2017年6月8日木曜日

町内会活動から身を引きました(後編) 私達の地域社会

前回は、地元町内会で起きたブラックな事案をきっかけに町内会と絶縁した経緯を書きました.

ソニーを退職して以来、サラリーマン時代では知る由もなかった地域社会を観察する機会に恵まれました.町内会をお手伝いしていたのは地域社会観察の入り口になりました.

以下では、地域社会ってどういうものなのか? 地域社会は今後ますます衰退する、というハナシを書きます.

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サラリーマンは家と会社の往復ばかりです.人脈は家族と友人と会社ぐらいなもんです.そんなサラリーマンが棲んでいる土地には、地域社会という並行宇宙が在ります.地域社会はそれなりのお金の流通と権限を伴って並存しているんです.

【地域社会の参加者】
民間企業のサラリーマン時代にはほとんど付き合いの無かった立場の人々です.
行政        区役所、警察署、消防署、学校、社会福祉協議会、民生委員、住区、、、
政治        地方議員(基本的に与党系)
市民団体  町内会、自治会、商店会、お祭り実行委員会、PTA、、、
宗教団体  神社、お寺、創価学会、教会
市民        自営業者、主婦、退職老人、PTA会長OB、、、

【地域社会の序列】
地域社会には様々なイベントがあります.
防災訓練、新年会、町会総会、交通安全週間、歳末助け合い、運動会、マラソン大会、お祭り、、、無茶苦茶たくさんあります.例えば目黒区長は年明けから各方面の新年会に毎日のように出席し、新年会シーズンが終わるのは2月の末までかかるのだそうです.
各行政機関の長はそういうイベントに来賓として引っ張りだこなので、一応は偉い人として扱われます.

町内会は行政のヒモ付きではない独立組織ですから、町内会長達は比較的偉そうに振舞います.相手が区長でも政治家でも警察署長でも対等でOK、みたいなかんじ.

行政は様々な許認可権を持っているけど、町内会や商店会を怒らせた役人は左遷されるのでデカイ態度はしない.地方議員にとっては地域社会は地盤そのもの.全体的に持ちつ持たれつの知り合い同士の間柄になっています.

市民には不思議な人々が居ます.みなし公務員になって木っ端役人の小間使いをさせられると幸福を感ずる人々です.それでたまに区長との懇談会などがあると脳内にドーパミンが大量に分泌される人々です.お上大好き、公権力者大好きという変な人々です.

【地域社会のお金】
わたしが地域社会で見たお金の原資は、税金、町内会費、募金、寄付・お布施   といったところです.

まず税金は、チマチマとどーでもいい金が使われているみたいです.いろんな地域貢献活動やイベントに行政が協賛すると、行政からお金をもらえます.もらったお金を有意義に遣ったことを証明するアリバイとして、広報誌の発刊を要求されることもあります.こういった諸事業への協賛は一度始めるとなかなか打ち切り出来ません.役人が打ち切りを通知すると、受益団体は議員を使って巻き返しにかかりますからねw
町内会は自前で町内会費を集金する独立組織ですけど、行政からの助成金も入っています.行政発行の公報ビラを回覧板と掲示板でバラ撒く手間賃という名目です.

町内会費の使途は、町内会総会で承認を受けます.予算報告書には監査役の承認も伴います.素人のやる事ですから、企業決算ほど厳密ではありません.貸借対照表なんかないです.

歳末助け合い募金運動などに協力して町内会で集金します.目黒区では、独居老人に社会福祉協議会(役人の天下り団体)から歳末見舞金を¥2000配布しますが、その原資の一部は歳末助け合い募金から支出されています.

お祭りは地域社会の熱いイベントです.各種の寄付金を募ります.かなりの金額が動きます.

【地域団体の後継者がいない】
子供が親の家業を継がずにサラリーマンになるのが現代風な身の処し方です.サラリーマンは地域社会にコミットするには忙しすぎるので、町内会や住区や檀家や氏子会のような地域団体は高齢者ばかりになっています.30~40歳台の構成員なんか居やしない.世代交代したくても下の世代が居なけりゃ無理.全国何処でも似た様相かと思います.

町内会や住区や檀家や氏子会は民間団体ですが、行政の下部組織でも人手不足は似たようなもんです.民生委員は町内会が推薦する建前になっていますが、引き受ける人が少なくなっており、現在東京都では町会推薦由来の民生委員は70%だそうです.この数字は継続的に低下してゆくでしょう.そう遠くない未来に、派遣社員で民生委員の欠員を補う時が来るんです.そうなったら民生委員はボランティアでは居られなくなり、人件費的にも持続困難になります.解散を含めて体制を見直すべきでしょう.
目黒区には住区という行政と町内会の中間に位置する組織があり、さっさと潰してしまえばよろしいかと思いますが、政治家の地盤にもなっているため絶滅させるのは難しそうです.わたしの所管住区では、所管エリア内に住んでいる住区役員がほとんど居ないという状況になっており、住区役員のリクルート活動も低迷しています.

【地域団体は今後どうするのか?】
行政の下部組織はさておき、民間団体について予想します.

回覧板と掲示板しかメディアを知らない非IT世代は間もなく死に絶えます.

世代交代して、団塊世代とその下ぐらいが主導権を握る時代が今後10年間ぐらい続きます.その世代はメールやスマホを使えるぐらいにはメディアに対する理解力があります.
そんな彼らが地域団体の復興を目指して取り組むのは「大量動員すりゃいいんだ戦術」になろうかと想像します.要するに餅つき大会だとか各種イベントを開催して、地域の子育て世代を大量動員すれば、地域団体は復活するはずだという原理です.

残念ながらこの原理は、イベント運営者の労苦が増すけれど、カジュアルユーザーを楽しませるだけで終わり、地域団体の復活には結びつきません.
なぜか?
子育て世代というと下は平成生まれの若者です.若者の行動様式は対価を支払ってイベントに参加するスタイルであって、平日の夜にイベント準備をし、イベント終了時に打ち上げをするような、イベント運営者に成りたがるスタイルじゃありません.なので、地域団体が何度もイベントを開催して集客しても、打ち上げに来るのは従来通りの老人ばかりという現実に10年かけて気付くという徒労が待っているんですよ.

そして10年後、現在50歳ぐらいの世代が地域団体の長になった頃に下される決断は「スタッフが居ないのでイベントを中止しよう」なのですよ.

地域団体は持続可能性を失って衰退するんです.

現在でも既に、わたしの地元の神社のお祭りにおいて、神輿の担ぎ手を住民から出せない地域もあるんです.そういう地域ではアルバイトの担ぎ手を雇って神輿を維持しているのが実情なんです.

【町内会の特権は創価学会へ】
衰退するとはいえ、町内会はその資金力、独立性、地域社会との関係、不動産、認可地縁団体、などの容易には得難い特権を有しています.現状はその特権を、行政+与党+善良な市民がうっすらと共有しているわけです.

町内会が持続困難になって特権を手放そうとする時期がいずれ訪れる一方で、その特権を欲しがる者は少なくないはずですよね.町内会事務所で「憲法9条を守る勉強会」や「南京大虐殺を学ぶ会」を開催したい者達も居ることでしょう.オルグだねぇ.

ですがたぶん、町内会の特権が全国的に左翼の手に渡る可能性は低いと予想します.

それでは特権は誰の手に渡るかというと、創価学会・公明党の特権に移行すると思います.

創価学会の人達は、ボランティア活動をさせたら極めて優秀ですよ.彼らは仕事としてやりますから、わたしのような裏切り者は出ないでしょう.彼らの人材ネットワークが強いので、イベントに必要な飲食物や資機材レンタルの手配などもテキパキとこなします.
町内会の資金が創価学会員の経営する企業や商店に落ちるわけですが、町内会事務所に「慰安婦ポスター」とか「ピースボートポスター」が幅を利かすようになるよりはマシだとわたしは思います.

【地域団体衰退後のセカイ】
地域団体は衰退する、というハナシばかりして来ましたが、別の形態が勃興しつつあります.

地域団体の致命的弱点は役員のリクルート活動が地域限定なところだと思います.上で述べたとおり、地場の自営業者が淘汰される中での人材難という図式です.

しかし現代の人的繋がりは、TwitterやLineやfacebookで広域に薄く広がったネットワークに移行してますよね.そういうネットワークは団体登記する必要は無く、不動産を所有する必要も無く、目的を共有する人々が容易に離合集散できる環境が出来上がっています.

そいつらの活動の一例を紹介します.

いま「晩ごはん会」というのがブームになっています.会費¥1000ぐらいで、親子合わせて数10名ぐらいが集合してご飯を作って食べるイベントです.母親にとっては親睦の場で、子供にとっては遊び場です.ネットワークで集客されたカジュアルユーザーの離合集散ですから、強力な運営団体は存在しなくてもOK.
こういうカジュアルかつ小規模なイベント、一種のオフ会が、今後の地域活動の主流になると思います.

晩ごはん会の開催場所が中目黒であっても、参加者は交通の便で横浜や千住から来たりしますから、目黒区が協賛団体として助成するのは構造的に難しいような気がします.それでも先進地域世田谷区では行政のコミットが強いと聞きます.行政の助成も、地域地域とばかり云ってられなくなるのではと思います.


そして最後に一言、、、オレにはカンケーねぇ

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