2016年4月8日金曜日

STAP細胞を改めて振り返ってみる (3) STAP死せども特許は死なず

STAP騒動からもう2年が経ちますが相変わらず面白さ満載と思えてなりません.「あの日」が出版されたり、「STAP HOPE PAGE」が立ち上がったりと、近頃また話題が豊富なんですよ.

今回は、STAP特許がどうなっているのかを調べてみます.


STAP論文が取り下げられたのにSTAP特許は生きているって変じゃない?と思っている方は案外大勢いらっしゃるのではないでしょうか? つまりそれは、STAP論文がダメで、自動的にSTAPの特許もダメになったのだから、今後の展開で海外勢にSTAPを後追い検証されちゃったら日本は泣きを見ることになる、、、という悲観的展開へとつながってゆくと.

ですが、その悲観論は誤りです.日本はまだそこまで失ってはいません.

日本が失ったのは、せいぜい小保方達がノーベル賞を受賞する可能性を失ったぐらいです.

以下、その説明になります.

-----
話題は一旦逸れますがお許しを.

論文と特許の位置づけの違いとは何でしょうか?

論文: 真実が第三者に検証されうる形で記述され、剽窃などの無いこと

特許: 真実かどうかはひとまず気にしない.「請求項」の新規性のみが判断される.たとえ剽窃があろうと、捏造があろうと、罰せられることはない.静かに却下されるのみ.

論文に真実性が求められるのは理解しやすいと思います.でも特許について上の説明は判り難いと思いますので、例として次のようなSF特許を挙げます.

特開2012-080694
「空間内及び時空内における瞬時の移動を可能にする方法を提供する」
つまりこれはワープ航法の特許です.こんな特許出願もあるくらいに特許は自由なセカイなのです.
↓この特許出願のクライマックスはここでしょう.
「『裏宇宙』こそが万物の創世の根源であり、かつ万物の終焉でもある。即ち、時空おける全ての存在、森羅万象が『裏宇宙』から創世され、かつ、『裏宇宙』に置いて消滅する。『裏宇宙』は、三角捶により表象される空間であり、電子によりこの空間に出入りすることができる。」
めくるめく精神世界が特許出願文書に記述されています.うっとりしちゃいますな.

このように特許出願というものは云うだけなら何でもアリなんです.ここが重要です.

もちろんこの特許出願は認められずに消滅しました.権利化できなかったわけです.経緯は、平成22年出願 → 審査請求せず → 平成26年消滅 しています.つまり、どんなデタラメな特許出願であっても、最低でも4~5年はその特許がペンディングされる、というわけです.
さらに審査請求すると、審査を経て却下されるまでの数年がプラスされますから、トータルで10年かそこらはペンディング状態を持続することが可能です. (詳細までは存じませんがorz)

ゆえに特許とは、たとえデタラメであっても、
約10年間、隠然とした効力を発揮し続ける
隠然とした効力とは、どこかの誰かが本当にワープを発明したら、そいつの成果はこの裏宇宙の人に奪われてしまう、ということです.

-----
STAP特許にもどります.

小保方晴子で特許検索すると、1件だけヒットしますので、すぐに特定できます.研究者をやっていたクセに、たった一件の特許にしか名を連ねていないとは、ショボい奴だなぁと思います.平坂久門ですら検索するとヒットだけなら43件ありますからねw

STAP特許はこれです.(直リンクできじ)
特表2015-516812
外来遺伝子材料を導入することなしに、より多能性の状態を細胞にとらせることに関する方法、アッセイ、および組成物に関する

「外来遺伝子を導入せずに」はiPSを意識しているコトがわかってニヤリッとしちゃいます.

STAP特許の出願日は、平成25年4月24日 です.ゆえに平成35年ぐらいまで隠然とした効力を発揮しつづけると考えられます.

つぎに、STAP特許の請求項がどうなっているか? 請求項は74個もありますから多いほうです.重要な請求項だけを抜き出しました.

まず、なるべく広範に権利化するための請求項がこの1~4です.
1)  細胞をストレスに供する工程を含む、多能性細胞を生成する方法。
2)  多能性細胞が外来遺伝子、転写物、タンパク質、核成分もしくは細胞質の導入なしに、または細胞融合なしに生成される、請求項1記載の方法。
3)  多能性を示す細胞を選択する工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
4)  細胞が組織の部分として存在しない、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。

以下は、STAPの作り方としてマスコミで解説された方法を述べています.14が酸性刺激、21が温度刺激、23,24が物理的刺激 です.
14)  ストレスが約3.0~約6.8のpHに細胞を曝露することを含む、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
21)  極度な温度への曝露が、35℃未満または42℃超の温度に細胞を曝露することを含む、請求項13記載の方法。
23)  機械的刺激が、剪断ストレス または/および高圧に細胞を曝露することを含む、請求項13記載の方法。
24)  機械的刺激が、細胞のサイズより小さな開口を有する少なくとも1つのデバイスを通して細胞を通過させることを含む、請求項23記載の方法。

ここで、2016年3月に少し話題になった、マウスの傷口から初期化細胞を取り出せた件を思い出しましょう.この研究成果が検証されたら科学界で褒められるのは当然ですが、残念ながらその研究者は特許は取れないと思います.なぜなら、まず上記の1と2にモロ当りですから、ぐぅの音も出ません.それと、怪我の傷口ですから23に抵触している可能性が高いです.

つまり、STAP特許が隠然とした効力を発揮し続けると思われる約10年間に、どこかの研究者が「遺伝子不要の初期化」を証明しても特許は理研がウマウマと総取りです.在るのは理研の勝利のみ.(不正確だがここでは理研総取りということで)

だから、USからの陰謀論に怯えている人々は勘違いしているんです.ほ~らやっぱりUSにSTAPを強奪されちゃった、という嘆きは具現化しないんです.在るのは向こう約10年間は理研の勝利のみなんです.
もちろん陰謀論者の気持ちはわかりますよ.USの陰謀は楽しいし、USの陰謀が具現化するコトを祈る気持ちも判る.だがしかし、理研の勝利しかないんだよ.もちろん理研はそれを判っていて、名を捨てて実を取ったのでありましょう.

-----
上のような特許手続きについては、企業で特許に関わったことのある者なら自然と身につく初歩的知識でありますが、なぜかSTAPについて「全てを失った」的な浮き足立った説が多く、公開情報をちょっと検索しただけで「そんなことないんだけどなぁ」と判るので、書いてみました.

全ては理研のシナリオどおりに、、、、ウマーw


【次回予告】
特許から見えてくる、STAPに翻弄された人間達

その2へ    その4へ


人気ブÍグランキングへ

0 件のコメント:

コメントを投稿