ソニー・パナ・シャープのコンスーマ電機メーカーが赤字だという書き出して始まる、井上久男の「ある視点」 は読むだにムカツキました.
「家電版「覇者の驕り」――名門家電メーカーは垂直統合モデルから脱却できるか」
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1203/23/news016.html
要旨はこうです.
●ソニーはストリンガーの物作り軽視が悪い
●パナとシャープはTVへの過大投資が悪い
●パナは三洋の償却が重いし、三洋の一部をハイアールに売ったのは誤り
●韓国勢との価格勝負に負けた
●垂直統合にこだわるな、水平分業の時代だ
●TVのような売り切りビジネスはダメなのだ
●3社とも内部昇格で新社長にバトンタッチしたが、大改革は内部昇格では難しい
●カルロスゴーン(日産)とか京セラ稲森(JAL)のような外部招聘の必要があった
●カルロスゴーンの構造改革を見習え
あらかじめ朝日新聞社の記事作成テンプレートがあって、テンプレに当てはめただけでAIに自動生成させたんじゃねえかっていうような紋切り型の論旨です.そして
この記事は、人を騙す手口の一つである、間違いではないが小さな原因をさも全ての元凶であるかのごとく吹聴するテクニックで書かれています.
エコノミストの浜矩子ってしってますかね? 「ユニクロ型経営がデフレ不況を招く」と主張している人です.エコノミストの中ではまだマトモな方ではありますけど、物足りない人です.それは、ユニクロが中国で大量生産した衣類を日本で売るからデフレ不況になるのだ、だからユニクロはけしからんと言うんですが、べつにユニクロはレインボーマンの死ね死ね団じゃないですよ.現下の交易条件(円高)からすると、ユニクロみたく行動するのがお得だからそうしているのであって、ユニクロがやらなきゃ別の誰かが同じ事をやるだけです.だから、エコノミストならば、交易条件を改善するにはどうするべきかを語らなくちゃいけないのに、
安物輸入業が悪だとしか言わない.まったくエコノミストっていうのはお気楽な商売だねと思います.自分の部下がこんな戯れ言をいってたら「そんで解決策はどうすんじゃぁ」とドヤしつけますね、わたしは.
それで冒頭の記事を書いた井上久男はというと、輸入産業のユニクロではなくて、輸出産業の電機メーカーについて書いてるわけですけど、韓国勢との価格競争で負けて投資回収できなかったから、サッサと投資の落とし前をつけるためにカルロスゴーンを呼べとおっしゃる.
韓国勢との価格競争で負けた理由については見事にスルーしています.これじゃぁちっとも分析になってないです.
韓国と日本の為替レートって、2008年後半からすごい円高に振れていて、下図で2008年初と2012年の比はおよそ1.7ですぜ.TV事業が韓国との一騎打ちであるのは論を待たないです.その韓国との為替が1.7倍不利になっている.その客観事実をスルーして、投資した日本メーカーの敗北であり、しがらみのないコストカットが内部昇格社長にはできないという結論に結びつけようとするのは、よほどのバカか、構造改革推進論の誘導記事を書きたいかのどっちかだとしか思えません.
ちなみに、ソニーは為替が1円変化すると70億円収益が変動するそうですから、もしも現在の為替レート¥80が1.7倍の¥136だったら、¥4000億円の収益になって投資なんか軽くペイします.
為替というはるかに巨大な現象をスルーしてゴーン革命なんか礼賛してる井上久男よ、能ナシはオマエだろ.
しかも、
経済記者をやってるくせにわかってないのは、カルロスゴーンを招聘する直前の日産と、現在のソニーパナシャープを同列に論じていることです.これは全然ありえない.恣意的な記事に胸くそが悪くなってきます.経済記者のクセにもっと考えろよ.
カルロスゴーンが日産に来た1999年3月は1ドル=¥120でして交易条件は問題なし.日本の自動車業界は地盤沈下しておらず、社内の派閥争いで日産だけが自滅していたにすぎない環境でした.そこで、しがらみを捨てた改革をしたら復活するに決まっているじゃありませんか?
現在のソニーパナシャープが円高で投資回収できなくて死にかかっているのは、外部要因ですから、カルロスゴーンが社内政治力学を一喝しても治せない重症です.ゴーンを呼んだら円高が治るわけがないでしょ?
ところで、
カルロスゴーンを呼べとおっしゃる井上久男に教えてあげたいのは、カルロスゴーンはかつてソニーの社外取締役だったんですよ.TVの巨額の赤字で弱っているソニーを見て、手に負えないので、このままでは履歴に傷がついちゃうぜって気づいて逃げたんだと思いますが、いかが???
正しい善悪認識はどこにあるか?
ソニーもパナもシャープもおおむね悪くないんです.悪いのはほとんどが円高なんです.若者が就職できないのは、若者が悪いからじゃないです.景気が悪いからです.だから、ソニーもパナもシャープも若者も”社会の犠牲者”なんです.
円高を放置し、交易条件が悪化するがままにして、景気を悪化させ、就職難な社会を作っても平気な悪は、日銀と民主党主流派なんです.そこをスルーして、さらに企業努力を訴えている井上久男はジャーナリストの風上にも置けない奴、翼賛メディアの翼賛記者ってことですよ.
そんでな、こういう奴に限って、バブル時代に極楽で就職とか転職した奴なんじゃねぇの?と思って経歴をググッたら、まさにその通りで笑っちゃいました.
1964年生.九州大卒.大手電機メーカーを経て92年に朝日新聞社入社.
これはわたしと同い年.現役ならば1987年に新卒ですね.九大なら就職はよりどりみどりだったでしょう.しかもその後の転職市場もリクルートの人材バンクで第2新卒ともてはやされて活況だったころですね.
よかったじゃん、就職も転職もできて立派な経歴でさ、井上久男さんよ.だが、こんなアホ記事しか書けないんだったらそりゃオマエの実力なんかじゃないよ.
読者の皆さん、
団塊の世代~1969年生まれぐらいで、好景気に乗れたために経歴が立派で、その地位でするエグゼクティブごっこが大好きで、その地位を保持するために所属組織の意向に沿ったポジショントークをしているインチキ論者に騙されないよう、リテラシを磨きましょう.
追記 2018.11.23:
懐かしいこの記事が久しぶりにPV top10に顔を出しました.なんでまたと考えるに、カルロスゴーンが逮捕されたので何処かの検索サイトが上位に表示しているのでしょう.
井上久男には「救世主カルロスゴーン様を逮捕するなんて狂気の沙汰だ!」と声を荒げて笑いものになってほしいな.毒を喰らわば皿までって言うじゃんかよw
これを書いた当時に「為替でたいへんだー」と言ってた浜矩子について上で触れていますが、アベノミクスで為替が¥110に戻っても浜矩子は「$1=¥50で日本破滅」とばかり言ってる紫色の妖怪になってしまいました.同志社大学はなんであんな人を雇い続けているのだろう?
6年も経つと、堕ちる人とか堕とされる人とかいろいろですね.あははー
かしこ