2019年2月6日水曜日

【にわかAVマニアの試聴】Tripath TA2020-020でスピーカーを鳴らした

昨夜は徹夜で回路を作ってた.もちろんTripath TA2020-020のアンプをだ.

わたしがTripathの高評判を知ったのは比較的最近で、この記事を書いたときだ.
   【にわかAVマニアの希望】謎のデバイスTripath TC2001 TA2020
何か特殊な回路構成によるD級アンプであるらしい.

↓TA2020は、1998年にUSで生産&販売を開始したICだそうだが、その後Tripath社は倒産した.どこかに権利が転売されたようで、なぜか今でも中華通販でKOREA製のTA2020を入手できる.@¥150ぐらいと安価なので買ってみた. (本物かどうかは知らないがUS製も高値でなら入手できる状況)

作ったアンプでさっそく試聴してみたら、第一印象は意外なものだった.
うそだろ、こんな事あるの? これ中で何かやってるだろ? 
詳細はもったいぶって最後の方で述べる.


【回路】
わたしは回路屋なのでまずは回路から入る.最終的にこういった回路になった.定数などの詳細はTA2020のdatasheetと見比べてくれ.(赤はGND接続)
↓実装状況.表面のパーツ配置はあまり上手くまとめられなかった.入力と出力コイルが近かったりしてなんか嫌だわ.放熱器はつけてないが、部屋聴きでパッケージ温度上昇はたったの6℃だった.放熱器は要らないかも.
↓裏面は銅箔テープを貼ったベタGNDである.アナログアンプだと1点アースが作法だったりするが、D級アンプのような半ば高周波回路ではベタGNDが吉かなぁと思う.
↓そして電源は口に出すのもはばかられる12V4AのACアダプタ.そのうちトロイダルトランスにするから今は許して.
↓出力コイル.秋月で100uH3A(左)を買ったんだけど、巻き線が細いのと10uHでよいので、巻きほぐして0.8mmホルマル線を17Tを自分で巻いた(右).LCRメーターの100kHzで12uHぐらいになっている.

【システム構成】
アンプはTA2020自作基板.それに加えてソニーAVアンプSTR-DN840を比較でつかう.STR-DN840はPure Direct modeにする.=音場補正なし

USB DACはAK4490が載った基板で、こちらで書いたもの.
【にわかAVマニアの印象】USB DAC AK4490 を PCオンボードRealtek ALC887と比較

マイクロフォンはこちらで書いたもの.
【にわかAVマニアの録音】フラット特性のコンデンサマイク

sin波発生、キャプチャはPC onboardのインフラを使う.ソフトウエアはこちらで書いたもの.
【ALSA】PCオーディオ、フルビットsin波を出力し、それをキャプチャしてみた

今回の測定では、アンプの差を知りたいので、sub-wooferは使わない.また測定対象はLchのみとする.


【評価結果】
TA2020の第一印象は冒頭で述べたとおり、
うそだろ、こんな事あるの? これ中で何かやってるだろ? 
どういうことか?

TA2020とSTR-DN840を聞き比べてみた.
STR-DN840の音は、いつものようにスピードの速い、パッツンパッツンな音だ.
それでTA2020に切り替えてみて何が変わったかというと、、、
・DN840ほどにはスピードは速くない
・だがしかし、TA2020の音は異様にトルクがある
・sub wooferを使ってないので8cm フルレンジ一発で鳴らしているわけなのだが、TA2020が出す音はなぜか中低域がめちゃ太いのだ.それで「うそだろ?」という感想になったのだった
・ラーメンに喩えると、DN840はさっぱりした塩ラーメン、TA2020はごっつい豚骨ラーメンといったところ
・TA2020の音は情報量が多いのでお得でかつ面白い
・ただしたまには塩ラーメンを食べたいと思うときもあるだろう.常に絶対的に誰にでもTA2020が優れるとは云えないかもしれない.好き嫌いがあるかもしれない

中低域が太いTA2020.聴感でこれほど判るならば周波数特性の測定結果にも現れるはずだ.
↓これがTA2020とSTR-DN840の違いだ.3kHzで両者のレベルが一致するようにプロットしてある.TA2020の3kHz未満での感度の良さが明らかになった.数dBの差がある.これだけ違えば博多豚骨味に聞こえるわな.(中低域が太いのではなくて単なる高域落ちなだけではないかとも思ったのだが、聴感上ではそうではないように感じられる)

ここで回路屋としては、う~ん、、、と考えこんでしまう.
TA2020がどんなテクノロジーなのかは知らないが、class-Tと名付けられた謎の回路のせいでこんな特性差が出るものなのだろうか? PWM変換回路かスッチング回路に何らかの改善があるだろうことは想像できる.しかしそれでこんなになるか???

「内部にこっそりイコライザを入れてるんじゃね?」とfakeめいた疑念を抱いてしまう.第一印象で「中で何かやってるだろ」と疑ったのはそのためだったのだ.

TA2020が発売された頃に、ソニー,AppleをはじめとするメーカーのPC,TVなどに採用されたそうだ.そういった実績からすると、fakeではないのだろう.

面白いICだ.

class-T技術のUS patentはこれらしい.(US5777512A
「Method and apparatus for oversampled, noise-shaping, mixed-signal processing」
こんど読んでみるね.

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TA2020のプリント基板を起こそうと思う.4層基板でしっかりと作ってみたい.近頃はPCB製作費用が激安なので便利でいいわ.

春頃に自宅でカフェを開業する予定なんだ.そしたら「プアオーディオ聴き比べ大会」をやろうと思うので、その時にTripathを聴かせてあげられるかもしれない.

かしこ

7 件のコメント:

  1. カフェに反応~。
    楽しみです。

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    1. あぁそれね~どうなるんだか?

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  2. 2000円札でアナログレコードプレーヤーを買った男2019年2月8日 10:19

    グラフで比較表示していると解りやすくてありがたいです。
    スピーカーの出力をマイクで拾ったデータのようですが、基盤上の出力データの比較は難しいのでしょうか?意外とオーディオ業界ではこのようなデータは載せていなくて、パーツについて『バーブラウン製のxxx』とか『Museのxxx』とかメーカーや品番ばかりのカタログ解説ばかりで素人にはさっぱりデス。

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    1. IC内部は観察できませんけど、スピーカー出力端子なら観察できます.
      AVアンプの音場測定に使われるピロピロ音はどんな波形なのかを調べるため、スピーカ端子を直接観察する予定です.近日にやろうと思います.

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    2. ICというと、BBやJRCのハイパーインフレな有名製品がありますね.
      ああいうので音は変わると思います.まぁ値段に比例するかは謎ですけど.
      IC内部のレイアウトに起因する過渡応答特性の差異はカタログSPECには表現しきれていないので、まったり音、キラキラ音、などの違いが出るのはさもありなん.
      ただ、過渡応答や非線形応答を定量化する業界標準的手法があるのかというとわたしはそうゆうのを知りません.

      M系列をつかって非線形応答を測定する手法があるんですが、20Hz~20kHzの広帯域に適用出来るものかどうか、未体験ゾーンにつき不明です.
      どっちかっつーとスピーカーの非線形性を観測してみたいですが.

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  3. いつもの通りすがりの人2019年2月9日 10:20

    おお、とうとう入手されましたか。

    自分も一時オーディオ回路の開発に携わっていたことがありまして、
    色々なアンプの音を聞いていた時期がありましたが、
    この「TA2020-020」の音は、ハッキリ言って
    「今までに聞いたことのない」音でした。

    ※現在は、手許に「貧弱な環境」しかないので、
    (ちょっと前のPCオーディオに毛が生えた程度)
    あんまり深いところまではわからなかったのですが、確かに、
    ・発熱が異常に少ない(放熱板のグリスを塗り忘れても壊れなさそう)
    ・小口径のスピーカでも、なぜか低音が出る
    (しかし、単純にラウドネスがかかっている奴ともちょっと違う)
    ・元のアンプでは「平べったい音(定位がよくない。音が塊で聞こえる)」
    状態だったのが、同じスピーカなのに、何故か
    「ボーカルが中央、その他が両方から聞こえる」ようになった

    DSPとかも、ちょっとやってたことがあるので思ったのですが、
    恐らくは、単なる「デジタルアンプ」ではなくて、内部でかなり複雑な
    「信号処理」をかけているような気がします(そこが特許なのかも)
    ※ボーカルが中央に定位しているので、そのへんの音を判定して何かやってるのかも。
    よく最近のPCオーディオでも、エフェクトに「カラオケモード」がありますが、
    まぁ、それの逆みたいなことをやってるような気もする。
    あと「貧弱なPCスピーカ」でも「それなり」に聞こえるような処理
    をかけてる気がする。但し、それも万能ではなく、曲によっては、
    「変な音(エフェクトかけすぎ)」に聞こえる時もありますが。

    いずれにしても、こんなICが20年近く前に既にあったなんて驚異的です。
    (私は、知りませんでした。もうそのころにはオーディオをやって無かったし)

    今の技術で作り直せば、もっと凄いモノができそうです
    (もう既にオリジナルの会社は、無くなってしまいましたが・・・)

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    1. おっしゃるとおりですねぇ、しみじみ.

      TA2020の音を聴くのは楽しくて、なんでしょうねこれ?

      発熱の少なさはわたしも「異常」と思っています.なんでしょこれ?

      オーディオイベントに行くと、部屋全体が音響空間になっているブースと、スピーカーが点で鳴っているだけのブースがありますが、TA2020の音は前者に近い気がします.なんでですかこれ?

      コンポーネントを変えると音が変わるにせよ、スピーカー:アンプ=10:1ぐらいの寄与度じゃね?って思っていたのですが、TA2020はアンプの寄与度が3はあるなと思っています.なんでだろ?

      生プリント基板を発注したので何台か作ります.

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