2018年2月26日月曜日

アニメ「さよならの朝に約束の花をかざろう」 ネタバレ(お値段以上でびっくらこいた)

別に観る必要もないだろうと思う作品は冒頭からネタバレ全開で書きますけど、脚本家 岡田麿里 の初監督作品 「さよならの朝に約束の花をかざろう」は貴方も観てよいのではないかと思いましたので、まずはいつもの警告からいきましょう.

ネタバレなので読んではいけません

ネタバレ注意
ネタバレ注意

脚本家が初監督をやりましたーという作品ですから、映像はスタッフの力量として、やはり脚本がどれだけマトモなのかが本作の評価ポイントかと思います.

事前の予想としては、あまり期待はしてなかったんです.
・初監督作品でどんだけマトモな作品が作れるんだかねー.
・ファンタジー、出会いと別れ、こういう題材って苦手なんだよなぁ.
・拾った子供が成長して別れるstoryだから、5年後→10年後→20年後 と場面が切り替わる作品っていつも酷い目に遭ってばかりいるんだ.

などというnegative予想満載で劇場へ重い足を運んだわたしでした.

だがしかし、予想外なことに、岡田麿里の脚本が破綻せずに持ったのよ.ファンタジーと出会いと別れが原則的に嫌いなこのオレをして退屈させなかったんだから本作の脚本は大したもんだと思う.

なので、ファンタジーと出会いと別れに人並みに抵抗感のない貴方であれば少なくともわたしよりも肯定的な感想を持つのではないかと思うのです.観ても損はないかもしれませんよ.

はっきり言おう、わたしにとって、
「君の名は」よりも本作の方が2.64倍良かった
ただし、10歳代や20歳代向けではない気がします.ジジイやババアじゃないと感銘を受けないかもしれない.


【あらすじ】
時代設定をreal historyに当てはめると、1800年代前半ぐらいのヨーロッパ.産業革命後、絶対王政はまだ残っているが、富国強兵のため一応は国民国家風な統治がされている時代.(本作の設定は架空です)

数百年の寿命を持つイオルフ族が居る.イオルフはさしずめイスカンダルのような滅びの思想を持っている.機織を一族の生業とし、非武装中立を旨とする.人間からは崇拝の対象にされている.
イオルフの織物には、イオルフなら読める点字のような機能があり、歴史の記録やメッセージ手段として使われる事もある.

ある日、イオルフは人間に襲撃され、人間の王の妃としてイオルフの王女レイリアが誘拐され、イオルフの居住地は破壊される.(0年目
逃げ延びたイオルフの娘、マキア(主人公)は、徘徊している最中に人間の乳児を拾う.村の家に保護され、機織で生計を立てる.イオルフの織物は珍品として高値がつくのだ.ゆえにイオルフの娘の存在も自然と知れ渡る.

6年目、イオルフの残党がレイリア奪還テロを仕掛け失敗する.マキアは6歳になった拾い子(エリアル)と一緒に姿を隠さざるを得なくなる.

15年目、放浪生活を続けるマキアと思春期のエリアル.長命種のマキアは年をとらない.必死に自分を育てるマキアに感謝しつつ、マキアを守れない自分のふがいなさに悩むエリアル.
鉱山街の食堂で働くマキアはとある兵士と再開する.兵士は村の家の長男のラングだった.エリアルはラングのつてで兵士になり、マキアの元を去る.
エリアルと別れたマキアは、イオルフの長老が語っていた「外の人間と接触すると孤独になる」という戒めを思い出し、嘆く.
マキアは敵国に誘拐される.

25年目、エリアルは村の幼馴染と再会し結婚、妻は臨月.
イオルフ族のレイリアの保護を名目とする戦争が勃発.一方の陣営にはレイリア(女王)+ラング(兵長)+エリアル(兵士)がいる.もう一方の陣営にはマキアがいる.戦場で再開するマキアとエリアル.
戦場を彷徨うマキアの耳に女性の呻き声が聞こえ、エリアルを拾った時を思い出す.声は破水したエリアルの妻だった.マキアには女性が誰なのかわからないが、女性はマキアを知っている.マキアの助けで女性は出産する.
城は落ち、負傷したエリアルの傍らにマキアが居る.礼と詫びを述べるエリアル.マキアは去る.エリアルは「行かないでお母さん」と叫ぶ.
敵が侵入した城の最上部にレイリアが居る.レイリアは塔から身投げする.ドラゴンに乗ったマキアはレイリアを受け止め、滅び行く種族達は何処へか去ってゆく.
近衛兵長は言う「これからはレイリアにもドラゴンにも頼らない世界になるんだ」.

80年目、変わらぬ姿のマキアは村の家を訪ねる.
死ぬ間際のエリアルがベッドに横たわっていた.妻は先立っていた.花を摘んでいたのはエリアルの孫.

ending

再建したイオルフの居住地で暮らすイオルフ族とドラゴンのカットが挿入される.

fin.

-------
長命種ゆえの苦悩というとヒラサカ的には「月姫」が好きでたまらないところです.アルクェイドは「愛するあなたに殺してもらえてよかった」と思って死を得ます.
犬は人間の7倍の速度で死ぬ.それと同じように、エリアルはマキアの10倍の速度で死にました.時の離隔に抗えずマキアは取り残されます.いくら長生きでも、マキアはエリアルの母にも彼女にも後見人にもなれはしなかった.マキアはエリアルを必死で育てた、ただそれだけ.諸行無常でいい.

エリアルが殺し合いしているその裏で妻とマキアが出産中という人の営みの儚さが諸行無常でいい.しかもこのシーンがちっともクサくないのよ.

「これからはレイリアにもドラゴンにも頼らない世界になるんだ」というのはまことに好きなセリフであって、妖精や魔物が淘汰されてゆく様を描いた「もののけ姫」のカタストロフ的退場の仕方よりも本作の方がずっと良いと思う.上質な諸行無常さに感銘を受けました.

最後に岡田麿里さんについて.
初監督ということで、本人の全てをさらけ出しました.
几帳面な人ですな岡田麿里さんは.interview記事とか読んでると割とアバウトな人のように感じていたのですが、本作では80年後のエリアルに再会し、あまつさえ平和に暮らすイオルフ達のカットまでラストで挿入してました.自分が広げた風呂敷の隅を合わせて丁寧に畳むかのような几帳面さを発揮してました.
あとは観客の皆さんでお考えください、でいいんじゃねと思いたがるヒラサカとしては、「これからはレイリアにもドラゴンにも頼らない世界になるんだ」のセリフでガンッとfin.にしても良かったとすら思うんですが...

ともあれ、岡田麿里さんを見直しました.イイ仕事をした.

二度目を観に行くかもしれません.

かしこ

2 件のコメント:

  1. 記事タイトルが好意的だったので先日劇場に行き、いまネタバレ記事を読みました。
    よい作品でした。わたしももう一度見につもりです。
    そのままだとスルーしていたかも知れません。平坂さんに感謝です。

    返信削除
    返信
    1. 岡田さんは男を上げたので次々と仕事が舞い込みますように。興行収入どうですかねー?

      削除