2015年9月3日木曜日

耐震診断について知ったかぶりしてみました

最近多い地方巡業は耐震診断の仕事で日本中をうろついているわけなのですが、ある人から、耐震診断ってどうやってやるんですか?と質問されましたので今日は耐震診断についてわたしが知っていることを書きます.

# いただいたブドウ、とても美味しいです!    >   Y殿

3.11の震災後に古い建物の耐震補強が促進され、耐震診断→補強設計→耐震補強 のお仕事が一段と増えたようです.
国交省に耐震診断しろ!と云われて真っ先に診断したのは、役所、病院、学校などの大規模公共施設でした.こういった公共物件の耐震診断の仕事はあらかたやりつくしてしまい、今では、耐震診断の多くは民間の百貨店とかテナントビルに需要が移っているようです.
電車から見える風景でこのように斜めの補強材が入ったビルがちらほらと目に入りますが、こういうのは後付けの耐震補強です.持ち主さんには不意の出費で大変だったろうとお察し致します.

#戸建て住宅の耐震診断は、受けた経験はありますけど、仕事でやった経験はありません.

一口に耐震診断をやると云っても、持ち主の意向は様々だったりします.
・耐震補強工事をしたくない持ち主
・耐震補強の必要があるなら素直にやる気の持ち主
・耐震補強工事するくらいならサラ地にして、もっと容積率の大きなビルを建てたい持ち主
・容積率の大きなビルを建てたいので、耐震性がダメですという結果を期待している持ち主
・行政からの補助金を受ける気満々な持ち主

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ビルなどの耐震診断はどのような原理で行われるのか?

わたしも以前は質問主の方と同じく、揺らして壊れるかどうかで診断するんじゃね?と思っていたのですが、かな~り違います.

Q1: 建物の各所に揺れセンサを取り付けて、実際に加震して揺れ量で診断するのでは?
A1: そうではありません.

Q2: CADで仮組した建物を、CAD上で加震して壊れるかどうかで診断するのでは?
Q3: そうではありません.

ではどういう原理なのかというと、
CAD上で建物を仮組するのは確かにそうなんですが、「加震」に類する行為はしないようです.

確かに、加震して壊れるかどうかで耐震性のチェックはできるでしょう.
でもそれですと、補強設計の役にはあまり立ちません.
なぜかというと補強設計が次のようなループ作業になってしまいますから.
   加震→最も弱い箇所が破損→破損箇所を補強
→加震→2番目に弱い箇所が破損→破損箇所を補強
        :
→加震→N番目に弱い箇所が破損→破損箇所を補強
        :
→加震→破損せず→補強作業終了

このループ作業は果てしなくてあまりやりたくありません.どこかを補強すると、補強前とは異なる場所に応力集中して余計に脆弱になったりするかもしれませんし...

たとえば鉄骨造の建物をCAD上で仮組する場合にインプットするパラメーターは、簡単にいうとこんな数値です.
 ・全ての柱の位置と太さ
 ・全ての梁の位置と太さ
 ・全ての補強材の位置と太さ
 ・各パーツの接合構造     (右図のような構造のこと)

それで、それらのパラメータを元に、耐震チェックするソフトがあるんです.耐震チェックソフトは、建物の強靭さをIsという数値で表してくれます.加震してOKかNGかではないんです.

Isって何なのかは専門じゃないのでわたしは知りませんが、wikiによるとこんな指標だそうです.
 Is < 0.3             倒壊する危険性が高い
 0.3 ≦ Is < 0.6    崩壊する危険性がある
 Is ≧ 0.6             崩壊する危険性が低い
つまり、Isが0.6以上あればその建物は大丈夫!

このIsですが、たとえば2階建ての建物ですと、XY方向で2種類、かつ1階2階で合計4種類の数値が出てきます.するとこんな数値が出てきたりします.
 2階 X方向     0.65
 2階 Y方向     0.67
 1階 X方向     0.33    よわ~
 1階 Y方向     0.09    激よわ~
いやはや、こういう建物は巨大地震が来たときに、ドーンとこうなるわけですね. (汗)
1階が弱いのであれば、1階に重点的に補強して、全てのIsが0.6を超えるように補強設計します.補強工事をするかどうかは、持ち主の気持ちとお金次第です.

この仕事をするようになって、古い建物の1階はな~んか不吉に感ずるわたしです.どひ~

かしこ


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