2016年11月29日火曜日

【にわかAVマニアの歪率】 Ucd方式D級アンプを改善する

D級アンプを作ってみようと思います.ここ数日間は家に居る時間はこの回路のシミュレーションばかりやっています.

前回書いたUcd方式のD級アンプを調査しているのですが、どうにも歪率(THD)が良くありません.

Ucd方式のTHDを改善するにはどうしたら良いかについて、面白いコトがわかりました.結論から言うと、THD=0.00068%をSPICE simで得ました.

【小信号THDの問題】
↓前回の回路simにて、Ucd方式のアナログ→bitストリーム変換のコンパレータ入力波形がこんなになっているコトが判りました.詳細は前回をみてほしい.
この波形を見ると、正弦波とも三角波ともどちらともつかぬ微妙な波形です.コンパレータとて万能の神様ではありませんから、大振幅応答は良くても小振幅応答は劣化するんじゃないの?とこの波形を見て思ったわけです.
そこで、入力音声信号を2Vと20mVの2条件でTHDを計算しましたら、やはり小信号はボロボロ.
   入力2V    →   0.085%       いまいち!
   入力20mV   →  1.27%      だめだこりゃw
↓ちなみに、sim回路はこれです.
この回路の問題点として、コンパレータが差動出力でない、コンパレータの素性(ヒステリシスがあるとか)、FETドライバIRS20954が差動入力でないなどと、粗探しすればキリがありません.


【差動回路で改善】
↓そこで、なるべく差動信号処理できるようにこの回路をsimることにしました.IR2011のSPICE modelはここからDLしました.DLにはID登録が必要です.
http://www.diyaudio.com/forums/class-d/58476-my-non-discrete-sodfa-class-d-amp-12.html
回路の改善ポイントとしては、コンパレータが高速かつ差動出力である、FETドライバが一応は差動入力である.(内部は差動ではないみたいだけど)
この回路で、音声入力信号2Vと20mVのTHDを計算しましたら、不満足ですが大きな改善を得ました.
   入力2V    →   0.0085%       一桁改善に成功!
   入力20mV   →  0.458%      小信号応答はダメじゃ
まだ満足は出来ません.


【フィードバック波形を正弦波に】
Ucd方式の性能はフィードバック回路によって左右されると、ご本家Philipsの論文に書かれています.それは何を意味しているのか?
↓ひら直感ですが、どうしてもこのコンパレータ入力波形のゲスさが気になって仕方ありません.グリーンがフィードバック波形ですが、一体これは正弦波であるべきなのか、三角波であるべきなのか? そこに問題の核心があるのではないか?
↓そこでまず、この回路を試してみました.なんと、フィードバックループにBPFを挿入したんです.回路図の左上のLC共振回路がそれ.無謀ですが実験というコトで許してくれ.この回路で知りたいのは、フィードバック波形を強制的に正弦波にしてTHDを評価することです.
   入力2V    →   0.0168%      悪化しちゃった
   入力20mV   →  0.76%       悪化しちゃった
フィードバック波形正弦波攻撃はダメでした.


【フィードバック波形を三角波に】
だとすると、フィードバック波形は正弦波ではなくて三角波であるべきなのではないでしょうか? これならば三角波比較方式のD級アンプと方向性が一致します.
↓PWMに一致した三角波を取り出すには、出力フィルタのLの電流を増幅すればOKです.コイルに流れる断続電流は三角波になりますから.回路図右側のオペアンプU1U5U7が三角波を作るアンプです.U8の+入力に接続されているのはスピーカー電圧です.U8の出力がそのまま入力へフィードバックされ、コンパレータへ接続されます. (オペアンプ2ヶで足りるがsimでは4ヶの方がTHDがGOODだったのでそうした)
この回路にて、THDは一気に2桁改善しました.小信号入力ですと馬脚を顕し気味ですがなんとか0.03%台をキープしています.もう1桁改善したいですが.
   入力2V    →   0.00068%       これなら文句云わない!
   入力20mV   →  0.034%        もう1桁改善したいが、まぁ許す!
というわけで方向性としては当たりだったみたいです.


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フィードバック回路によりけりと御本家の論文に書かれていますが以上の結果からそれは、フィードバック回路の位相応答を調整した結果、フィードバック波形が三角波に似た波形に整形されたからではないかと、わたしは推測します.

「PWM電流フィードバック型Ucd方式D級アンプ」は特許になるかなーと思ってこの記事を公表するのを躊躇したのですが、ちょろっと特許検索したら既にヤマハが同じコンセプトの特許出願をしてました(特開2016-025475).残念でした~

今後は、小信号THDに着目して低歪率化を図りたくおもいます.小信号歪率の悪さはAB級アンプにおけるクロスオーバー歪の悪さに通じるものがあります.クロスオーバー歪の悪さはオープンループゲインが低いD級アンプにつきまとう性質の様な気がするので、治癒できるのかどうかは定かではないが...

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かしこ

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