2013年10月30日水曜日

【にわかAVマニアの縮小】 TVに固執する日本の家電企業という記事

なぜ日本の家電企業はTVに固執するのかという記事がありました.
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131030-00000500-san-bus_all
こういう『だから日本はダメなんだぁ、ハァ~』的な、関口宏みたいな言説にはあまり感心しないわたしです.なぜなら、Appleを見倣えとは言えども、AV分野で大成功しているのはAppleぐらいなもんなわけですから一概に日本がダメで欧米が強いとは言えません.しかもそのAppleからして業績の浮き沈みが鬼のように激しくて、10年前のAppleなんか潰れる寸前でした.だから、いまが落ち目とはいえ過去数10年も持続して来た日本の家電企業のことをダメダメ言うなよと.

というわけで企業の浮沈についてはさておくとして、しかしながらAV業界の先行きについてはわたしは悲観的です.

なぜか?
6月頃から”にわかAVマニア”になって、様々なイベントとか、秋葉のオーディオ店とかを見学したりするようになって、痛感したことは、
オーディオマーケットはあまりにも縮小しすぎた
ということです. (マイナー化したので趣味として荒廃したとは言いません)
・秋葉で自作スピーカーユニットを販売している店は、いまではもうコイズミ無線だけと言えるでしょう.あの秋葉ですら、たった一店舗しかスピーカユニット屋を維持できないまでマーケット規模が縮小してしまったわけです. (千石電商でも少し売ってるらしいがいつまで続く?  あとヨドバシでも少し売ってるのを思い出したがあそこで買うメリットは感じられずショールーム的位置づけかと)
オーディオフェアの成れの果てのイベントも見学しましたが、あのソニーが会議室一つだけの規模っていうのは驚きました.エレショー等で最大のブースを構えて広告宣伝費もたっぷりかけてイベントに参加するソニーが、会議室たった1つだけ.もはやピュアオーディオマーケットへの期待感がまるで無いことに正直冷や汗ものでした.
・AV雑誌も、ターゲットを一部のハイエンドマニア層に絞る作戦だなどと聞きます.

80年代のオーディオを知っているわたしとしては、現在のオーディオシステムは昔よりもはるかにコストパフォーマンス良くリスニング環境を構築できるようになっています.その理由は、
  1)サラウンドソースがたくさん売られている
  2)AVアンプの音場補正機能がプアなスピーカー特性をリカバリしてくれる
  3)ハイエンド好きな人はSACDや96kHz 24bitを入手できる
などによります.そういうテクノロジ上のメリットで現在のオーディオ趣味は彩られているので、少ない投資でも膨大な投資でも楽しめる.
さっき、某国で買った「エヴァンゲリオン TV版」のDVDに記録されたサラウンドトラックを試聴してみたら、こんなに豊富な音が入っていたのか~と感心してしまいました.たとえ数万円であろうとも、今日のオーディオに投資するのは80年代に比べて遥かに有意義です.

そんな風にテクノロジ的には恵まれた今のオーディオ趣味ですが、マーケット規模の小さな趣味になってしまいました.もともと、質的な差違に対してお金を投資する人は少ないです.質にこだわりを持つのは一部の好事家に過ぎませんから、その帰結として、秋葉のスピーカーユニット店が1つだけに減ってしまうわ、ソニーのブースが会議室1つだけになってしまったのでしょう.80年代のオーディオを知っている者からすると寂しいことですが、いまのオーディオ市場の規模が通常モードだと考えるべきなのかもしれません.茶道や書道がメジャー市場でないのと同じように.

冒頭の「家電企業がTVに固執する理由」という記事は、日本企業が4Kや8Kテレビに活路を見いだしているが、果たして市場はあるの?と問いかけています.にわかAVマニアになる前のわたしだったら、そりゃ2Kよりか4Kの方がいいから市場はあるだろと答えたところですが、オーディオ市場の縮小を見せつけられた今となっては、4Kとか8Kという質への投資はあまり起きないと予想せざるを得ません
2Kよりも4Kが選好されるのは、値段が同じくらいだったらばのハナシであって、4Kの価格が1.5倍とか2倍してまでもそれを買うのは好事家だけだと思われます.だとすると、4K8Kがプロジェクターと同等規模の市場しか形成できない恐れがある.すると数年を経て、往年のオーディオメーカーである山水や赤井やナカミチのごとくTVメーカーが脱落し、2013年のオーディオ市場のような「小さなハイエンド市場」にだけ4K8Kが存続している場面が予想されます.それでは現状の各企業の巨大なテレビ事業を維持できません.

というわけで、長期的な日本の家電企業の基調はTV生産からの撤退(または合従連衡)と予想するわけですが、この退潮の技術的な本質は、大量生産がプロセス技術によって支えられる時代になり、プロセス装置を買って作り込めば後進国でも同等品を作れる時代になったからだと考えてよいと思います.
ゆえに、日本企業の家電製品群で、エアコンのようなメカトロ製品は今後も日本製が残ると思いますけれど、プロセス技術である表示デバイスや照明やLSI類は長期的には消滅するのではないか? 仮に日本製テレビが残るとしても、「小さなハイエンド市場」だけじゃないか?  そのように暗~く考えてしまう”にわかAVマニア”のわたしなのでした.

素材産業とか生産財産業とか重厚長大産業は日本に残ると思います.ただ、わたしとしては、そっち方面の産業って、面白くないんだけどね (汗)

かしこ


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4 件のコメント:

  1. ソニーOB:佐藤2013年10月31日 0:51

    記事の中で”日本の家電メーカーの首脳、幹部の間にはテレビが売れに売れて莫大な利益を稼ぎ出していた古き良き時代の“テレビ神話”が今も忘れられない人が多いのだろう。”と書くこと自体、この記者も終わっているかな?と思いました。
    もうそんなことを考えている経営者はいないと思うし、記者の割には自分の足で調査したような内容が一つもない感じがしました。

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    1. ”軽い”記事ですね.誰にでも書けるような.w

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  2. 終戦後、日本が歩んできた道を浅頭場で見て、好景気の時代が有り、誰しもなっかしく
    思う事が有ると思います。しかし、原発神話も崩れさり、日本の輸出パワ-も減少し
    世界経済が地球規模で、ヨ-ロッパ->アメリカ->日本->中国->xへとシフトして
    いる様な気がします。
    この様な流れを考え、日本の行くべき道を考え進んで行かなければ成らない事は、国民も
    経営者も承知していると思います。過去の良い事をなっかしがっている暇は無いと言うのが日本の現状でしょう。諸条件の悪化により簡単に良策が無い事が八方塞がりに成っている
    様な気がします。そこを、どう解決し、道を切り開いて行くかが、鍵と思います。

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    1. 家電産業は、素材とか生産財に注力するってことで手打ちするんでしょう.

      コモディティ化してゆくコンスーマーエレクトロニクスは長期的には中国か東南アジア勢で決まりっということで.まぁそうなると素材とか生産材を持たないソニーはどうするんだろ?ってことになりますが、版権と生保損保の会社になるのかな?

      趣味としてのハイエンドAVは一部のマニア層向けに必ず残りますので、楽しむことはできると思います.

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