2015年10月24日土曜日

東芝半導体大幅縮小???

東芝の粉飾決算問題は、のらりくらりで手仕舞いみたいですね.ホリエモンよりも悪質だとも謂われますが、ホリエモンは牢屋に入ったのに東芝の粉飾3人衆にはそんな待遇はないようで、どんだけ不公平なんだよって思うのはわたしだけではあるまい.

その東芝が「半導体事業大幅縮小」だそうで、元電機業界に属していたひら的には恐れていた事態の到来かっ?とビビッたのがこちらのニュース.
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151024-00050000-yom-bus_all

でも記事を読むと全然大幅縮小じゃなくて、イメージセンサー事業を(たぶんソニーに)売却するという小規模縮小でしたからほぼ嘘記事だったので安心しました.

わたしは1987年に社会人デビューした者でして、80年代の破竹の勢いの日本電子産業を横目で見つつ、趣味の回路製作をしつつ、大学では勉強せずに麻雀を打ちつつ、中高大という人格形成期を過ごした高度成長のラストラン世代なわけです.同じ世代を過ごした人々にとって、80年代の日の丸半導体産業が現在のような落ちこぼれ状態になるとは想像つかなかったのではないでしょうか? (あの大日電様がぁ~~)

日の丸半導体の劣勢とは、日立NEC三菱が独り立ちできなくなってルネサスに統合され、唯一独り立ちしているのが東芝だけっていう現状を指します.プレイヤーの多さは業界の楽しさを表すバロメータだと思います.寡占化されると業界人としても消費者としてもなにかと面白みが減退するものです. (かつてのサーバ業界に居たDEC,Compaq,Sunはどこへいってしまったのでしょうね、、、)

感覚的にですが、プロセスが90nmだった2005年ごろは例えばMPEGのcodecをLSIに載せるにしてもLSIの集積度が物足りないという気分でした.たしかPS3のCellも第一世代は90nmでしたか.プロセスロードマップに従って設備投資してシステムLSIを生産して投資回収して、、、という穏健なループで半導体メーカーが生存できたのは90nmが最期だったのではないか? わたしは半導体業界を外側から眺めていただけですが感覚的にそんな風に感じています.

その後、リーマンショックの頃(2008年)、プロセスが65nmぐらいの時期になると、これまた感覚的にですが、集積度が高まりすぎたためにもはやシステムLSIとしてダブついているなぁというのがわたしの印象でした.つまり、90nm世代まではLSIが小規模すぎたために売り手市場だったが、65nm世代にもなるとなんでもかんでもシステムLSIに集積できてしまうので買い手市場に転化してしまったみたいだ、という既視感です.既視感とはたとえば、一本¥3500ぐらいしたVHSテープが3本パックで¥980に値下がりするあの場面です.

なんでもかんでも集積できてしまうシステムLSIという時代になると、半導体メーカー選定理由が「所望のIPを持っているか」どうかで左右されがちになります.45nmプロセスで設計したいのだけれど、A社はADCのIPを持たないのでADCはそのLSIに集積できない、一方のB社なら所望のADC IPを持っている.となると価格交渉以前にA社は候補から脱落してしまいます.
システムLSIに関してはですが、設備投資→投資回収という従来通りの経営に加えて、どれだけたくさんのIPラインナップを揃えるかが半導体のダブつき状態を克服する必須条件に昇格したのだなというのがリーマンショック前後にわたしが感じていたことでした.日の丸半導体メーカーはIPが貧弱でどうにも採用しづらかった.

半導体産業は多様なセクターに棲み分けていて、システムLSIが全てではありません.他にはCPU、メモリ、イメージセンサー、高周波帯用、固定客向け、、、などがあろうかと思います.それに加え、IP専業とプロセス専業という業態も出現しました.ですがいずれも日の丸半導体の地位はパッとしない.
・CPUは日米半導体協定で抑えつけられた故事もあるがIntelに喰らいつくのは困難
・メモリ市場はSAMSUNGが牽引
・イメージセンサーや高周波は市場規模が大きくはない
・IP専業はLSI logic社のようにファブレス化したところもある (2014にアバゴに身売り)
・プロセス専業は、今iPhone6sで話題のTSMCが有名
・弱者連合のルネサスは、固定客向けと高周波あたりにfocusしてもはやメジャープレイヤーを狙うポジションにはいないようだ

そんな中で東芝だけは、メモリとシステムLSIとプロセスで世界に伍して闘ってゆくポジションをキープしていると思われ、日の丸半導体最後のメジャープレイヤーとして一縷の望みを託しつつ、外野から生暖かく観戦しているところであります.

がっしかしその東芝が今般の粉飾決算です.何らかの投資の圧縮は必然でしょう.なかでも投資額の大きい半導体が圧縮対象になるのは想像に難くありません.海の向こうではSAMSUNGも業績が悪化しているのでSAMSUNGも同期して投資圧縮するでしょうが、うかうかしてる間にメジャープレイヤーから脱落するような事のなきようお願いしたい.
半導体産業ってもうダメだぁと経営判断するとすぐに身売りとか工場閉鎖として表面化するので判り易いですから、冒頭の「大幅縮小」ニュースにはかな~りドキッとしましたよw

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長年ストレージをやっていた者としては、光DISKもHDDも将来は暗く、将来性に信頼の置けるストレージは半導体しかありません.ストレージの未来はたぶんこれしかないです.
これがどんな速度で値下がりするのか?っていう至極単純なハナシでしかない.
そのストレージ用メモリが、SAMSUNG一社に握られるような事態にはなって欲しくありません.東芝にはストレージ用メモリのメジャープレイヤーであり続けてほしいです.

かしこ


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2 件のコメント:

  1. sonyのイメージセンサーは今後どうなると思いますか?

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    1. 数少ない積極投資部門であり、また事実儲かってもいますので、安心感強しかと思います

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