さきほど、劇場版「亜人」:第3章を観ました.渋谷の劇場は4人しか客が居ませんでした.
何のテーマも教訓もない.強いて云えば登場人物に多少の逡巡があるぐらい.取引し、脅し、敵が味方に変わり、味方が敵に変わり、躊躇無く殺しまくる.痛い.そんなクソ野郎共のエスカレーションする戦闘を楽しめばいいんだね、亜人は.
見終わって感傷的になるわけでなく、あ~たくさん殺したってケロリと爽快になれる、まことに消費豚向けの作品です.そういうのってアリだと思うよ.
1~3章まで基本的に白兵戦なんだけど、戦闘参加者は警察→SAT→自衛隊→特殊部隊→米軍 とエスカレーションしてゆきます.それでいて最後まで白兵戦の緊張感と意外性を保てたのは、脚本(原作)が優れているからだと思います.マンガは読んでませんが.
ラストは、佐藤さんの制圧に成功し、亜人保護法が成立し、日本は亜人が安らかに暮らせるようになりました.だがしかし、米軍に捕縛された佐藤さんは輸送機を爆破して脱出した模様.佐藤さんは殺してしまうには惜しいキャラですから、今後も亜人世界を引っ掻き回してくれるよう期待します.
厚生労働省の戸崎さんは対佐藤さんチームの課長にひょっこりと納まってるし.佐藤さんとの戦いはちっとも終わってなくて、亜人エピソード2はすでに始まってしまってますwww
しかし、米軍っていつも悪役で気の毒ですね.シン・ゴジラでは東京に核攻撃しちゃうし、亜人では朝霞駐屯地かと思うんだけどVXガスで数万の住民を殺しちゃうし、そんな奴等に日本は支配されているというのが日本人の共通認識として刷り込まれているんですね.それが嫌ならどうすりゃいいかを考えるのは日本人自身の仕事のはずだ.でも戦後が大好きなんでしょ?
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「亜人」を観終えて、とある古いアニメ作品を思い出したんです.
旅行会社に勤める友人がいて、彼はバス旅行の添乗員をやったりする.老若男女が乗るバスで客の退屈を紛らすためにビデオを流す.当時はまだVHS.
その彼がアニメのVHSを持ってわたしに言うんです.
「これな、バスの中で一般人に見せるとな、誰が見ても面白いんだろうな、眠りもせず、皆が大人しくなって最後まで見るのよ」
その作品は「妖獣都市」.見せてもらったら、確かに面白い.テーマなんか無い.ただただ消費豚的に面白いんです.
ストーリーは、
人間世界と表裏一体の妖獣世界があり、人間・妖獣のパワーバランスで微妙な安定が保たれている.人間世界に来て悪事を働く妖獣を取り締まる妖獣ハンターの活躍....
「東京喰種」のような設定のエログロアニメなのですが、そんな作品が意外にも一般人に好評だというので、わたしにとって「妖獣都市」はちょっとした事件でした.
わたしはそういう作品の存在が嬉しいんです.さして有名ではない、どちらかというとマイナーな作品が意外に面白いじゃんっていうコトが、日本ヲタク文化の層の厚さとビジネスとしての成立性、すなわちヲタク業界が健全であることの証拠ではないかと思うからなんです.
ヲタク要素てんこ盛りで飽きるあまたのアニメや、日本TV放送網がヨイショして大作に祭り上げた宮崎や細田のアニメなんかはだいたい期待値が知れちゃってる.
そういうのじゃなくて、インディーズとまでは云わないが、マーケティングの中心地から少し離れた距離に「妖獣都市」や「亜人」みたいな良作が居てくれるのはアニヲタとしてとても幸福なことではないだろうか?
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最後に、制作会社のポリゴンピクチャーズについて.
「シドニアの騎士」の頃に比較すると、オーソドックスな映画のテクをずいぶん身に着けたようで、映画としてのぎこちなさはほとんど無くなったように思いました.「シドニア」は3Dで作ることにばかり神経が行ってしまっていて、映画の時空間を形成するテクが置き去りになっていました.
佐藤さんの白兵戦は全てモーションキャプチャーで製作されたと思いますが、武術の演技指導などがとても良くできていました.あっぱれ.
映画制作会社としてのポリゴンが次にチャレンジすべきと思うのは、リアリティを超えた向こう側にある美しさの追求ではなかろうか? 判りやすく云えば新海誠みたいな少し嘘の混じった画面です.宮崎駿の画面レイアウトまでは求めませんけどね.亜人を全部観たけど、画面レイアウトや背景画にクールさが印象に残るシーンはありませんでした.それは残念なことです.
人物の歩くモーションが左右にヨタヨタとしているのですが、あれはそういう俳優の動きをモーションキャプチャーしたからなのでしょう.しかし、そういうリアリティは隠蔽するのがベターだと思います.
人物の少し猫背な背骨のラインがリアルすぎではないか? アニメのキャラで美しく見えるのは安彦良和の描くキャラの背骨のS字カーブだと思うんです.ポリゴンはそういうデフォルメを追求したくないのかな? まぁ安彦キャラを真似てもハリウッド向けじゃないわな.会社の立ち位置的に事情はいろいろかもね.
つまるところ、シドニア→亜人と進歩したのは大いに認めるのですが、何かが足りない.足りないものとは、画面から漂ってくるフェティシズムなんです.新海誠なんかフェティシズム全開の画じゃありませんか? ポリゴンが乾いた画像しか作れないとしたら、それは映画制作の域に達しているとは言い難いと思ふ.
ポリゴンのようなアニメ制作テクはこの先増えこそすれ減ることはないでしょうから、ポリゴンの進化に期待し注目していきたいと思います.
かしこ
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亜人は一話から見ていくと少年の成長ものになっているんですけどね。この映画の見所がそこではないのも確かですが。
返信削除その通りで、ポリゴンさんはフェティシズムからは遠い会社さんですね。映像制作会社さんなので作品の傾向は外部の監督に左右されやすいとも言えますが。
君の名はとかは気恥ずかしくて見れない薄汚れた大人である自分には、ぴったりの作品ではあります。
思いやりの心が芽生え.
削除画作りとしては1人称の画面も記憶になかったかな.
TVアニメ続編が始まった模様です.