以前のにわかAVマニア連載で真空管アンプっぽく出力トランスを使ったA級アンプという投稿をした.
これを作るためには300VぐらいのB電源が必要になる.300VクラスのSW電源は需要が少ないためお値段がとてもお高いので自作しちゃおうと思う.
CRTの高圧発生回路でフライバックという言葉があった.(懐かしい、何もかもみな懐かしい)
それと同じくフライバック型のSWレギュレータだ.誤解を恐れずに言えば、AC100VをDC300Vに昇圧するので1:3トランスを使うってなハナシ.
これのkey partsはなんといってもトランスなのだが、わたしはSWレギュレータのトランスを巻き巻きした経験はないのでお勉強してたの.
ひら的に便利かなと思った文献はこの2つ.
1)ROHMの設計資料 (メアドなど登録が必要)
細かいところまで実践的に解説されていてよかよか.
https://pages.rohm.co.jp/Tech_download02.html
2)電源専門家のページ →こちら
理論面に立ち返りたいときによかよか.
http://www.ms1.mctv.ne.jp/sifoen.project/PARTS/Parts-Doc/3%20Core.pdf
これを書いた人って、ITmediaやEDNで渋い記事を書いてる人だと知った.
https://ednjapan.com/edn/articles/2001/29/news011.html
これら文献から、トランスの巻き数、巻き線比を決定する根拠を抜き出して以下に記すのだが、なんつうか目から鱗なんだなこれが.
-----
トランス設計フローは人によって様々だそうだが、以下はひら的なやり方でたぶんアコギなので信用してはなりません.(SWregプロの方々ごめんなさい)
1)フルパワー条件を設定する
考え方:コアを飽和させないように設計したいのだからフルパワー出力時のことを重点的に考える
標準AC電圧 Vac=100V →整流後Vin=141V
最低AC電圧 Vacmin=90V →整流後Vinmin=127V
Vout=300V
Iomax=0.2A
1次側エネルギ注入duty D1max=0.4 (小パワー時は0.2とかに下がる)
2次側エネルギ放出duty D2max=0.6 (=1-0.4)
PWM周波数 Fsw=100kHz (ROHM BM1P101FJの使用を想定)
2)二次側ピーク電流Ispkを計算する
考え方:IomaxにマッチするようIspkを計算する
2次側電流を図示するとわかりやすい.
Iomax=0.2Aと決めたので、この図の比例関係からIspkを計算すりゃいいってこと.
0.6は、2次側がエネルギ放出し切るまでに0.6Tかかると言ってる.
便宜上エナジー放出をノコギリ波→矩形波(赤線)に変換するのは簡単で、Ispkが0.3T持続すると図示すればいい.
Iomaxはその平均値なのだから、0.2A = Ispk * 0.3 → Ispk=0.67A
3) 二次側インダクタンスを計算する
考え方:「0.6TかけてIspkからゼロまで電流が変化するときの起電圧が300V」である
V = L * ΔI / ΔT これは起電圧の基本式.
すでにL以外は全部判っている.
V=Vout=300V
ΔI=Ispk=0.67A
ΔT=0.6T=0.6 * (1/100kHz)=6uS
こいつらをブッコめば、Ls = 2.687mH = 2.7mH
4) 巻き線比 Np:Ns を決める
考え方:D1max=0.4、Vinmin=127V、Vout=300V この3パラメータから決まる
duty50%でSWしているときの入出力電圧は巻き線比だけで決まるから、
Vout = Vinmin * (Ns/Np)
なのだが最大duty=0.4と制限したのだから修正する必要がある.
Vout = Ton/Toff * Vinmin * (Ns/Np)
ここで Ton=0.4T、Toff=0.6T であるから、
300V = 0.4/0.6 * 127V *(Ns/Np) →Ns/Np=3.54
ゆえに Np:Ns = 1 : 3.54
5) コアを決める
以前フリーエネルギー研究のために買ったEE28コア(中華製)が余っていたので流用する.
パラメータはこんなの.
Material=PC40、A=28、B=10.5、C=10.55、D=7.2、E=19.6、F=6.5、C1=0.61、Ae=82.5、Le=50.626、Ve=4176、AL=2800、N.W=23
後で使いたくなるパラメータはAe=82.5だ.コアの実効断面積は82.5平方ミリですよという意味がある.Le=50.626mmも使う.実効コア長のことだと思う.
6) 一次側巻き線数Npを計算する
考え方:既に Ls=2.7mH、Np:Ns=1:3.54 と決まったので、Lp=215uHと計算される.これを実現する巻き数を求める.ただし飽和させちゃいけない.
コアSPECにあるALというパラメータは1巻き当たりのインダクタンスを表す.
Lp = AL * Np*Np はインダクタ設計の常套手段だが、悲しいことにこの手は使わない.
なぜかというと、飽和を防ぐためにコアの継ぎ目に0.1~0.5mmぐらいのgapを設けるのだが、このgapのせいでコアのALは役に立たなくなってしまうからだ.
なぜか?
ALはこういう式で定義される.
AL = μ0μs * Ae / Le (μ0は真空透磁率 μsは比透磁率)
採用したコアのパラメータを当てはめて検算してみると、(μs=1500とする)
AL = 4*π e-7 * 1500 * 82.5e-6 / 50.626e-3 = 3071e-9
となり、コアSPECのAL=2800e-9に近い.
ところが、gap部のALを計算してみると、(lg=0.5mmとする)
AL = μ0 * Ae / lg = 4*π e-7 * 82.5e-6 / 0.5e-3 = 207e-9
5: AL=1036 NI=15*2.4A=36
plotを見ると4と5はダメですな.4と5に何が起きているかというと、gapが小さすぎてコアが飽和してる.
巻き数が少ないのが楽なので2番にしましょうか?
Np=29 →Ns=29*3.54=102.7=103
これまでに決まったトランスのパラメータを整理する.
core=EE28 PC40
gap=0.4mm →片側0.2mmの意味なので注意
Np=29
Ns=103 →Ns/Np=3.55
Lp=215uH
Ls=2.7mH
Ippk=2.4A
Ispk=0.67A
7) IC電源巻き線Ndを計算する
考え方:16Vぐらいでてくれ
Ns:Nd = 300:16 →Nd=5.5=6
8) 巻き線径
AL = 4*π e-7 * 1500 * 82.5e-6 / 50.626e-3 = 3071e-9
となり、コアSPECのAL=2800e-9に近い.
ところが、gap部のALを計算してみると、(lg=0.5mmとする)
AL = μ0 * Ae / lg = 4*π e-7 * 82.5e-6 / 0.5e-3 = 207e-9
gap部のALは コアのそれよりも1/10以下の小さな値になっている.
Lp = AL * Np*Np の計算をするときに2800と207のどちらを使うべきなのか?
コアを磁束が回るとき、2800(コア)は通りやすくても、207(gap)が邪魔するので207が支配的になる.207を使わなくっちゃダメ.
というわけで、lgに依存して5種類計算してみる.gapが狭いと飽和するリスクがある.
1: lg=0.5mm AL=207e-9 Np=sqrt( 215uH / 207n )=32.2 →1次側巻き数33
2: lg=0.4mm AL=259e-9 Np=sqrt( 215uH / 259n )=28.8 →1次側巻き数29
3: lg=0.3mm AL=345e-9 Np=sqrt( 215uH / 345n )=24.9 →1次側巻き数25
4: lg=0.2mm AL=518e-9 Np=sqrt( 215uH / 518n )=20.4 →1次側巻き数21
5: lg=0.1mm AL=1036e-9 Np=sqrt( 215uH / 1036n )=14.4 →1次側巻き数15
この5つのどれにするかは、TDKの資料から拾ったPC40-EE28に近いグラフにplotしてみる.斜め線の左下なら飽和せずOKということ.
NI=Np*Ippk=Np*(Ispk*3.54)=Np*2.4A
1: AL=207 NI=33*2.4A=79
2: AL=259 NI=29*2.4A=70
3: AL=345 NI=25*2.4A=60
4: AL=518 NI=21*2.4A=505: AL=1036 NI=15*2.4A=36
plotを見ると4と5はダメですな.4と5に何が起きているかというと、gapが小さすぎてコアが飽和してる.
巻き数が少ないのが楽なので2番にしましょうか?
Np=29 →Ns=29*3.54=102.7=103
これまでに決まったトランスのパラメータを整理する.
core=EE28 PC40
gap=0.4mm →片側0.2mmの意味なので注意
Np=29
Ns=103 →Ns/Np=3.55
Lp=215uH
Ls=2.7mH
Ippk=2.4A
Ispk=0.67A
7) IC電源巻き線Ndを計算する
考え方:16Vぐらいでてくれ
Ns:Nd = 300:16 →Nd=5.5=6
8) 巻き線径
考え方:実効電流密度が4~8A/mm2になるようにする
Iprms = Ippk * sqrt(D1max/3) = 2.4 * sqrt( 0.4/3 ) = 0.88A
Isrms = Ispk * sqrt(D2max/3) = 0.67 * sqrt( 0.6/3 ) = 0.3A
0.29Φ S=0.066mm2 0.88A→13A 0.3A→4.5A
0.32Φ S=0.08mm2 0.88A→11A 0.3A→3.75A
0.4Φ S=0.126mm2 0.88A→7A 0.3A→2.4A
うーん、秋月で0.4mmのポリウレタン線を買うことにするかねぇ?
トランスのパラメータを整理する.
core=EE28 PC40
gap=0.4mm →片側0.2mmの意味なので注意
Np=29
Ns=103 →Ns/Np=3.55
Nd=6
Lp=215uH
Ls=2.7mH
Ippk=2.4A
Ispk=0.67A
巻き線=0.4mm
core=EE28 PC40
gap=0.4mm →片側0.2mmの意味なので注意
Np=29
Ns=103 →Ns/Np=3.55
Nd=6
Lp=215uH
Ls=2.7mH
Ippk=2.4A
Ispk=0.67A
巻き線=0.4mm
たぶん以上で合ってると思うんだが、致命傷があってもオレは知らんので素直に死んでくれ.
かしこ
0 件のコメント:
コメントを投稿