LSIプロセスの微細化によって、CMOSトランジスタの高周波性能が徐々に向上し、CMOSアナログアンプがGHzオーダーの増幅をなんとかできるようになってきた
2) SiGeプロセスが円満に導入され、CMOSトランジスタの高周波性能がポンと上がって数GHzのアンプを実装できるようになってきた

この2つのプロセス面での貢献により、それまでバイポーラトランジスタでしか実現できなかった数GHzのアンプを、CMOSプロセスで実現できるようになり、シリアルバス規格が続々と実用化されたのが2000年以降だったという歴史認識です.
もっともそれ以前からバイポーラとCMOSを同居させるBi-CMOSという特殊なプロセスが在ったわけだけど、価格が高くて一部のLSIにしか採用されていませんでした.(オンチップでCMOSダイとBipolaダイをボンディングする製品が在ったくらいBi-CMOSは敬遠されていた印象でした)

以上のようにアナログCMOSプロセスの進化の恩恵でシリアルバスが世に出たという認識の一方で、10Gbpsを余裕で越えるシリアルバスが出てこないという行き詰まり感が読者諸氏の脳内にもそろそろ醸成されつつある季節かと思います.それはどうしたわけだ?
SiGeで8Gbpsまでは達成できたが、20Gbpsは達成できそうに無いという技術的限界に到達してしまったからだと思われます.何らかのブレークスルー待ちモードになっている.

シリコンCMOSプロセスに次の何かが出てくるのを待ちましょう.

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コンピュータを8000倍高速にするための光インターコネクトの件にハナシを戻します.

構想は昔からあるけれど、いまいち普及しない光インターコネクト、その理由は何なのか?

今のテクノロジでレーザー通信をやろうとすると、最低でもGaAs半導体が必要になるはずです.シリコンプロセスとGaAsプロセスを同居させるなんて荒業は難しいのでCPUとレーザーが別部品になってしまいます.そのために値段が高くてやる気が起きない...
あたかもシリアルバス出現前夜のような、判っちゃいるけどやる気が起きないというのが2016年の今、光インターコネクトの市場状況ではないでしょうか?

それでは光インターコネクトの大ブレークを期するキーテクノロジーは何なのか?
シリコンよ光れ! 市場はシリコン半導体レーザーを待っているぞ!
開発者がいろいろなアイデアを出したとしても、シリコンプロセスで一貫生産できないうちはPC規格に通用するほどの価格破壊力が出ないんでしょう.だから光インターコネクトの普及はシリコンCMOSオンダイレーザーがTSMCのプロセスで立ち上がるまで待ちかなと.そうなったらCPUやGPUは大きく変わると思いますがね.

もっともシリコン発光は物性的に難しいらしいです.シリコンレーザーの成果は基礎研究がボチボチ出てきたぐらい.シリコンレーザーはノーベル賞級だと思う.
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0705/200705_074.html

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密かな技術進化についてもうひとつ、カーステについての考察を.

カーステのFMラジオの感度が劇的に向上した気がしませんか?

↓わたしが所有していた80年代~90年型のこれらのクルマで神奈川県中部を走行中、FMラジオでFM東京(80MHz)を満足に受信できたためしがありません.ラジオの感度が悪くて横浜のラジオ局の電波しか満足に受信できなかったです.
↓ところが、、、今乗っているクルマはこれなんですけど、神奈川県中部を走行していて、FM東京をフツーに受信できてます.81.3MHz JWAVEも受信できますし、79.,5MHzのFM埼玉も受信可能という改善著しい謎の状況.回路技術者としては、この進化にはアタマが下がります.どこかにいる技術者のおかげで伊勢原を走行中のクルマでFM東京の高橋みなみを聴けたりしているわけですね、ありがとう.
↓具体的にはこういうRFモジュールの高性能さによるのでしょう.
↓昔のラジオはこんなでしたからね.ポリバリコンとディスクリート回路の世界www

さらにこれはヒラサカの邪推なんですけど、BS/CSのパラボラアンテナのRFアンプにはHEMTというスゲー高性能なトランジスタが使われています.HEMTが無かったらSN比改善のためにパラボラの直径が2倍とかになってしまって邪魔になります.
そのHEMTが地デジ向けに大量消費されるようになって価格が低下し、カーステのRFモジュールにも採用されているのではないか? その恩恵で、伊勢原で高橋みなみが実現したのではないか? (HEMTは値段が高すぎるかな?)

ともあれありがたいことでございます.

どこかで何かが少しずつ、しかし劇的に変化する様を感じ取って前向きに生きていこうよ.

技術進歩よしっ、、、

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