2019年12月7日土曜日

【回路】電撃トランジスタ講座(小信号アンプ設計)(7) 高周波特性

前回で交流電圧増幅回路のここまで辿り着いた.

今回は、周波数特性について考えてみたい.1ランク難しくなるので覚悟が必要.

周波数特性には低周波側と高周波側の2つある.(位相特性はここでは無視、ゲインのみ考察する)

低周波側はC1でDCカットされることによる低域遮断である.対策はC1を大きい容量に変えれば直せるので、簡単なので考察を割愛する.

大抵問題になるのは高周波側だ.
100MHzまでスカッと伸ばしたいのだけれど60MHzぐらいからダラ落ちしていてなんだかなーっていう悩みにどう対処するのか?それを解説したい.

高周波特性を伸ばしたいのなら、着眼点はとりあえず3つだ.
1)出力容量の小さなトランジスタを選ぶこと
1’)利得帯域幅積の大きなトランジスタを選ぶこと
2)増幅度をそんなに大きくしないこと(3倍ぐらいにしとけ)
3)コレクタ抵抗を小さくしとけ(数100Ωぐらいまで)

わたしが業務で50MHzぐらいのアンプを設計するときによく使ってたのが2SC4083(ROHM)だった.
出力容量   0.8pFtyp          (typはtypicalの略)
利得帯域幅積    3.2GHztyp
2SC4083を使った増幅度10倍の回路の周波数特性をsimってみた.
ゲインは10倍すなわち20dBである.そこから-3dB落ちた周波数がアンプの帯域と考えると220MHzまでフラットなアンプが出来上がった.


次に周波数特性を改善するためにコレクタ抵抗を330Ωに小さくしてみた.
ゲインは約10dBに減退するが、-3dB帯域は750MHzに伸びた.
利得帯域幅積が3.2GHzもあったとしても、実際のアンプとして組んだ場合の帯域幅は1GHzにも満たないのである.そのことを知っておきましょう.

さらに追い討ちをかける.実際のプリント基板でこんなおめでたい高周波特性は出ないのでそのつもりでいてもらいたい.

その理由は次回明かされる.....

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2SC4083はなかなか優秀なトランジスタなのでなかなか優秀な性能を得たが、もっとフツーな2SC2411(ROHM)でやってみよう.
出力容量   6.5pFtyp
fT    250MHztyp      増幅度が1になってしまう周波数
帯域120MHzとずいぶん落ちた.

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高周波特性を伸ばしたいときの着眼点に納得していただけただろうか?
1)出力容量の小さなトランジスタを選ぶこと
1’)利得帯域幅積の大きなトランジスタを選ぶこと
2)増幅度をそんなに大きくしないこと(3倍ぐらいにしとけ)
3)コレクタ抵抗を小さくしとけ(数100Ωぐらいまで)

100MHzを越える増幅をしたければ具体的には、、、
1)出力容量1pFぐらいのトランジスタを選定する.利得帯域幅積やfTはGHz級のトランジスタを選定する
2)10倍増幅はオーディオ帯域なら無問題だけど、100MHzを超えるなら1段あたり3倍ぐらいにしといたらどうかな?
3)コレクタ抵抗1kΩよりも330Ωの方が高周波が伸びた.オーディオ帯域なら10kΩでも無問題だけど、100MHzを超えるならあまり高い抵抗値にしない

あと、コレクタ電流は1mAよりも10mA流した方が高周波が伸びる.


上で「実際のプリント基板でこんなおめでたい高周波特性は出ない」と書いた.
次回はその理由について.

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