2012年3月15日木曜日

職業訓練 住宅リフォームシリーズ 026 配管工事3

配管工事の続きです.
  3)排水管の実技課題    ←今回はこれ
  4)銅管の加工方法
  5)銅管の実技課題
  6)さや管ヘッダシステム
  7)模擬家屋の配管
  8)水洗トイレと洗面台の取りつけ

給水管の場合は、接着不良で漏水したりすると賠償問題になって大変ですけど、排水管は水圧がかからないので漏水の心配はしなくてよいと思います.けれども、排水は重力で水を流さなくちゃいけないので、場所が狭くて勾配を作れないなんていう施工の悩みを抱える場面は多いと思います.それに対して給水は水圧がかかっているのでどんな無茶な配管でも水が流れますから、給水管の漏水というレアケースをさておくならば、目先の工事の大変さは、給水工事が楽、排水工事が大変だというのがわたしの印象です.

ところで、地下室の飲食店では排水はどうしているのでしょうか? それはポンプで揚水するんです. 排水をポンプアップするのですから多少の異物混入(髪の毛とか汚物)があっても大丈夫なポンプを使います.さらに、信頼性確保のためにポンプをダブルで設備し、交互運転するそうです.下水槽の水位が上昇するとポンプが自動的にオンして排水する仕組みです.

ラーメン屋のような、油を大量に排水する店舗では、排水経路に油を濾しとって排水管に油を流さないようにする設備が必須なのだそうです.この油濾しとり設備を備えてないラーメン屋が原因で、ビルのそのフロア全体の排水管が油でつまって流れなくなってしまい、修理と損害賠償で数100万円も負担する羽目になったという事例があったそうです.ひさんですね.

このように排水っていうのは、各所多様な装備でもってやりくりしなくちゃいけない、意外と奥深いもののように思います

さて、実技授業では、下記の構造を各自が作りました.左端にある縦管はマンションの最上階~1階まで貫いている排水管のつもりです.その縦管に向かって、自室のお風呂とかトイレから1/50勾配で水を流すという場面を想定しています.ここで使ったビニールパイプは内径50mmとか40mmを使っていますけど、現実には縦管は75mmあるいはもっと太い管を使うと思います.また、トイレはウンチを流しても詰まらないように75mmを使うと思います.キッチンの排水は50mmでもよいと思います.
できあがりはこのようになります.各自の作品をズラーッと並べて漏水試験中です.
●作業手順を説明します.まず、下地の板に図面を描きます.丸数字は描く順番です.直角とか45度を描くには、コンパスを使って作図します.誤差が蓄積して①と⑤の交点の寸法が狙い通りにならなくて思わずfuck!とか言ってしまったりします.
●以下、組立手順の説明ですが、給水よりも3倍大変です
①② → 50Cを接着し、トータル84mmで切断.50Cとは50mm径のフタのことです.
③ → それを50LTと接着すると高さ150mmになるはず.50LTとは50mm径の分岐のことです.排水ですから下図のような水の流れをスムースにする分岐形状になっています.
④ → 下地に描いた図面の上に物体を置いて、金具で仮固定して、1/50のレベラーで仮勾配を決めます.レベラーは1/50を上面にし、.水の流れる向きに矢印を向けて置きます.レベラーとは下の写真の工具でして、原理は水平器と同じく気泡を中央に持って来させるように使います.ただし、気泡を納めた部分が斜めに取り付いているので、自然と1/50の勾配を作れるようになるという原理です.この工具には感動しました
⑤ → 仮勾配を決めた金具をジグとして利用して50LTとパイプを接着します.
●次に、管を所望の長さで切断します.所望の長さって何かというと、下地に描いた図面です.下地に描いた図面をどうやって上空にある管に投射するのでしょうか? それには下げ振りという錘を使います.
⑥ → 下振りで床の墨を拾います.墨というのは業界用語で寸法線のことです.
⑦ → 墨を一周させるため紙を巻いてグルッと一周墨つけする.このテクニックはとても便利です.
⑧ → 墨に沿って切断します.
●次に、水平分岐を組み立てます.
⑨ → ABCを未接着で差し込んで三方を金具で仮固定し1/50の仮勾配を決めます.Aに角度マーカーを書き入れておき、接着するときに角度マーカーを根拠に接着します.さもないと、Cの勾配がデタラメになってしまいますから.
⑩ → ABCの順に接着する.Aは角度マーカーに注意して接着する
●次に、末端部へと進んでゆきます.
⑪⑫ → 下げ振りで墨つけ.切断する
⑬ → エルボを接着しておく.エルボとは直角曲がりのことです.
⑭ → 3箇所を垂直出ししつつ接着する
●ようやく作業は終盤になりました.
⑮ → 上面の切断面を墨つけします.この墨は指金を使い床基準でなるべく八方から描きます.注意点は、管に垂直に墨付けするのではありません.なぜなら、勾配をつけてあるので管が傾いているからです.
⑯ → 切断面が水平になることを願いつつ3箇所を切断します.

これでできあがりです.排水管は大変ですねー.

⑯で切断面の水平が出ていない場合は、この後にやる漏水チェックでバレます.ヤカンで切断面ギリギリまで水を入れますと、3箇所のいずれかが最初に決壊したりします.理想は、3箇所の全ての水面が表面張力で盛り上がる姿ですが、なかなかそう上手には施工できないもんで.

ちなみに、排水管の水圧試験はやりませんでした.

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