生で使おうとすると使いづらいトランジスタであるが、エミッタ抵抗を入れると使いやすくなるよ、というハナシをする.
前回指摘した問題点をおさらいしよう.
トランジスタを生で使うとき、ベース-エミッタはダイオードと同じなので、0.6Vを越える辺りで急激に大量の電流が流れてしまって使いづらくてしょうがない.
以下ではそれを使いやすくする.
やりかた:
A)エミッタに100Ωを直列にいれる ←これに尽きる
B)ベース電圧を1.65Vにする
C)ダイオードの直列電圧降下で0.65Vが食われて、抵抗の両端電圧は1Vになる
C’)すなわちエミッタ電圧Ve=1Vということである
D)すると、100Ωに流れる電流はI=V/R=1/100=10mAになる
D’)100Ωに流れる電流はエミッタ電流Ieである
E)Ie=Ib+Icの関係にある.ベース電流とコレクタ電流はエミッタで合流するからだ
E’)だがしかしIb<<Icでもある.100倍差があるもんね.なのでIbを無視してしまって、Ie≒Icと考えてしまおう. ←よくやる
F)すると後付的に、Ib=0.1mAにしたんだねとわかる.Ib=Ic/hfeだからだ
いきなりA~Fを見せられても、エミッタ抵抗を入れて何やってんのか判らないだろう.
たぶん、一番理解がついてこれないのは、議論の出発点だったIbやhfeがサブキャラ扱いになってしまったところかと思う.まさにそうなのだ.変動するhfeをシカトするのが目的なのだから.
F)を再考してみる.
hfe=50だとしたら、 Ib=0.2mAである
hfe=100だとしたら、Ib=0.1mAである
hfe=200だとしたら、Ib=0.05mAである
お分かりだろうか?
hfeが変動したって構わない.Ibが結果としてナンボだって構わない.そういう状況に持って行けたことが.
この回路のもう一つの変動要因として、0.65Vが気になる.ベース-エミッタ間電圧なのでVbeと呼ぶ.Vbeは0.6~0.75Vぐらいで変動する.特に温度で変化する.
Vbe変動でIeがどれだけ巻き添えを喰らうかを計算してみよう.
Vbe=0.6V Ie=(1.65-0.6 )/100=10.5mA
Vbe=0.65V Ie=(1.65-0.65)/100=10mA
Vbe=0.7V Ie=(1.65-0.7 )/100=9.5mA
Vbe=0.75V Ie=(1.65-0.75)/100=9.0mA
このくらいの変動だったら、コレクタ側をうまく設計してやれば無問題で逃げ切れるさ.
「コレクタ側のうまい設計」については次回か次々回で解説する予定.
てなわけでエミッタ抵抗はエライのだった.
なお、hfeやVbeによる変動にもっともっと不感症的にしたければ、エミッタ抵抗を1kΩにすればモアベターよ.
かしこ
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