2018年3月15日木曜日

中目黒で井戸を掘れるか? (23)工具まとめ編

今回は、掘り工具について書こうと思います.いろいろな試行錯誤がありましたので、まとめ的な意味で掘り工具はどうあるべきかを遺しておきたいのでーす.

掘り工具と云っても金属製の立派な物もあるし、掘り方もいろいろです.ここでわたしが試行錯誤しているのは、塩ビ管でシコシコと掘るという脆弱な方法です.金属製のセミプロ的な掘り工具について知りたい方は別の情報源にあたるのがよいでしょう.

井戸掘りの全体像としては、VU75の塩ビパイプを地面に打ち込んで外壁と成し、その先端部を掘ります.少し掘ってはVU75を打ち込むの繰り返しです.


【掘るという行為】
「掘る」というと削岩機でグガガガッとやるイメージですが、ここでやる井戸掘りではグガガッとはやらないで、土砂を引き揚げるのが主な作業になります.土砂の引き揚げにはVU50の塩ビ管(弁付き)を使います.

地下の土砂の素性によって可能・不可能が分かれます.
 ・粘土質
 ・砂+小石      (5cm程度まで)
 ・巨大な石が行く手を阻むケース
 ・岩盤
塩ビ管で対応可能なのは、粘土、砂、小石 までだと思います.現状のわたしの井戸掘りでは幸運なことに巨大な石は出てきていませんので、塩ビ管で進行中です.

もしも巨大な石に阻まれたら、その石を砕かなくてはなりません.石を砕くには、たがねのような金属工具と、たがねを打ち込む運動エネルギーが必要になりますから、塩ビ管を使った掘り工具では対処困難かと思います.

岩盤にブチあたってしまったらさらに困ります.現場は幅1mぐらいの狭隘な土地ですので、櫓を組むなんてできませんからgive upするしかないかな...

なので、粘土、砂、小石をどうやって上手く引き揚げるかが塩ビ管でやる井戸掘りのポイントになろうかと思います.


【土砂引き揚げの原理】
VU75に水を投入し、掘削部をドロドロの土砂にしておきます.弁付きVU50を上下に振って、土砂を捕獲し、地上に引き揚げます.

弁の素材は何であるべきか?
弁の開口はなるべく大きいのが好ましい.
塩ビの強度の問題.
などのノウハウがあるので、以下ではそれを解説します.

土質が粘土の場合は、わたしの経験からすると弁付き工具は不要でした.VU50を粘土に打ち込むだけでOKでした.これについても後述します.


【歴代の掘り工具】
↓現場に残っていた掘り工具の勢揃い写真がこれ.
↓先端部に特徴があります.壊れて捨てちゃった3号と4号の写真を追加します.
いろんなのを作ったものです.
各々の特徴は、
 ね:  ねんどくん             粘土を掘るのに適した工具
 1.5:ドロドロくん1.5号   粘土+砂+小石の混合物に適した工具
 3:  ドロドロくん3号    破砕効果狙いのブレード→破損でNG
 4:  ドロドロくん4号    小石採取効率向上のため弁を剥き出し→破損でNG
 5:  ドロドロくん5号    弁の脱落に強くしたが、開口が小さくてダメ
 6:  ドロドロくん6号    開口を大きくした
 7:  ドロドロくん7号    短くしたため、上溢れの問題あり

上記を順番に説明します.失敗事例を紹介しましょう.

とその前に、作ったけど使わなかった工具を2つ.
岩盤にぶつかったのではないかと悩んでいた時期がありまして、岩盤を叩く工具として作りました.結局のところ岩盤ではなかったので、これらが活躍する場面はありませんでした.
←たがねくん
←剣山くん


【ねんどくん】
現場の地下4mまでは粘土でした.粘土層にこの工具を打ち込んで引き揚げますと、粘土をどっちゃりと採取できました.この頃の井戸掘りは楽勝だったなぁ...

ねんどくんには弁は付いていません.粘土は自ずと目詰まりしてそのまま揚がって来るため弁は不要です.
パイプに幅10mmぐらいのスリットを入れてあるのは、粘土を掻き出すのに便利だからです.

トラブル:先端が割れましたので、DS50継手を接着して補強しました

やがて地下4mの手前で粘土に小石が混じるようになり、4mより下が小石ばかりになると、もう「ねんどくん」では土砂を引き揚げる事ができなくなりました.

ドロドロくんが求められる、、、


【ドロドロくん設計要件】
どのような点に留意するべきかを整理してみます.

全体:
・VU75継手の内径(約78mm)よりも太くできない
・着脱可能であること

排出口:
・強度を低下させないこと、割れたりしないこと
・上下動させても小石が排出口から上溢れしないこと
・捕獲した小石を速やかに排出できる程度の大きさ

側面穴:
・水は通すが、小石は通さないこと

弁:
・弁の強度が充分であること (捕獲した土砂が落ちたりしない)
・開口径が大きいこと  (大きな石でも捕獲できるように)
・弁はなるべく先端に近いこと

先端部の形状:
・岩盤を突き崩すに適した突起がほしい

以上を念頭に置きつつ、個々のドロドロくんについて解説してゆきます.


【ドロドロくん1.5号】
ドロドロくんの基本構造は、下に弁があり、上に排出口があります.
付随的構造として、側面に水が抜ける穴を多数開けるのがネット情報の通説なのですが、側面穴は目詰まりするのであまり効かないと思います.側面にテーピングしてあるのは、側面穴を塞ぐ試行のためです.

試作第1号ですので反省点は多々ありますが、全然ダメだったのは弁の強度でした.
↓弁押さえはこのように3方向からネジを打った構造でした.これだと弱くて弁が外抜けしてしいました.
↓ちくしょーと思ってネジを強くしたのがこれです.でもこれだと開口径が小さくなってしまい、採取可能な小石が小径になってしまいます.
だめだこんなのーと撤退しました.短い命のドロドロくん1号でした.

ちなみにこの時点での弁の材質は2mm厚のゴムシートでした.
後にゴムシートは3mm厚であるべきだと考えを改めます.
http://www.haikanbuhin.com/top/detail/asp/detail.asp?gcode=413680


【ドロドロくん3号】
1.5号の反省から3号を作りました.

まず弱かった弁の補強のため、CDを流用した弁押さえリングを追加し、弁の外抜けを防ぐことに成功しました.しかしこれですと開口直径が40mmぐらいになってしまいました.

それと、金属製の突起を追加しました.この当時、岩盤にぶち当たったのではないかと想像していたため、岩盤を破壊したかったからです.

トラブル: 金属突起をつけるためDS50を切り欠いたのが災いして、地下で破損し、金属部品は永久に地下に置き去りになってしまいました.

トラブル: 排出口の強度不足で割れてしまいました.

↓3号以降では、上部をVP20のネジにして、着脱可能にしました.以後同様です.


【ドロドロくん4号】
3号の反省から4号を作りました.この頃には、岩盤じゃないかもと気付き始めていました.地下に転がっている小石を捕獲できればよいという考えに改めつつありました.

改善点
・3号で破損した突起を全廃し、平らにした
・弁を前面配置にして小石捕獲能力を改善

4号の小石捕獲能力はGOODでした.

トラブル: 写真に見えるとおり、CDを流用して作った弁押さえリングが破損しました


【ドロドロくん5号】
4号の反省から弁押さえリングの強度を増した5号を作りました.

結果はダメでした.先端が平べったいのが災いし、地下を突き固めてばかりいる状態になってしまったのでしょう、小石捕獲能力は激悪でした.

改善のため金属プレートを追加してみたものの、金属プレートの強度が足りず撤退!


【ドロドロくん6号 】
5号は全然ダメだったので、4号の改善版を作りました.ほぼ満足しています.

改善点
・弁押さえリング=DS50継手の内周の凸にし、開口直径は50mmになりました
・弁を前面に配置
トラブル: 弁が前面過ぎなため磨耗して、弁押さえが効かなくなりつつあります.

↓弁押さえリングが薄いので弁が外抜けしやすい.弁そのものを強化するため、材料を2mm厚→3mm厚に変えました.
←3mmと2mmの比較
↓構造はこの写真から想像してください.

↓排出口の構造も変えました.パイプに排出口を設ける(5号)と割れます.6号では継手に穴を開けました.以後同様.


【ドロドロくん7号 】
6号の丈を短縮した7号を作ってみました.ドロドロくんを引き揚げると、内部は泥水で満ちているので、引き揚げるのが重くてかったるい.そこでなるべく丈を短くしたい.それが理由です.

しかしトレードオフも生じます.
ドロドロくんを水の溜まった地下で上下動させることで小石を捕獲するのですから、上下動の度に弁から水が入り、排出口から水が吐出されます.このとき、水は吐出されても小石が吐出されると困ってしまいます.なぜなら、ドロドロくんの肩に小石が挟まってスタックしてしまうから.

↓7号を使ってみてわかりました.7号は短すぎて小石が吐出される場面がたまにあります.VU50の長さは50cmが良さそうです.(7号は30cm)

↓改善点がもう一つあります.6号では弁が前面過ぎたので、7号では10~15mmほど弁を奥にしました.写真比較で判るとおり、7号の弁押さえには傷がほとんど見られず良好です.


というわけで、最終的には6号と7号の良いとこ取りした仕様が良さそうです.

長かったドロドロくん試作はようやく終わろうとしているのです.


金属弁は有効か?
強度的には金属弁は申し分ないと思われます.
しかし、円筒内にリジッド弁ですから全開にはならず、開口面積の低下というデメリットもあります.開口面積の低下は捕獲できる小石のサイズの小型化を招きます.それは嬉しくない.
ひら的には、3mmのゴムシートが妥協的でよろしいかと思います.ゴムなら円筒内で変形して全開しますから.
実を云うと、作業ルーチン的にもゴムシートにはメリットがあります.地上へ引き揚げたドロドロくんから泥水+小石を排出するときに、ドロドロくんを逆さにして排出はしていません.ゴム弁を指でまさぐってゴム弁を外抜けさせて排出させているんです.そういう点でもゴムシートが妥協的でよさそうです.

側面の水排出穴は有効か?
VU75を打ち込めた深さ=掘れた深さです.
VU75の打ち込みを妨げるのはおおよそ5mm以上の小石だと思います.
ゆえに、ドロドロくんで引き揚げたいのは5mm以上の小石であると設定できます.
したがって、ドロドロくんの側面に5mmの穴を多数開けるのが仕様となります.
しかし、地下の土砂は「水+小石」ばかりとは限りません.多くの場合「泥水+砂+小石」なんです.すると側面穴は粘土や砂ですぐに目詰まりしてしまい、小石だけを選り分けるふるいの役にはあまり立ちません.
よって、側面の水排出穴はどーでもいいというのがわたしの考えです.
将来、湧水が見られた時点で、側面穴を再考するかもしれませんが.


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ここまでは、掘り工具の先端部について書きましたが、掘り工具には長いポールがあります.VP20を使っています.

ポールについてのノウハウです.

【泥水で滑る】
ポールを上下動させるとき、ポールを引き揚げる時、泥水でぬるぬると滑ってfuckだなぁと思ってしまいます.そこで滑り防止のため、1m毎にTSS20の継手を配置するのがよいと思います.抜けたりしないよう接着は入念にどうぞどうぞ.

【折れる構造】
ポールの約3m毎に接合箇所を設けて、折れるようにしています.

↓最初はこのような塩ビパーツで接合構造を作ったのですが、強度不足で割れました.この写真は割れた状態です.
↓接合構造はこうしました.金属プレートは2mm厚が必須です.1mm厚だと曲がってしまいます.ボルト径は6mmにしました.

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【VU75を叩くには】
VU75を玄翁で叩きます.2.7kgの玄翁を使っています.

VU75を直接叩くわけにはいきませんから板を載せて叩きますと、かなりの反発があり、板がすっ飛びます.

そこで、板が飛ばないように①のようなT字構造にしました.ところがこれを何回も叩いていると、縦棒が脱落して②大変困りました.
対策のため③の構造にしました.
↓現物はこれです.

参考になりますように.

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かしこ

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