2020年1月9日木曜日

【回路】電撃トランジスタ講座(小信号アンプ設計) (14) エミッタフォロア

今回は当連載第10回の続きである.

第11回~第13回では入出力インピーダンスについて書いた.つまんない話題だったと思う.

今回のエミッタフォロアを会得すれば、インピーダンスについて考えるのを止めてしまっても実害ない.インピーなんか無視しても目先の設計はできてしまうのだ.まことに第11~13回は無駄であったことだよ.

第10回の復習をさらりとする.
↓1段目の増幅度は10倍である.Rc/Re=1kΩ/100Ω=10倍だからだ.
↓ところが、2段目をくっつけた途端に1段目の増幅度は6倍ぐらいに低下してしまう.2段目の入力インピーダンスが足をひっぱるからだ.
第10回の復習はこれでおしまい.

第11回は、出力インピーを数Ωにまで改善する回路のご紹介である.
↓このようにブルー囲いのトランジスタを追加すると、出力インピーが劇的に下がる.この回路だと出力インピーは2.8Ωぐらいになっているはずだ.ブルー囲いのトランジスタ回路をエミッタフォロアと呼ぶ.
↓エミッタフォロアを含む1段目を踏襲して2段アンプを構成したのがこの回路だ.1段目がしっかりと10倍増幅し、2段目も10倍増幅だからtotal 100倍増幅になってくれる.ありがたい.

以上でエミッタフォロアのおいしい話はおしまい.

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次にエミッタフォロアの入出力インピーダンスについて解説する.
↓まず、エミッタフォロアのエミッタ電流を計算すると9.3mAとなる.どうしてそうなるかは過去の連載を振り返ってくれ.
エミッタフォロアの出力インピーダンスは、エミッタ電流で決まる.
  Ie=1mAのとき、出力インピー  26Ω
  Ie=10mAのとき、出力インピー  2.6Ω
という関係がある.電流をたくさん流すと低インピーになる.
Ie=9.3mAのときの出力インピーは、2.6Ωx10/9.3=2.8Ω と計算される.

エミッタフォロアのおかげで1段目の出力インピーが2.8Ωになった.一方で2段目の入力インピーは1.5kΩぐらいなもんだから、ほとんどロス無しで1段目と2段目の結合が完成する.これがエミッタフォロアの利点だ.

エミッタは低インピーなのだと判ったが、ベースはどんなインピーなのだろう?
もしもベース入力インピーが低かったら元の木阿弥的にダメになってしまうではないか?
だが安心して欲しい.この回路のベース入力インピーはすごく高い.100kΩぐらいあるんだ.それなら無問題だろ?
どういう計算でそうなるのか?
  ベース入力インピー = 100x(2.8+1000) ≒ 100x1000 = 100kΩ

↓その心はこうだ.ベースから見える2.8Ωと1kΩの直列にhfeを掛けたものだ.ただし2.8Ωはゴミみたく小さいので無視して構わない.結果として1kΩのhfe倍がエミッタフォロアのベース入力インピーダンスっていうことになる.ゆえに100kΩだ.(説明に2.6と2.8が混ざってしまっているけど許せっ)
エミッタフォロアの話はこれでおしまい.

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プリント基板にエミッタフォロアを実装するとき、パターンのレイアウトは下記のどちらがよいだろうか?  もちろん結線としては同じようなものであるが、エミッタフォロアの出力を①長く取るか②短く取るかの違いである.
答えは、GOODなのは1だ.
↓理由の説明には②がどうして悪いのかを示せばわかりやすい.
②の長い配線のインピーダンスは1kΩである.パターンには浮遊容量が付く.1cmあたり数pFぐらいだ.仮にパターンが4cmで浮遊容量がtotal 10pFだと仮定すると、1kΩと10pFがカットオフ周波数15MHzぐらいのLPFを形成してしまう.それは悲しい.
①の回路にも同様の10pF浮遊容量があるではないか? →yes
けれど、①ではエミッタフォロアの出力インピーがたったの2.8Ωなので長い配線引き回しでも周波数特性がほとんど劣化せずに済むのである.2.8Ωと10pFが形成するLPFはGHzオーダーだから通常は無問題である.


回路図から結線を読み取るだけでなく、配線のインピーダンスも読み取るべきである.アートワークはただ結線すれば良いのではなく、インピーダンスをも反映させるべきである.

かしこ

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