【トランジスタの増幅作用】
下図はNPN型のトランジスタってやつだ.PNP型もあるんだけどそれはさておく.
まぁでも実際にこの回路で通電したらたぶん2秒でトランジスタが焼けるだろうな.トランジスタパッケージを「モールド」と呼ぶが、モールドが焦げる臭いには回路屋は敏感になるもんよ.作業してて焦げ臭いとすぐに電源を切る光景.(笑)
Ibはベース電流.全然ウソですけど例えば10mAのベース電流が結果的に流れたとする.
すると、コレクタにはコレクタ電流Icが流れる.
Icは、
10mA x hfe = 10mA x 約100倍 = 1000mA
と計算される.
1000mAとは1Aのことだよね.1Aの供給元は10Vのバッテリーだ.
この、10mAが1000mAになるのがトランジスタの増幅作用の正真正銘の正体である.
【hfeとは】
電流倍率のことをhfeと呼ぶ.日本語では電流増幅率.だいたい100倍ぐらい.
なんでhfeと呼ぶのかというと、仕事では全然使わないけど大学の授業では習うH parameterというのがあって、トランジスタの性能を表現するパラメーターのこと.hfeの頭文字のHはこのH parameterのことだ.(Hはhybridのこと)
でもH parameterなんか知らなくても平気だよ.使いたいと思った事が一度もないもん.
次にFは、forwardのこと.つまりベース→コレクタへの「順方向の増幅における」という意味だ.
ならばreverseもあるのか?というとある.もちろん0.01ぐらいだと思うけど.
Eの意味はエミッタ接地のこと.上の回路はエミッタが接地されるように描かれている.ああいうのをエミッタ接地と呼ぶ.
トランジスタには3つの端子があるので、ベース接地もあるし、コレクタ接地もあるでよ.それぞれに便利な役割があるんだけど、それを理解するには入出力インピーダンスについて理解しないといけないので現時点で説明するのは無理.この連載を読み終わるころには理解できるようになってるんじゃね?
接地の3種類を示す.ブルーの矢印は入力→出力の方向を示す.
【hfeはなんでも100倍なの?】
それがだなぁ、、、、
回路図を見ると、もしもhfeが変わっちゃったら増幅作用が大コケしてしまうじゃないかと思うでしょう.トランジスタの増幅作用の要であるhfeがヒヨヒヨと変動してしまったらダメじゃん.
そうなんだよねぇ.
だけどhfeは変化するんだ.
そもそもトランジスタの製品によってhfeは20~200ぐらいまで多種多様でーす.
そんなんでどうやってアンプを設計できるのかって?
そうねぇ、まぁ上手く回避するのよ.この連載を読み終わるころには理解できるようになってるんじゃね?
【どうして電流増幅できるの?】
知りません.そんなこと知らなくても設計はできる.
と、冷たいことを云わないで変な解説をしよう.
下図はNPNトランジスタの断面図.コレクタ-エミッタ間に10Vを加えた様を表している.この状態だと電流は流れない.つまりトランジスタOFF状態.
なんでOFFになるのか?
赤の部分が、PN接合的に逆バイアスだからだ.ダイオードの逆向きに電流が流れないのと同じ現象と思えばいいんじゃね?
すると、おかしな現象が起こる.Ibに刺激されて、100倍ぐらいのIcが滝のように流れ落ちるんだ.「Ibに刺激されて」の部分は量子力学で解明されているんだろう.オレそんなの知らなーい.
Hパラメータなんか知らなくたって設計はできる.回路SIMを開発する人にはHパラは必須知識かもしれないがね.わたしは回路SIMのuserだからさ.
トランジスタの動作原理を量子論的に究めなくたって設計はできる.
上で少し述べたように、例えばhfeは変化する.それは知っておくべき知識だ.
そして、hfeが変化しても平気な回路を設計する知識こそが必要である.
誤差の生じるところを知る、誤差を封じ込める方法を知る.これはどんな分野でも求められる向き合い方ではないだろうか?
かしこ
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