製造業の国内回帰のニュースとか、円安がもたらすメリットとか、ボーナスupに言及する記事は他にもたくさんあります.
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150104-OYT1T50103.html?from=tw
http://www.47news.jp/CN/201412/CN2014122901001633.html
http://j-net21.smrj.go.jp/watch/news_tyus/entry/20141121-11.html
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6143297
http://www.sankei.com/economy/news/141220/ecn1412200017-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20141106/ecn1411061830008-n1.htm
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201409/2014091900889
これらの朗報ってアベノミクスのお陰でしょうか?
アベノミクス三本の矢「金融政策+財政政策+成長戦略」のうち、今のところ効いたのが金融政策だけで、残りの2本の矢の実効が上がっていないのは衆目の一致するところでしょう.
安倍が自民党総裁になった頃、2012年10月11日に書いたこの記事では、金融緩和すると公約していた安倍が自民党総裁戦で勝ってよかったよかったと書きました.
http://hirasaka001.blogspot.jp/2012/10/nec.html
もしも安倍ではなくて石原伸晃や石破だったら金融緩和なんかせずに過去20年と同じく財政政策だけやって、「やっぱりだめだぁ~」と日本人はあきらめていたと思います.そういう意味では今耳に入る朗報は金融緩和をやると言った安倍のお陰であり、ゆえに製造業の日本回帰も安倍のお陰ではありましょう.しかし、アベノミクス三本の矢がパッケージとして有効に機能しているとは考えづらい.
安倍が金融緩和をやり始めたのは、日銀総裁を黒田氏に交代させた2013年3月です、黒田バズーカなどと呼ばれました.
金融緩和するべきだ、とわたしが察知したのはそれよりも1年と数ヶ月前、2011年11月28日にこの記事を書いた頃でした.http://hirasaka001.blogspot.jp/2011/11/blog-post_28.html
これはデフレ脱却議連という超党派のシンポジウムを見学して書きました.そのイベントで語られていたのは黒田バズーカと同様の内容でして、金融緩和で$1=¥110まで楽勝で戻せるとか言ってました.なんとこのイベントには、民主党の鳩山元総理も出席していました.金融緩和でデフレ脱却すべしと訴える者はあの民主党にも多数いたのです、意外にも.民主党は執行部がバカ過ぎましたので実施できませんでしたが.
製造業の国内回帰は単純に言えば 金融緩和→円安→国内回帰 というメカニズムです.すなわち、2011年末のデフレ脱却議連の主張の一部、「日本政府の政策次第で円安誘導ができる」がここ2年ぐらいで実証されたとわたしの目には映っています.
ここでハナシは円安誘導の件に変わります.民主党政権時代の2012年2月16日に「経営者が円高に文句を言わないのは何故?」という記事を書きました.$1=¥79ぐらいのどひさんな時期でした. http://hirasaka001.blogspot.jp/2012/02/blog-post_16.html
製造業の経営者だったら、円高がもたらす空洞化は承知しているだろうし、円安ならその逆回し現象が起きるのも当然承知しているはずです.わたしが就職した1987年頃はプラザ合意で円高になって「日本政府は円高を阻止しろ」の大合唱でした.でもなぜか時代が下がるにつれて、「政府は円高を修正しろ」と経営者が言わなくなりました.経団連も言わなくなりました.
なぜ言わなくなったのか?
1) 円高を修正できると思ってなかったので「円高を修正しろ」と言わなかったのか?
2) 国内工場を閉鎖する口実として円高不況が好都合だから「円高を修正しろ」と言わなかったのか?
3) 派遣労働者に切り替える口実として円高不況が好都合だから「円高を修正しろ」と言わなかったのか?
4) USA赴任経験が企業の昇進ルートになり、USAでリストラ自由な経営風土に触れ、その成功体験を日本に持ちこむのが流行だからか?
5) 企業経営は為替に依存してはならず、弱通貨国に製造拠点をスパスパ切り替える渡り鳥経営がworld wideの競争に打ち勝つ必要条件だからか?
どれも少しづつアタリなのではなかろうか???
1については、不勉強だと文句をいいたい.
2と3については、あざといと文句をいいたい.
4と5については、国家より上位に多国籍企業を置くんじゃねぇと文句をいいたい.
そして経団連参加企業のセントラルドグマを成すのはとりわけ5じゃないのでしょうか? 一理あるのは認めますが、それでも以下の理由で反論したい.
●社長が株主総会で「円高のせいです」と責任転嫁しづらいなら言わんでもいい
●しかし、「円安にすれば雇用を維持できる」と経団連として主張するのなら出来たはず
●「過度の円高を修正しろ」ぐらい言ったって経団連は損しなかったはず
●交易条件が好転したって経団連にとって損ではなかったはず
●政治家なんてマクロ経済を知らないんだから、経団連が教えてあげればよかったはず
しかし現実には経団連は、超円高について何も政治に働きかけず、結果的に日本の空洞化を黙って見過ごしました.¥80の超円高時代の経団連会長がず~っとこの爺さんじゃ何も判かんなかったのかもしれませんがね.不幸は重なるものです.
そして2015年の今、経団連の元会長であるキャノンの御手洗氏が冒頭の記事で、日本人労働者は有能だ、日本で製造する、と語っています.こちらの記事も同様のインタビューですが、もっと直接的に為替が有利なので日本生産を増やすと語っています.
http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPL3N0KJ35W20140109
しかしこの人がこういう事を語っても有り難みが湧きません.なぜかというと、上述の経緯を知った上で御手洗さんの発言を読むと、その真意は相変わらず、
弱通貨国に製造拠点をスパスパ切り替える渡り鳥経営がworld wideの競争に打ち勝つ必要条件
という経営思想を語っているだけに過ぎないと思われるからです.だとすると、こう言ってるのと同じじゃないでしょうか?
円安誘導を日本政府に働きかけるなんて経団連の仕事じゃありません
経団連は日本人の味方じゃありません、多国籍企業の味方です今は円安で日本生産が有利だから日本に戻っただけ
ゆえに有り難みが湧きません.寒いだけ.
ひとまず以上で書きたい事はおしまいです.信じるか信じないかはアナタ次第です.
====追記====
アベノミクスの始まりの頃、ある人に金融緩和の有効性について説明したら、そんなに効果的ならどうして今までやらなかったの? という質問を受けました.それをサクサク説明出来りゃ苦労はありません.わたしもよくわからないですので想像ですが、一筋縄ではないいろいろな要因が絡んでいるのではと推測します.
●フツーの人のマクロ経済の知識なんて、高校の社会の知識で終わってます.高校の社会でマクロ経済を操作するパラメータとして「公定歩合」について習います.不景気だと公定歩合を下げますが、公定歩合をマイナスにはできないので、ゼロ金利を超える操作は出来ないのだろうと誤解してしまいます.かつてのわたしもそう思っていました.
しかし現実には、お札を刷りまくって通貨価値を下落させればマイナス公定歩合と同様の効果を得られます、というのが上述したデフレ脱却議連のイベントで得た知識でした.な~んだ出来るんじゃねぇか?という初歩的な知識不足に過ぎませんでした.
●ただし、その話を理解できない人もいるようです.間接話法についてこれない頭の悪さとでも言いましょうか? 札をする→通貨価値が下落する→円安になる→製造業が日本に戻る→給料として富が日本人に分配される→失業率が下がる、という「風が吹くと桶屋が儲かる」式の間接話法をピクリとも理解できない人もいるというコトです.そういう人は、失業者がいる→補助金を与える という直接話法なら理解できます.わたしにはその頭の悪さこそが理解できないのですが、民主党の執行部ってそんな人ばっかりだったのではないでしょうか?
ちなみにあたりまえのハナシですが、補助金を配ると税金を浪費しますが、札を刷っても税金を浪費はしません.そういうハナシにもついてこれないみたいです.
●経済学者って人によって主張がバラバラです.金融緩和を嫌いな派も相変わらず存在します.というか金融緩和が好きな経済学者ってもしかしたら少数派なのかもしれない.どういう主張をする人が時の政権の経済ブレーンとして採用されるかで経済政策も左右されるみたい.その点USはいつもマトモな人が経済ブレーンとして採用されるので安心ですが、日本は危なっかしい気がします.
●日本の経済学者の主張がバラバラというか、世界基準とズレた主張の人がたくさんいるのはなぜか? 大学が派閥の互助会と化しておりトンデモ学者が居残りやすい体質だからじゃないか?
●政治家の勉強不足はあったでしょう.安倍総理も金融緩和の効用については知らなかったそうです.第一次安倍内閣が潰れて浪人時代にいろいろと反省・勉強した過程で、誰かに教えてもらって、自分でも調べたら納得したそうです.たぶん自民党の山本幸三あたりに知恵を吹き込まれたんじゃないかと思います.ちなみにみんなが嫌いな竹中平蔵は、金融緩和について判っている人です.
●政治家への教育不足もあるでしょう.経団連がすりゃよかったのに、と思います.大蔵省が教育するのもアリだと思いますが、彼らは増税に不利になるコトはしないでしょう.大蔵省にとっては景気浮揚で税収upしてはならんのです.
●金融緩和(円安)と、金融引き締め(円高)は日銀総裁の世界観次第という説があります.
日銀総裁人事はかつては大蔵省と日銀のたすき掛け人事でしたが、ノーパンしゃぶしゃぶスキャンダルで大蔵出身者が干されて日銀出身者ばかりの時代が長く続きました.日銀出身者は日銀のバランスシートを美しく保ちたがるので金融緩和を嫌う傾向があるという説です.そのせいで日銀出身者が日銀総裁だった時期には日本経済が沈む傾向がある、という説.わたしは陰謀めいたこの説って好きなんですw.
<1980年代後半以降の日銀総裁リスト>
澄田智 大蔵省出身 金融緩和好きでバブル発生でウキャキャ
三重野康 日銀出身 平成の鬼平と呼ばれバブル退治しすぎて不景気に沈む
松下康雄 大蔵省出身 ノーパンしゃぶしゃぶで大顰蹙で何もできす
速水優 日銀出身 円高大好き! (アイドルの早見優じゃないよ)
福井俊彦 日銀出身 強い小泉総理に隷属して金融緩和してたが、小泉退任直前に金融引き締めに転じた、それが正体
白川方明 日銀出身 USから金融緩和しろと言われたら「周辺諸国(中国韓国)に迷惑かけるからしない」と言ったトンデモ世界観な人
黒田東彦 大蔵省出身 金融緩和好き、円安好き
信じるか信じないかはアナタ次第です.
かしこ
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わたしも79円/$時代は$に負けないように¥を刷って、100円/$までは戻すべきと思っていました。また、もう¥も上げ止まりだろうと考え、ドルを購入した途端、ますます円高が進み75円/$程度まで急速に進んだ時のストレスはたまらないものでした。
返信削除今120円/$で良い傾向です。
>>札をする→通貨価値が下落する→円安になる
円高ドル安が進む中、金融緩和の話をしたところ簡単にはいかないどころか、全く効果ないと話していたのを思い出します。
友人の持論は
1.ドルの流通量が多すぎる
2.円を刷っても(当時)景気が悪く、通貨の使い道がない為、日銀に大量保管されるだけ
で効果はほとんどなく、大きな湖に小さな石ころを投げるようなものだ
と言っていました。
実際は金融緩和の効果が出て、ドル円レートも120円/$になり、私も115円/$の時に円に戻すことができて、僅かながらのお小遣いを増やすことができました。ちょっと早すぎたかもしれません。
彼の刷るお金というのが2000円札の事を指していたのかもしれません。
今度、儲かったお小遣いでノーパンしゃぶしゃぶに行って、元大蔵出身の友人に『あの時、金融緩和は効果が無いって言ってたけど、今どんな気持ち?』って聞いてみようかと思います。
そのご友人の論評は良心的な方だと思います.札を刷っても日銀にブタ積みになるだけで、それを銀行が借りて市中に出回るわけがないという金融緩和批判です.
削除速攻でハイパーインフレへまっしぐらだ!というオカルトのような批判に比べたらどんだけマトモか?w
ところが現実に起きたのは、日銀にブタ積みになってる期間が、わたしの記憶ですが半年かそこらで過ぎ去ったんです.これには驚きました.(ソースは失念しましたが)
人々の“予想”が変わることで、株価や資産価格に影響がでるわけですね。藤巻健史氏が、ハイパーインフレ論者の代表格です。決してぶれない論客のようです。(ドル高できっと稼いだのでしょう) 私は個人的に好きな論客は、上念司氏です。
返信削除藤巻氏はいまでも「このままではいつかハイパーインフレが来る」と言ってますね.なんだか~
削除わたしも上念氏は好みです.
写真は米倉弘昌ですね。見るからにタヌキおやじです。
返信削除インタビューのはぐらかし方もタヌキおやじそのものに感じました。
竹中平蔵はパソナだけに政府には関わって欲しくないと思う人物です。
そうですヨネジイです.わたしも竹中は嫌いです.しかし菅直人よりは好きです.
削除管直人ですか。首一枚つながっている人ですね。
削除首一枚と言うと最近の殺人事件で「ほとんど首が切断されている遺体が・・・」という表現で嫁さんが「どこの局も”ほぼ首が切断されて”と報道しているがどういう状況なのだろう」というので「首は切れたけど頸椎が切り落とせなかったという意味じゃない?」と答えました。
それは解剖に詳しくてすごいです
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