今回はその辺を説明する.
交流電圧増幅回路の定数決め手順をひとまとめしつつ、その流れをせき止めて電源電圧について寄り道しようという算段だ.
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手順1:増幅回路に入力される交流電圧仕様を決める.ここでは1Vppとする.すなわち、ベースに1Vppの交流が加わると仮定する.
手順3:ベースーエミッタ間はダイオードに過ぎないので、ベースに加えた交流1Vppはそのままエミッタへ1Vppとして出てくる.しかし、手順2で述べた直流電圧はそうではなく、約0.7V電圧降下する.
手順4:エミッタの直流電圧を決める.
1Vppの交流電圧がエミッタに現れるのだから、エミッタの直流電圧が0.2Vや0.3Vだったら交流電圧の下側がサチってしまってダメなのはわかるであろう.
エミッタ直流電圧は最低でも0.5Vは必要だというのもわかるであろう.
ここでは余裕をみて1Vにする.べつに1.5Vでも2Vでも5Vでも構わないのだが、さすがに5Vまでは不要だ.(理由は後述)
これはどんな周波数を取り扱うかによる.
10~100MHz級なら100Ωぐらい
100k~1MHz級なら1kΩぐらい
DC~10kHzなら10kΩぐらい
わたしならこのくらいを目安にするかな.ここでは100Ωにする.
手順6:交流電圧増幅率を何倍にしたいかを決める.というか最初から目標仕様として決まっているだろうがね.例えば10倍にしたいとする.
手順7:コレクタ抵抗を決める
これも計算するだけ.エミッタ抵抗x増幅率=100Ωx10=1kΩ
手順8:エミッタ電流を計算する
これもただ計算するだけ.1V÷100Ω=10mA
手順9:コレクタ抵抗電圧降下を計算する
これも計算するだけ.1kΩx10mA=10V
手順10:電源電圧を決める
これは本連載で初出の概念である.
この回路で電源電圧を変えてエミッタ電圧Veとコレクタ電圧Vcを観測してみる.
いずれもVeは直流1Vdc+交流1Vppである.Vcには交流10Vが現れる.
↓まず電源電圧20Vのとき.正常に増幅できている.
Vcの中点電圧が直流10Vである理由は、Rc(=R2)の電圧降下が10Vになるように手順9でセットしたからである.
上の歪み波形では何が起きているのかというと、電源電圧を下げすぎたために、コレクタ電圧の下側がエミッタ電圧にドンついてしまっているからである.
つまり、電源電圧には仕様から決まる最低電圧があるのだ.
上の波形からすると、最低電圧は16Vぐらいらしいが、どうしてそうなるのか?
それはこうゆう計算だ.
電源電圧 = 16.5V
コレクタの最大電圧降下 = 10V + 交流の下peak5V = 15V
コレクタ電圧の最小値 = 16.5 - 15V = 1.5V ①
エミッタ電圧の最大値 = 直流1V + 交流の上peak0.5V = 1.5V ②
①と②がギリギリ等しくなって、VcとVbがぎりぎりドンついてしまう最低電源電圧が16.5Vと計算されるのである.
そんな考察により、余裕を持たせて電源電圧20Vに決める.
手順11:ベース直流電圧を決める
これは計算するだけだ.
ベースはエミッタよりも約0.7V電圧上昇するのだから、Vb=1.7Vである.
手順12:ベースに接続されている2本の抵抗値を決める
20Vを抵抗分圧して1.7Vを得るような抵抗値を計算すればいい.
その条件を満たす抵抗の組み合わせには無数の組み合わせが存在するが、代表として次の3例を挙げる.これらのどれを選ぶのが妥当なのだろうか?
①1830Ω/170Ω (合成抵抗156Ω) →電流喰い過ぎなので却下
②18.3kΩ/1.7kΩ (合成抵抗1.56kΩ) →適する
③183kΩ/17kΩ (合成抵抗15.6kΩ) →ベースインピーダンスに負けるので却下
③については何を言ってるのか意味不明であろう.後の連載で解説する.
と言いつつここで軽く述べると、、、エミッタ抵抗が100Ωの時、ベースインピーダンスはおおよそ10kΩぐらいになるんだ.そこに15.6kΩの内部抵抗を持つ1.7V電源を接続すると負けてしまうっていうことなんだ.でも何言ってるんだかわからないだろう.
という手順によって、トランジスタ1つの交流増幅回路を設計できましたとさ.
交流電圧だけを取り出すにはコレクタにコンデンサを接続すればよろしい.
でもこれで出来たと思っちゃ甘いんだよな.
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かしこ
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