2013年3月30日土曜日

787 バッテリー改善案をFAAが承認ってあり?

こちらの記事によると、787のリチウム電池発火事故の改善案をboeingがFAAに申請し、試験飛行で問題なければFAAは運行停止を解除するというハナシですから、boeingの設計改善をFAAとしても承認したと言ってよいでしょう.  http://www.digibo.net/articles/201303122345560000.html

boeingによる設計改善案とは、平たく言うとこうです.
●セルが燃えたがその原因は不明 (システム原因は見いだせなかった)
●燃えないセルに改善できたわけではない
●たとえセルが燃えても延焼しないように改善した

安全が1000%確認されるまで飛行停止解除はしないと言っていたFAAが下したのは、
●boeingの設計改善案をOK
●ただし、しばらく試験飛行して効果確認してね

う~ん、、、、怖いなぁ787.飛行中に制御サーバーがshut downしたりしないんでしょうか? 電源を多重化してるのかどうかは寡聞にして知りませぬ.そこが知りたいところです.

ロイターのこの記事の「『100%安全』といわれても正直まだ怖い。原因が分からないのに『安心して乗れますよ』なんてお客様に言えない」という客室乗務員の感想は冷静にいいところを突いてるように思います.http://jp.reuters.com/article/jp_blog/idJPTYE92I02L20130319

旅客機のエンジンが単発じゃない理由は、片肺飛行になっても墜ちないためと聞いたことがあります.太平洋を飛ぶ747は安全のためにエンジンを4発も積んでいました.777を双発にするには信頼性上の決断があったそうです.つまりエンジンについては『止まることもある』とその信頼性に烙印を押したうえで航空システムを成立させるように信頼性設計されていると言えるでしょう.
しかし、リチウムについては、燃えるなんてことは確率的にネグリジブルだっていうくらい鉄板の信頼性を前提としてシステムが設計された787だと思われます.その信頼性システムを後から『やっぱリチウムはたまに燃えるわ』と上書きしてしまっても、当初と違わぬ信頼性を実現できているとしたら、そのロバストさに敬服してしまうわたしです.電源系統の多重化はしてるんでしょうね? > boeing殿

ステーションブラックアウト?そんな確率的にごく僅かなことを気にししてても仕方ないじゃないか?と嘯いていた原子力安全委員会のオジサン達と、boeing+FAAがダブって見えるのはわたしだけでしょうか?

boeingとFAAについては、以前わたしが書いたフレンドリーな表現を再度掲載してクレームに代えさせていただきたいと思います.

-------ここから-------
ボ社: 開発段階の熱設計はうちの規定でちゃんとパスしたんだけど、今回学んだのはリチウムって想像以上にケアが必要らしいってことなんだ

ひら: ケアってどんなケア?

ボ社: 熱がね~、意外に発熱するんだ

ひら: 熱設計が甘かった? まぁかなりギチギチに実装しちゃった感があるよね

ボ社: うん、ありゃぁ失敗だったなぁ.エンジン始動で大電流を取り出したとき、試験では100度までは上昇することがあるという結果を得ていたんだけど、今回の事故は特定のセルは150度近くまで行ったのかもしれない.150度っていうと、電解質が変性しはじめる温度でさ

ひら: 実際そのくらいの温度まで行ったの?

ボ社: いや、推測なんだ.いろんなサンプルで試験してるけど、実際にそんなに高温になるサンプルはまだ見つかってない

ひら: 推定原因ってことね

ボ社: そうだけど、我々は自信をもっているよ.リチウムを冷却すべく設計変更中さ

ひら: 推定原因で設計変更してみて、あとは飛ばして実績を積む作戦ってか? FAAがそれでOKって言うの?

ボ社: う~ん、OKするんじゃないかな? FAAにはうちの会社出身の人も大勢いるしね

ひら: へーっそうなんだ.意外と軽いノリじゃん.ただ気になるのはさ、コンスーマー用リチウムは膨大な生産数量があるから、市場をスクリーニングに使うなという批判をさておけば、統計的に妥当性を判断できる日がいつか来るとは思うんだよね. けどさ、航空機のリチウムの生産数量って、年間で1000台とかそういうオーダーでしょう.統計的な妥当性判断は10年経ってもできないんじゃないかなぁ?

ボ社: 技術革新には一定の犠牲はつきものさ

ひら: なんかオレ787に乗りたくなくなってきたよ

ボ社: No problem.  Don't worry.  Don't mind.  You are chicken.  Trust me.
-------ここまで-------

さらに意地の悪い推測を追加すると、
●このまま運行停止を続けた結果被るboeingの損害額  ---- A
●拙速に運行解除して、将来787が墜落した時にboeingが支払う賠償額  ---- B
●A>Bになる損益分岐時期は2013年4月である
●したがって、運行解除するのが株主利益的に正当である
USAのMBAならこれぐらいのことはするかと思われます.
「ヒラサカ、オマエは子供なんだヨ」とMBAに陰口を叩かれているのかと思うと悔しいよぅ.

ちなみに、こちらの日本の解析チームによると、セルが筐体とスパークしていたかのようなニュアンスが漂っています.http://www.asahi.com/national/update/0328/TKY201303280001.html

かしこ


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3 件のコメント:

  1. こんにちは 最近の自動車はパワステ、ドライブバイワイヤーなど電動式のアシスト装置や専用駆動装置が使われ始めています。
    電動アクセルはレスポンスが遅かったり、途中踏みの時ちょっと踏み込むとオーバーランを起こして戻らなくなり、Nレンジにするとレッドゾーンに飛び込んだそうです、もし知らなければDレンジのままどんどん加速してどっかに突っ込んでいたかもしれません。
    次のモデルではブレーキバイワイヤまで出てくるらしいと聞きます。
    もしこれが効かなくなると止まることも出来なくなるわけです。
    出来れば操作系統はアシスト止まりまでにしてほしいと思うんですが、いかがと思われます?

    以前H車ではマスターバックがパンクして、思いっきり踏み込んで事なきを得たことがあります、1週間部品が来るまで脚力は確実にUPしました。
    S車では前ディスクでありながらクロスタンデムでますたーばっくなしでした。これでも十分止まれていたので、設計次第ではアシスト比率を下げ、人力で制御できるようにすべきではないかと思っています。
    確かにハイブリッドの回生とブレーキ比率を機械系で設計するのは面倒くさいでしょうが、出来ないことではないと思ったりします。

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  2. あの小さいバッテリーだけ飛んでるのではないので大丈夫のような気がします。
    「約1.5メガワット」というのは驚きました。
    ↓ボーイング社のSiteより
    787型機の電気システムは、飛行中は発電機で生成された電気により作動しており、バッテリーからの電気を使用しているわけではありません。メインバッテリーは、飛行中に電力を失うなど、現実ではほぼありえないような緊急時に電源を移行したり、バックアップ電源として使用される予備電力...
    【787型機の電気システム】
    787型機が採用しているシステムは多くの電気を使用することから、他機種よりも多くの発電機を搭載しています。2基のエンジンにそれぞれ2台づつ、そして後部にAPU用の2台、計6台です。
    787型機ではより多くの電気を使用するために、より多くの電気を生成しています(約1.5メガワット、他ボーイング製航空機の約4倍)。

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    1. そうですか、たかがメイン電源じゃない電源が燃えただけでそもそも騒ぎすぎなんだということなら、問題ないです.そういう判る奴には判る頭の良い説明をしてくれりゃいいのになぁ.
      解せないのは、バッテリが燃えた787では、計器類が一斉に電源断警報を出したという報道が事故当初にされていたのは、あれはなんだったんだろう???

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