2016年キネマ旬報ベストテンが発表されました.
「この世界の片隅に」が一位で、「君の名は」がランク外という事態には複雑な重いが去来します.
■キネ旬 日本映画ベスト・テン2016
1位 この世界の片隅に
2位 シン・ゴジラ
3位 淵に立つ
4位 ディストラクション・ベイビーズ
5位 永い言い訳
6位 リップヴァンウィンクルの花嫁
7位 湯を沸かすほどの熱い愛
8位 クリーピー 偽りの隣人
9位 オーバー・フェンス
10位 怒り
「この世界の片隅に」が一位になったのは誠に目出度い.評判はすごく良いけれど、興行収入はたったの10億円でしかないのでこれで弾みがついてもっと上に行けるとよいと思います.
ただし、これで片渕須直監督はもう「BLACK LAGOON」みたいな不良作品を作らなくなっちゃうんだろうなぁという複雑な思いもある.当ブログでBLACK LAGOONについては以前書きました.大好きです、BLACK LAGOON.ひら的には片淵監督には「BLACK LAGOON」みたいなバイオレンス作品をどんどん作って欲しいんだよね.ご本人の作品歴からすると、文芸作品を作りたい人のようですが...
「この世界の片隅に」の片淵監督というネームバリューが確立して、ますます文芸路線へ行ってしまうんでしょうなぁ.惜しい、、、
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もう一点、「君の名は」がランク外というのも随分と映画インテリから嫌われたもんだなと、複雑な思いです.
「君の名は」をランク外に追放したキネ旬の選者達は、あんなのラッセンの絵画だろとバカにしているのだろうと思います.わたしも「君の名は」=ラッセンだと思いますけど、そのラッセンが今じゃ日本映画歴代2位の興行収入ですからね.まだまだ伸びつつある興行収入がどこまで行っちゃうんだろ?と興味津々です.
キネ旬の映画インテリの行動様式は、宮崎駿作品に「文明批判」「環境擁護」テーマを見出すから上位入賞させる、「この世界の片隅に」には反戦テーマが在るから一位にする、「シン・ゴジラ」には311テーマを見出すんでしょう.だけどさぁ、テーマがそんなに大切なんですかね?
(ちなみに.キネ旬の映画インテリが人間を描くことへのこだわりが薄いのはシン・ゴジラが2位にいることで推測がつく)
確かに「君の名は」には、反戦テーマがあるわけでもないし、人間を描いたわけでもないです.だけど、映画の本質ってテーマでも人間でもないでしょう? 「綺麗な絵が動いてる~」っていう「君の名は」のプリミティブな感銘の方が映画にとってより本質的なんじゃないの? しかもその「綺麗な絵が動いてる~」っていうのが世界中の消費豚にウケまくっているわけでしょう.
だからキネ旬の映画インテリ達に「君の名」を2位や3位にしろとまでは言わないが、7位か8位ぐらいには入れても良かったんじゃないかと言いたいわけですよ.
世界中の消費豚にウケまくっている実情をガン無視して「君の名は」をランク外に据え置いたキネ旬の映画インテリ達の視野の狭いセカイ観は、 日本映画ビジネス発展の妨げになると思います.だいたい日本の映画業界なんてそんなに景気のよい業界じゃないでしょう.セカイに売れる作品が出現したら、たとえそれがラッセンであったとしても一定の評価を与える大人の配慮を見せてこそ、キネ旬ランキングの重みが増したのではないでしょうか? だがしかし、冒頭のランキングからはマイナー映画ヲタクの戯言の匂いがします.
シャキッとしろ、マーケットを見ろ、マスかいてんじゃねえょ > キネ旬
追記: キネ旬の選考システムは、映画インテリ達による合議制ではなく、映画インテリ達による投票制なのだそうです.
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「君の名は」の年末年始をはさんだ2週間の興行収入が発表されました.
http://www.kogyotsushin.com/archives/alltime/
君の名はの興行収入の推移はこうなっています.
11/7 180億円 +5
11/14 185億円 +5
11/21 190億円 +5
11/28 195億円 +5
12/5 200億円 +5
12/11 205億円 +5
12/19 209億円 +4
12/26 213億円 +4
01/10 229億円 2週間で+16 ←盛り返してる
01/16 232億円 +3
01/23 236億円 +4
01/30 238億円 +2
02/06 240億円 +2
ずーっと毎週おおよそ5億円ペースで増加していましたが、年末年始では毎週8億円にブーストアップしてますぞ.
↓この勢いだとアナ雪もタイタニックも越えるだろうなぁ、、、、恐ろしい...
かしこ
自分は映画はエンターテイメントだから、面白いものが好きだし、社会的に考えさせるような作品も好きです。
返信削除シルク印刷に関しては『価値が無いもの』と考えていたから、いまだにその印刷物の価値が数十万~数百万で取引されるラッセンやヤマガタヒロなどは素晴らしいと思っています。こういう有名作家の売れない頃の『原画』が出てこないかな~とか、よく思っています。
『君の名は』は完璧すぎて、まるで世の中のヒットしたエンターテイメント映画を全てパソコンに入れて、『世界的大ヒット』と入力してできた様な完璧さでした。特に『秒速5センチメートル』のときの最後、男女二人の偶然の再開に作品としてはあの流れしかないと思いますが、心情的にモヤモヤしたわだかまりがありました。あそこでの再開に、二人が会話したり喜んだりしては、まるで『奴は大事なものを盗んでい行きました、あなたの心です』というセリフで喋り過ぎた銭形警部になってしまいます。
『秒速』でずっとくすぶっていた心情に、今回の『君の名は』でもう一つの回答を綺麗に出してくれたと思っています。
>>「この世界の片隅に」興行収入はたったの10億円
上映劇場が少ないのか、なかなかチケットが買えません。上映1時間前だとすでに売り切れ状態です。まだまだ上映中なので、じわじわと興行収入が上がって、上映館が増えるのを期待したいです。
しかしあまり映画を観ないのか、3位以下の映画を一つも知りませんでした。
このキネマ旬報は『君の名は』が実写で作られていても、同様の評価だったのでしょうか?
誤⇒再開
削除正⇒再会
秒速5センチは『奴は大事なものを盗んでい行きました、あなたの心です』だったのですね、なるほどそれは判りやすいです.
削除キネマ旬報は『君の名は』が実写で作られていても....
削除「たかが商業アニメ」という差別意識はあるんじゃないですかね? 仮に実写で作られ、そして見事にコケたら堂々のランクインだったんじゃないかなぁ.
キネ旬ランキングの2位がシン・ゴジラなのが不思議です.選考理由に一貫性が感じられません.わたしとしては、キネ旬ランキングにシンゴジラが入っていなかったら、「あぁマイナー作品限定ランキングなのね」でスルーしたものですが、シンゴジラが2位ということは、商業映画OK、シミュレーション映画OK、人間描写なしでOK、特撮OK、、、なわけですよね?
削除あれれ? だとしたらどうしてキネ旬の選者は「君の名」をガン無視できたの?と不思議です.