昨日の昼頃に書きかけで公開して外出しちゃった、ゴメンなさい.書き直しました.
神戸製鋼がアルミ製品のデータ改ざんをして仕様未達なアルミ素材を長年に渡って大量に出荷していたようですね.MRJにもボーイングにも使われているとか.
ネット検索したけど細かい状況までは不明でした.一端を知れるエピソードとしては「担当者がついついデータを書き換えた。やり出したら続いた」という記事でした.アハハ、ユルくて楽しそうな会社だ.
経営への影響は大きそうに思われますが、でもあえて言うと、東洋ゴムや東芝の不正に比較すると神戸製鋼の罪は軽いように思います.
ここで罪の軽重を決めるファクターは、どれだけ上流からやってたのかで判断するのがふさわしかろうと思います.
ボスキャラ級に最悪なのはやっぱり東芝でしょう.粉飾決算ですから、会社の血液であるマネーを取り扱う役割の「管理屋」がグループ総掛りでやってたはず.管理屋って言うのは上層部直結の職種ですから、東芝の中枢神経系が粉飾詐欺師だったということになります.悪質さのレベルとスケールが巨大すぎて眩しくて目が潰れそうです.東芝には死ねクソ、と申し上げたい.
東洋ゴムの免震ゴムのデータ改ざんはステージボス級です.これもネットを検索しても詳細は不明なのですが、「技術的根拠がないのに認定を取得するため、”データを改ざん”した書類を国交省に提出」と報道されていることから判るように、設計者の罪だと思えます.ニュースでは、工場の担当者が出荷データを改竄したなどと書かれているけれど、それだから工場の担当者が悪いのではなくて、技術的源流である設計段階ですでにアウトだったわけです.工場の担当者は謂わば設計の尻拭いをさせられていたのが実情と思われます.お気の毒に...設計が不正の元凶だっただけに、そりゃダメだな、と申し上げたい.
ここでわたしの体験から述べると、わたしはデータ改ざんを目撃した経験はありません.
しかしながら、、、
生産ラインでの出荷検査は寒い日も暑い日も実施されます.そうやって一年中検査していると、検査項目の中には気温に依存して性能が変化する検査項目が炙りだされてきたりします.つまり、気温が高い夏になると歩留まりが悪化したりするわけです.
そういう時、生産ライン長と品質管理長は次のような会話をします.
品管長: 夏なので歩留まり悪いです
ライン長:検査ラインのエアコンを強くしてよ
これは検査不正でしょうか?
検査指示書には「常温で検査する」などと書かれていて、常温というのは15℃(冬)~30℃(夏)などと幅があるから、エアコンを強くしても不正じゃないです.(これは電機メーカーの場合であって、航空宇宙産業では遥かに厳密なのでしょうが)
ともかく言える事は、すべからく検査だのSPECだのにはこんな風な裁量の余地(穴ともいう)があるものです.
「担当者がついついデータを書き換えた。やり出したら続いた」という神戸製鋼では、エアコンを強くするくらいでは歩留まり改善できなかったのでしょうなぁ、担当者さんお気の毒です.機転の利く品質管理職員がちょちょいのちょいとデータを改竄してスルーさせちゃったようですね.
状況を推察するに、神戸製鋼のアルミ素材の場合はせいぜい歩留まり改善のオーダーだったように感じます.東洋ゴムの免震ゴムは設計がアウトだったのに比較すると罪は軽い.神戸製鋼には、あらやだぐらいで済ましてやっても良いと申し上げたい.
出荷検査と云うとホットな話題が日産です.国交省SPECの有資格者検査を無資格者にやらせてました.でもこれって、より厳しい製品SPECが6シグマで達成されてるでしょうから.国交省SPECなんか儀式検査じゃないのかなぁと思うので、日産には許すと申し上げたい.
-----
三菱自工が繰り返し不正をやらかしていたのは記憶に新しいです.その後も各社でデータ改竄が明るみになっています.そしていつも、経営者のお詫び会見では品質管理体制の建て直しが語られます.
品質管理体制がしっかりしていれば防げたというのは事実ですけど、品質管理体制がしっかりしていなかったのにはそれなりの理由があるように思うんです.
技術系にとって品管は必ずしも人気職種ではないので、A級エンジニアが就く職種とは言い難い.わたしが若い頃、木偶の坊な品質管理長が居たりしましたもの.悪循環パターンはいろいろ考えられます.
品質管理長が、SPECが決まった経緯を知らないため、SPECが一人歩きしている.
品質管理長に、SPEC OUTだからロット丸ごと出荷禁止だ!と云える胆力がない.
品質管理長は、何でもかんでも出荷禁止するのが好きだ.
品質管理長に、特採で出荷するかどうかを決断をする能力がない.
品質管理長が、データ改竄を黙認する.
品質管理長はもちろんこれら全ての逆でなくちゃいけません.でも、この手の↑サラリーマンって職種によらずうようよ居るじゃないですか?
品質管理体制というと、非属人的システムのイメージがありますけど、現実はとても属人的なシステムだとわたしは思っています.検査にもSPECにも穴が在るし、改竄できちゃう余地もある、担当者の能力で左右される砂上の楼閣が品質管理体制だぐらいに考えといた方がいい.
だから設計リーダーは、品質管理に、そんなSPEC負けてくれたっていいじゃないかと議論をふっかけても構わないと思います.また品質管理はそんな設計リーダーに論理的に反論できなくちゃいけません.「決めたSPECは変えられない」となどとオウムのように喋るだけじゃ困るわけです.木偶の坊には品質管理長は勤まりません.
かように属人的な品質管理体制の建て直しは難儀であると思われます.だけど品質管理だけじゃ済まないもんです.
謝罪会見で社長が品質管理体制の建て直し、、、と宣言したから、現場に不正撲滅を徹底させても、それで表面化するのは本当の歩留まりです.歩留まりの悪さがコストとして跳ね返りますから、設計をやり直さなくちゃいけなくなり、設計部隊は新規開発スケジュールを棚上げして現行製品の歩留まり改善業務に忙殺されます.再設計がうまく出来たとしても、顧客への再承認業務が膨大です.航空宇宙産業の品質検証と再承認なんかやり直したら血の小便が出るんじゃね?
だから、謝罪会見で「品質管理体制の建て直し」と判で押したような言葉を聴くたびに、現場を叱るだけじゃ済まないんだけど、この社長自身がどんだけ判ってるのかなぁって思うんです.
-----
「担当者がついついデータを書き換えた。やり出したら続いた」についても言いたい事があります.
これがまさに改竄の現場ってやつですが、USや中国では起こらない、日本特有の不思議な現象ではないかと思うんです.
中国人労働者にとっては、残業代を稼いで仕送りするのが目的です.だから彼らにとっては歩留まり改善なんか眼中にない.むしろ歩留まりの悪さは長時間労働に繋がる好ましい状況ですらある.そういう中国人労働者にはデータを改竄する動機なんか生じるわけがありません.
ところが、日本人労働者は、KAIZEN活動に見られるように、運命共同体の一員として歩留まり改善への責任を感ずる心理状態に置かれます.その中の一人が、自分が黙ってさえいれば歩留まりを改善できると気付いてしまったのが、神戸製鋼における「担当者がついついデータを書き換えた。やり出したら続いた」の端緒だったと思われます.
だとすると、日本人の美徳ゆえのデータ改竄のように思うんです.真面目過ぎるのもどうかと思いまーす.
品質管理は属人的な砂上の楼閣ってことでヨロシク!
#本来は品質管理と品質保証を区別すべきですが、品質管理で統一して書きました
かしこ
理屈をこねるのだけが得意なエンジニアが多いので、こういうspecじゃなきゃだめだって主張し結局自分の首を絞めるのかも。
返信削除中国では何でもありなんでしょうね。 最近こんな提訴がありました。
”秘密を入手したことが原因であるとしか考えられない”ってのが弱いけど。
「日立金属は、医療機器や防犯ラベルなどに使われるアモルファス合金薄帯(AMR)に関する同社の製造技術が、元社員の日本人2人を通じて窃盗されたと主張している。
日立金属は、2012~2015年に中国企業の製造力がまだ低かったにもかかわらず、AMR生産量が急激に拡大したことに気づき、「生産効率を上げたのは、日立金属の商業秘密を入手したことが原因であるとしか考えられない」と指摘した。」
アモルファス、昔のヘリカルスキャンヘッドに使われていました.
削除いまはトランスの積層コアにでも使われているものなんでしょうか?
ところでその2名は、土日であっちに行って技術指導し、酒池肉林のパラダイスになっていたのは火を見るよりも明らかであり、「やっぱ男ってバカ」という某アニメのセリフを述べておきたく思います.
酒池肉林な二人の名前が出てました。はずかすい~。
返信削除http://www.itcblog.com/metglas-and-hitachi-metals-file-new-337-complaint-regarding-certain-amorphous-metal
元HML従業員2名(中村,花井)ですね.酒池肉林
削除東芝がタヒねくそ(笑)なのはもしかして優秀な東芝エンジニアへの焼き餅が混ざってりしますか?(*^^*)
返信削除わたしは通常は「人を憎んで罪を憎まず」ですけど、東芝については「会社を憎んで社員を憎まず」ですね.経営者が主犯で管理屋が共犯.技術屋の仕業じゃぁないでしょうなぁあれは. エイメン
削除久しぶりのコメントです。
返信削除データ改ざんは、大手企業に限らずよくあることでしょうね。
今や、ISOに縛られて厳しい規定をたくさん作って、
厳守しようとしてみなさんヒーヒー言ってますよ。
まあ、私は下請けで仕事していますけど、
今度、さらに厳しい規定を突きつけられています。
なんと、購入した部品全てが偽物でない証明書を提出しろとか....
ほんと、馬鹿馬鹿しくなってきますね。
こんな状態じゃあ、これから改ざんだらけになりますね。
ついこないだも、品質管理者が病気で入院したときも半年も書類に
判子を押してもらえないのでプロジェクトが止まった状態になりましたよ。
あ〜あ馬鹿馬鹿しい。
そのかったるさ、よ~くわかります.
削除どこかの誰かが腹をくくればいいだけなのに、無意味に丁寧すぎです.
そういうのは一種の責任逃れ意識なのだとわたしは思います.
わたしが中国の広東省の工場地帯に行ったとき、バッタ部品でもなんでもアリな彼の地の事情を垣間見ました.それを見て、ISOだのRohsだのと自縄自縛に突き進む日本の製造業は負けるわい、と思いました.
ISOもRhosもEUのエリートが考えた代物でしょう.あいつらの脳はイカレてますからw
日本の製造業は完全に負けていると思います。
削除私のところも最近、自社製品の99%は中国の工場で製造ですよ。
値段も安いし無理も効くし品質も問題ないですよ。
最近に日本製造業は、人もいないせいか仕事は時間がかかります。
値段も高いし無理も効きません。
いまだに、中国は品質が悪いと思い込んでる人も多いですが
井の中の蛙で外のことを全く理解出来ていませんね。
深センに行けば手に入らない物は無いというくらい
なんでもありますよ。
ISOはちゃんと利用すれば良いものかもしれませんが
少なくとも日本では責任のなすり合いツールでしかありませんね。
自分のところはISOに法って作業しているから責任は無い!
と主張するためのツールです。
文書の出来がよければ責任は回避されますからね。
ほんと馬鹿な連中ですよ。
そういう連中が率先して日本の製造をダメにしているですけどね。
ちなみに、某機関では、日本企業には仕事を出さない宣言を
しているらしいですよ。理由は仕事が遅いから。
深センに行かれますか.深センではよくぞここまで日本企業が技術移転したものだと感心しちゃいます.やっちゃった~とげんなりもしますがw
削除日本の製造業はデフレと円高の傷が癒えずに投資にビビッてしまって、集中豪雨的大量生産には応じ難くなってる気がします.ホンハイみたいな無理の利くところじゃないとiPhoneなんか製造できないんじゃないかと.
追い詰められてしまって、エイメン
免震ゴム事件を研究してる人もいました。
返信削除「2.3.1 技術力の不足
不正行為に至った直接の原因は,準不燃性能を満たすイソシアヌレートの開発に失敗したことであった。この技術力不足には,内部対立により社内の技術ノウハウを結集できなかったことが影響していた。
断熱パネル事業への進出に関しては,原液の供給先との関係を悪化させるとしてシステム原液グループが強く反対した経緯があったため,工事グループを中心に対応することに
なった。その結果として,「同じ実験室,同じ作業場を共有する技術陣同士でありながら,
工事部門とシステム原液部門とが互いに相手方の問題に立ち入ることを意識的に避ける言
動・雰囲気」(社内調査委員会(2007), 6頁)が生じ,「(工事グループは,)他のグループからの協力や援助が受けられず孤立して「みようみまねの準不燃材料配合開発」や「設備機械についての知見・ノウハウ」がまったくないままの開発を強いられた」(前同)とされる。」
わたしもそういう場面を見たことがあります、というか、社内対立の最右翼だったわたしでーす.
削除