前回に引き続いて小信号トランジスタ増幅回路の高周波特性について.
2SC4083で下記の周波数特性を得たのが前回の成果だった.
だがしかし、そんな成果は幻であることをまず示そう.
プリント基板には浮遊容量が存在する.浮遊容量は3pFぐらいはすぐについてくる.
4層基板の表面層の抵抗やコレクタのパターン面積が数平方ミリメートルはある.
それと内層GNDとでコンデンサを形成するのだ.その結果3pFぐらいはつく.
つまり回路はこうなるわけだ.邪魔な3pFがコレクタ抵抗にひっついている.
2SC4083の出力容量は0.8pFだったのに、外付けみたく3pFがひっついてしまうんだ.
そして、そして、周波数特性はこんなにも無残に劣化するのである.SIMで750MHzといってたのに、実際にプリント基板を作ったら130MHzに劣化すると予想される.
これが回路設計の実像なのだ.悲しい.
シミュレーションでいい気になってると実態と乖離してるんだね.
昔書いた投稿で、「初心者が回路シミュレータでやった気になるのはあまり良いことではない」と書いたのはこうゆうことなのだ.
その3pFを小さくすることはできる.
トランジスタのコレクタと、コレクタ抵抗の直下から、一切のパターンを無くすのである.GNDもなにもかもだ.パターン的には穴が開いたような形状になる.そうすればコンデンサ電極の相手方が不在になるので3pFを1.5pFに減らせるかもしれない.
コレクタ抵抗を小さくすることも高周波特性改善に効果的だと前回で述べた.
なぜなら、1000Ωのコレクタ抵抗と3pFが形成するLPFは、1/(2πRC)で計算すると16MHzにもなる.全然だめだよこんなの.
これを100Ωのコレクタ抵抗に変えると160MHzに改善する.
ただしコレクタ抵抗を小さくすると電圧増幅度が低下する副作用はある.
せいぜい100~200MHzぐらいまでの回路ならそんな風に対処すればなんとかってところだが、GHz級の回路ではそうはいかない.この写真のように、トランジスタの配線自体をマイクロストリップラインにしちゃうのである.マイクロストリップラインの途中にトランジスタを置くと形容するのが実態をよく表しているだろう.
ただしこういうハイブローな設計になってしまうと、高集積度の部品実装はもう無理だと思う.上の写真はたぶんボード厚1.0mmの2層基板で、マイクロストリップライン幅2mmで50Ωを形成している感じかと推測する.導体幅2mmじゃ高集積化に逆行しているよね.しかもトランジスタ1段毎にシールドケースに入れないとピーピー発振するしな.
高周波特性を伸ばしたいときの着眼点に納得していただけただろうか?
1)出力容量の小さなトランジスタを選ぶこと
1’)利得帯域幅積の大きなトランジスタを選ぶこと
2)増幅度をそんなに大きくしないこと(3倍ぐらいにしとけ)
3)コレクタ抵抗を小さくしとけ(大きくても数100Ωぐらいまで)
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かしこ
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返信削除トランジスタを使う事そのものが目的です.増幅増幅.
削除わたしの好きなKonaも5番がすでに出てますけどまだ4番を使ってます.
win7の寿命が尽きかけているのでどうしたものか?
うわぁ・・・さぁっぱりチンプンカンプン。何を目的にされておらるかも、自分の頭ではわかりません^^;)。
削除----------------------------------------
現在、Linux Debian(9) Stretch-Dog を使っていますが、
Debian(10) Buster版 Dog が出たのでインストールして見ました。
2日間、あれやこれややってみましたが全然ダメ、自分の手には負えませんでした。まぁ、Debian(9)は2022年までサポートがあるので、そんななに焦らずともよいのですが。Busterもそのうち、奇特なお方が日本語版を開発して頂ける・・・ことを期待しませう。
Kona Linuxも(10)Buster版が出てますが、もうお使いですか?。
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返信削除しばらくraspberrypiとかArduinoとかいじってました。今時のCPUは優秀でLEDをダイレクトにドライブてきるんですね。それに甘えてネットの記事には制限抵抗もつけずにLEDを接続してたりするのもあってなんだかなー、と思っちゃったり。
返信削除電子回路に対して畏怖の念みたいなのは持たないのが今は普通なんですかねー。
増幅できてること自体が畏怖の対象でーす.
削除LED直結にはわたしもビビリですが、深く考えると出力FETのチャネルに電流制限効果はなくはないよなとも思いますが、やめといた方がいいですよね.エイメン
電気を使って電気の増幅やスイッチングができるなんてすごいことですよね。魔法より偉い。ベル研のショックレー達がいなかったら未だに真空管かリレーですからね~。
削除スチームパンクというSFジャンルがあり、蒸気機関でロボットが動いたりする世界観です.
削除半導体が発明されず、ナノスケール真空管デバイスが発展したSFジャンルを「チューブパンク」と呼ぶそうです.(うそ)