2019年3月12日火曜日

ヤマカン破産について、「カメ止め」と絡めて考えてしまう

ハルヒの演出をやった山本寛が破産する見通しというニュースがyahooにも載った.

経緯は判然としないが、ヤマカンはウルトラスーパーピクチャーズというプロダクションに1億円の借金があり、ウルトラスーパーピクチャーズが一括で返せとヤマカンに迫ったが返済能力が無いので破産へ、という流れらしい.
監督が制作会社から制作費用を借金するものかねぇ?と不思議に思うが、制作費用について何らかの貸借関係があったことは間違いないようだ.

ウルトラスーパーピクチャーズっていう会社をわたしは知らなかった.TRIGGER、サンジゲン、ライデンフィルム、それからWUGを作ったOrdetを傘下に持つのだそうだ.アニメ業界において燦然と輝くような名作を遺したとは言い難いが、知っている作品は傘下スタジオから多く出ている.
「ブブキ・ブランキ」「蒼き鋼のアルペジオ」「009 RE:CYBORG」「ブラック★ロックシューター」「アルスラーン戦記」「テラフォーマーズリベンジ」「シュヴァルツェスマーケン」「リトルウィッチアカデミア」「キルラキル」
そしてヤマカンを破産させたのは「Wake Up, Girls!」だろう.もしかしたらその前の「フラクタル」から引き摺る遺恨なのかもしれないが....

WUGの制作会社とヤマカンの険悪な関係についてわたしが知るところでは、ある日、WUGからヤマカンが追放されたのだった.WUGが大ヒットとまでは云えないのと、ヤマカンの「舌禍」があまりにも酷いので、路線変更がてらクビにされたのかなと想像している.(根拠はないよ想像だよ)
追放された後のヤマカンはWUGを批判するコメントを流していて、ウルトラスーパーピクチャーズが報復したんじゃないかねぇ、憶測だけど.

まさか批判相手から借金してたとは、、、ヤマカンは無鉄砲だったかもしれない.

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「ハルヒ」「らきすた」「かんなぎ」は良いとして、その後のヤマカンの作品はどれもパッとしない.潜在能力には長けた演出家だと思うのでひら的には復活を期待してはいるのだが.

ただ、ヤマカンの「舌禍」の部分は何をやりたいのかさっぱり不明だ.

彼としては、例えば自身の作品「フラクタル」「私の優しくない先輩」がコケてしまい、他のくだらない作品がウケている状況に不満があるようだ.また、例えばフラクタル爆死などとSNSで批判されるのが気に食わないようだ.
そういった批判に対して、ヤマカン以外の監督・演出家は批判されるがままにしている.(表向きには)反論の存在を知らないというスタンスだ.いくら知らんぷりしていても、次回作のオファーが来ないという形でペナルティを受ける.

だがヤマカンだけは、SNS上の批判に立ち向かうんだよね.「私の優しくない先輩」の時も歯向かっていたもんなぁ.

でも、それは多勢に無勢で勝ち目はないんだよ.

勝ち目の無い闘いの出口戦略として、ヤマカンは「視聴者の選別」というこれまた徒労としか思えぬ活動を始めたらしいのだ.(2017年11月の記事なのですでに挫折したのかもしれぬが)
山本寛インタビュー【前編】「クリエイターやファンを舐めた結果アニメが衰退した」
山本寛インタビュー【後編】「オタクに群れる強さを教えてしまった責任をとる」
これらinterviewから要点を抜き出すと、
1)アニメはクリエイターや監督のものである.出資者やユーザーのものではない
2)クリエイターや監督が大人の事情とやらですぐにクビにされるのは困る
3)「どの監督のどんな作品を見たい」という民意が業界の流れを変えていくのが的確
4)バカなヲタクも邪魔な存在である.アニメを私的なアイデンティティにし、“イキがる”ために利用する者には退場してもらう
5)アニメにとってプラスになる人とマイナスになる人を峻別しないといけない
6)各自が「面白い/つまらない」を作品ごとに議論する

少しも同意できない.
1)(監督任命権という意味で)アニメは出資者のものだ
2)権威も権利も持たない者は交換可能なパーツだからクビにされる
3)クラウドファンディングが主流になるとは思えない
4)バカなヲタクでも金を落としてくれるお客様ならそれでいいじゃん
5)視聴者の選別は作品を通じて行われるべきである(マーケ狭めるリスク)
6)オレはそれをやってるけど

2については、かつてのヤマカンに「権威」は備わっていたのだ.だからこそ実写映画を撮らせてもらえた.だけどその映画が不評&赤字で、次のオファーが来ない地獄にはまってしまった.
ヤマカンはそれ以来低落傾向にある.しかしその責は全てヤマカン自身にあるんだ.視聴者のせいではない.「視聴者の選別」なんかもってのほかの危険思想であって、ヤマカンに出来ることはただ一つ「ヒット作を産む」ことだけだ.いや、ヒット作でなくて良作でもオレはいい.ヤマカンが良作を作るのを心待ちにしている.

宮崎駿は「カリオストロの城」が好評だが赤字で仕事のオファーが来ない地獄にはまってしまった.しかし鈴木Pと出資者徳間を頼みにして、失敗だけはしないよう我欲を殺して「ナウシカ」を作った.それから私物スタジオを作って多くの作品を遺した.そういうアニメ業界の成功物語をヤマカンだって知らぬわけが無い.それなのにどうして「視聴者の選別」などと戯言を言ってられるのだろうか?

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ヤマカンの問題意識にある「作品は出資者のものじゃない」という足掻き、青いな.京都大学にはまだ左翼学生が多く残っているらしいが、ヤマカンのこういう青さからは左翼の洗礼を受けた者の匂いがする.何でも階級闘争に持ち込もうとする態度だ.

ヤマカンのそういう陰気な態度とは真逆な作品として、今日観た「カメラを止めるな」をわたしは思い起こすのだ.

カメ止めも、出資者・企画者達のお気楽暴君ぶりを批判的に描いてはいる.しかし出資者達を批判する事はカメ止めの主題ではない.現場の奮闘でも覆い隠せない綻びが出資者にギリギリ察知されずに済んだぜぇ! 出資者をまんまと騙せたぜぇ! というのがカメ止めの爽快感なのだ.出資者はうるさいに決まっている、しかし騙せればよい、それがカメ止めにおける健全な大人の態度だ.

でもそれはカメ止めのセカイだけじゃない.クリエイターでも監督でも俳優でも技術者でも、大人の事情に抵触しない範囲で我欲を突っ込む隙を窺う.それが現実だ.わたしだってモロ趣味的な回路を突っ込んだりしたものだ.(ハヤブサ1号のイオンエンジンを復旧できたのは設計者が余計なダイオードをこっそり仕込んでおいたおかげだったそうだ)

ヤマカンの件に戻ると、「ハルヒ」「らきすた」の頃のヤマカンは、大人の事情に抵触しない範囲で我欲を突っ込むぐらいに自制できていたように思う.ところが京都アニメーションから追放されて以後は、ルサンチマンモードに入っちまった.あげく、視聴者の選別などと八つ当たりを言い出す.

意識の方向がトチ狂ってますぜ、ヤマカンさん.

今般の破産も、その延長にあると云っては言いすぎだろうか?

エイメン

11 件のコメント:

  1. その会社さんは喧嘩をふっかけていい相手ではないかもしれませんね。

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    1. 次回作を出せたら観るつもりです

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    2. 借金というより、会社と喧嘩して怒らせて債務のっけられちゃったんですかね。だとしたらコワいですー。

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    3. 監督業も安穏としてられない商売ですなぁ、ふふふ

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    4. WUGと同じ会社でフラクタルを作って、ヤマカンさんはフラクタルにとても強くコミットしてたらしいんです.これがヒットしなかったら監督業を辞めると言ってた.その時に自由にやらせてくれ金は借金して自分で出すからとかなんとかで作った借金かなと思ったりして...
      フラクタル観たけど悲しくなるほどつまらなかったんだよなぁ.

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    5. そうなんですねー。ご本人のチャレンジの結果ならしょうがないですね。従業員ではなく役員なので責任とらされますね。
      普通の貸付けにある「期限の利益」がなくて、即日一括の返済とか、ちょっとこわい。債権の回収目的ではなくて完全に個人を潰しにきてますねー。

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    6. フラクタルの件は全くの憶測です.
      けもフレの騒動ではたつき監督自らが語ったりしたので事情がわかってきたけど、これはどうなりますかなー.

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    7. この会社の役員さん達はすごくいい人達ばかりなのでここまでなるのは、よっぽど何かあったのかなーと。
      この債務というのは明示的な借り入れではなくて、この人が会社に対して与えた損失を会社側が債務として乗っけたのかもしれませんね。
      役員の場合10年前まで遡って請求されます。コワい。

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    8. つ、ついにインサイダー情報がもたらされるのかっ!(笑)

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    9. どうやらmurasaki殿の予想が当ってるみたいです.エイメン

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