2023年2月12日日曜日

【回路】300Vで動かす半導体アンプ(7) 詰んでいる

自作の多い生涯を送って来ました.
いろんな物に手出しすると失敗もします.10個中9個は失敗.成功は1個ぐらいです.
しかしそれでいいんです.
なぜか?
 ・やってみなけりゃわからない
 ・無計画、まずは手出し、出たとこ勝負、現物合わせ
 ・ダメだったら素直に死ぬ
 ・経験値がいくらか上がればそれでいい

麻雀打つ人っていつも↑こんなメンタルじゃね?

現在、300V FETアンプを作っていますが、ほとんど死んでるレベルの問題に2つもブチ当たっています.

PCBの火入れをする前に、いろいろとsimulationをしているのですが、なかなかうまくいきません.その原因を突き詰めると、回避不能かもと思えてきます.今回は回避困難な事情についてです.

詰みその1:出力トランスの低域通過特性が悪いため、電力がしょぼくなる
購入した東栄変成器T-850/12kの入出力抵抗は、12kΩ:4~8Ω であります.最大出力SPECは2W.設計目標としては1Wは出したい.

↓LT-SPICEにおける同トランスのsimulation parameterはこうなってます.
 1次インダクタンス:12H (実測)
 2次インダクタンス:9.1mH (実測)
 結合係数:0.9999 (ごついトランスはこんなもんらしい)
↓このトランスのT型等価回路は1次側でこうなります.
1kHzに対する12Hのインピーダンスは、
 jωL → ωL = 2x3.14x1000x12 = 75kΩ
1次側の12kΩに対して75kΩは十分に大きいので、問題なし。

ところが、100Hzに対する12Hのインピーダンスは、
 jωL → ωL = 2x3.14x100x12 = 7500Ω
1次側の12kΩに対して7500Ωは不十分なので、100Hzは12Hに半分ぐらい分流してしまい、-6dB@100Hzぐらいに低下します.

「真空管アンプにはwooferをドスドス鳴らす能力が無い」と聞いていましたが、出力トランスも原因の1つかと悟りました.

NFBでリカバリできないか?
この出力トランスの最大出力電力は2.4Wであると計算されます.それはDC 20mAmaxというSPECから、フルスイング電流が40mApp@12kΩになるので、P=I*I*R=2.4Wだからです.
ただし、この2.4Wはトランスを円満に通過できる1kHzでのハナシであります.
通過電圧が-6dBになってしまう100Hzでは2.4Wなんか無理で、0.5Wぐらいしか2次側へ伝わりません.
それをリカバリするのがNFBですが、NFBというものは「強きを挫き弱きを助く」行為ですから「1kHzを挫き100Hzを助け」ます.すなわち、全帯域を弱い100Hzの性能に合わせます.そのためアンプ出力は0.5Wでflatになってしまって、ラジカセにも劣る音量しか出ないでしょう.volumeを上げても音が割れてしまいます.

これじゃぁ目標性能に達しません.最低でも1Wは出したい.

1万円ぐらいするトランスじゃないとダメなのか.詰みだ.

simulationと実測が異なるのにワンチャン賭けようそうしよう.立直一発自摸ドライチだっ.


詰みその2:使えるFETが存在しない
現在のパワーMOSFETの用途はSW素子に極振りしてます.SW素子ですから、600V耐圧ですと小さくても1.5Aなどと高電流対応の製品ばかりです.(小型packageならあるんだが)

しかしわたしがアンプ用として欲しいFETは、600V 100mAぐらいなんです.小型の真空管がちょうどそんなくらいです.

大は小を兼ねると言いますから、600V1.5Aでも使えるじゃんと思うでしょう.ですが、ちょっと困った事がありまして、ゲート容量が350pFぐらいあります.6A級だと1000pFを優に超えます.FETって電流を稼ぐためにパラるのでゲート容量が大きくなりがち.

↓いまわたしがやりたい回路は、真空管をFETに置き換えた、高電圧小電流回路ですから、高負荷抵抗のドレインから次段のゲートへ直結します.けれど、100kΩに350pFのゲートを直結したら4500HzのLPFを形成してしまい、高域不足でNGになります.

真空管のグリッド容量はたぶん小さかったと想像します.GP間GK間の距離が半導体のそれよりも3桁ぐらい大きいからです.そんな真空管を円満に置き換え出来そうなFETを探すわけですが、600V 100mA ゲート容量50pFでTO-220のMOSFETが見つかりません.SOT-223みたいな小さなpackageならあるけど、300V20mA=6Wは焼けそう.
bipolar transisterの方が選択肢は広いけど、段間直結が難義になります.

↓SOT-223はこれ.放熱をケアしたとしても、これに6Wつっこむ度胸はないかな..... 半田が溶けそう.
詰んでる・・・・

結局、エミフォロを挿入せざるを得ないところへ追い詰められているこの頃です.構想倒れ.

オーラスでハコテン寸前・・・・

ーーーー
遺憾ながら、ソースフォロアを挿入して、全部300V電源で、↓こんな感じの回路で腹を括りました.
ブルーの文字は自動生成じゃないので不正確です.コンデンサ耐圧がところどころ100V超えちまうので手持ちがないのと、抵抗の電力消費がところどころ巨大なので手持ちがないです.調達がかったるい.千石電商の地下売り場へGOTO.
BSS127はマルツで取り寄せ可能な小信号MOSFETで、600V21mAで、ゲート容量20pFぐらいなので優秀です.SOT-23.
終段はTK3A60DAといい、600V2.5A ゲート容量380pFだったかな.これを駆動するためのソースフォロアです.秋月で購入.TO-220.

↓NFBありのclosed loopはまだあまり入念なsimをしてないけど、max power 0.5Wぐらいになる予定です.この弱っちい低域特性はトランスのせいです.高域はわざと落としてありますが、実機ではトランスのせいで高域も自然にダラ下がりになると思います.

またプリント基板を作り直します.よろしくJLCPCB.

6へ    8へ

かしこ

26 件のコメント:

  1. >-6dB@100Hzぐらい
    → トランス結合は、事実上の「HPF」
    >100kΩに350pFのゲートを直結したら4500HzのLPFを形成
    で、合わせて、
    「フラットな特性」 (但し、0.5W Max)
    に、ならないでしょうか・・・
    ※HPF+LPF だと、組み合わせによっては、「どこかが凹む」かもしれませんが。

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    1. >結局、エミフォロを挿入せざるを得ない
      「FET」の時点で、なんとなく「こうなる予感」は、ありましたが、
      やっぱりそうなりますよね。
      ※というか、これ「前段のFET」要らなくないですか?
      FETって、1段でも結構Gainがあったような気がするのですが。

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    2. 違うな。前段のFETのソースから直に出力取ればいいのでは?

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    3. 諦めて、腹を括りました.
      ソースフォロアのバッファを挿入します.
      とりあえず0.5W flatで製作します.
      回路は上に・・・・

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  2. やはり、「Hi-Fi オーディオ」には、「出力トランスは鬼門」なんですね・・・
    ※前回予想の「B-H曲線」ではなくて、「トランスのインダクタンスによる、寄生フィルタ効果?」とでも言うものから、周波数特性が伸びなくなるのですね。
    ・まぁ、これは普通に「ラジオやテレビを聞く分」には、問題にならないのでしょうね。
    ラジオも、AMならOKだけど、FMだと厳しいかも。

    ※Hi-Fi オーディオアンプでも、トランスを使ったものは勿論ありますが、いずれも、
    「独自の手法」で、この辺りを回避してるのでしょうね。(なので、値段が高い・・・)

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    1. トランスってLPFでもありHPFでもあるという難儀な部品ですからねぇ.20Hz~200~2k~20kHzの3decadeを通すとなると難儀だなぁと.2decadeなら楽なんですが.
      小信号伝送でよければ、50ΩIN-50ΩOUTにすれば広帯域化は出来るんですけど、出力トランスはパワー伝送なのでそうゆう真似は出来ないので3decadeはキツー
      で結局は値段が跳ね上がる....

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    2. >20Hz~200~2k~20kHzの3decadeを通すとなると難儀
      これ、単純に高周波AMPに置き換えると、
      ・3MHz ~ 3GHz まで flat
      ということになるんで、そりゃあ大変ですよね。(広帯域AMPで、こういうのはありますが。あと、オシロの入力段とかの、測定器系にはありますね。)
      ※そう思うと、オーディオ系は案外侮れないですね。

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    3. それでいてダイナミックレンジはできれば140dB欲しいとか、、、最もクレイジーな増幅器だと思います.無茶振りすぎー

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    4. これ、「Hi-Fi」ジャナクテ「ハイレゾ」になると、
      ・4 ~ 5 decade
      に、なりますよね?(サンプリング周波数が、384KHz ~ 数MHz とかあるし。)
      ※もはや「測定器並み」ですね。

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    5. もう、やめて、、、(笑)
      際限ないインフレ.

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    6. そう考えると、「中華製ハイレゾアンプ」とか、
      「ホントに性能が出てるのか?」疑わしいですね(笑)

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    7. 32bitハイレゾDACのAK4499が144dBとか言ってますけど、中華のみならず日本製でもそんなパワーアンプなんかこの世に存在するのかな?と疑っているんです.

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    8. 私も昔、オーディオアンプの設計やってたので分かりますが、
      ・S/N 144dB (IHF-Aフィルタ)
      だったりするんですよね・・・ (AK4499 のデータシート見てないんでわかりませんが)
      ※カタログスペックは、だいたい「何らかのフィルタ/イコライザ」使用時の値です。ちなみに、IHF-A は、「等価ラウドネス曲線(人間の耳には、こう聞こえるという音圧から定義されたもの)」のフィルタの一種です。
      ※これが、あり・なし では、全く値が変わります。

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    9. どうもこの辺
      https://media.digikey.com/pdf/Data%20Sheets/AKM%20Semiconductor%20Inc.%20PDFs/AK4499_Feb2019.pdf
      を見ると、ホントに S/N は、
      ・IHF-Aフィルタ 使用時
      みたいですね。
      15ページの、「S/N (A-weighted)」というのが、そういう意味です。
      (ちなみに、これは普通のやり方です。べつに変なことやってるわけじゃないです。)

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    10. IHF-Aは結構帯域を絞ってるようですね.
      低域は200Hzからっていう感じ.

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    11. >IHF-Aは結構帯域を絞ってる
      そうそう(笑)
      まぁ、「人間の聴覚」の、シミュレーションだから、間違っては無いんですが・・・
      ※私も、これ あり・なし で、全く値が変わるので、
      「こんなのでいいのか?」
      と、思いながら測定してた記憶があります(笑)

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    12. あれだと帯域幅が2decadeぐらいですもんね、楽になれそうw

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  3. ※なんか、どんどん回路が複雑になっていく・・・
    「スイッチングレギュレータ用のFET」は、どんな音がするのでしょうか?
    データシートを見ると、ゲートバイアスとか難しそうですね。(殆どマージンがない。まぁ、本来の用途だと「On」か「Off」すればイイだけなので、あんまり「リニア領域」のことは、考えてないんだろうな・・・)

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    1. この手のFETは「D級AMP」なら、そのまま使えそうですが、(どっちも、On/Off だけで事足りるから。)どんな音になるか、興味ありますね。

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    2. 高速SWでON抵抗が低けりゃOKという方向性ですからね.
      飽和領域で使わないのでON抵抗なんかリニアアンプに全然かんけーないです.高速SWもかんけーないですよね.OFFもONもしないんだから.どう考えたらいいのやら??

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  4. R1 (負荷抵抗:スピーカ相当)は、「8Ω」ではなくて「6Ω」になってますけど、何か意味があるのですか?

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    1. それはですね、手持ちの視聴用SPKが6Ωなためです.
      4Ωだろうと思ってたんですがありゃりゃ?

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    2. だいたい、
      8Ω ・・・ 一般家庭用スピーカのインピーダンス
      4Ω ・・・ カーオーディオ用スピーカのインピーダンス
      (電源電圧が低いので、出力をとるためにインピーダンスが低い)
      なんですが、「6Ω」って、何用なんだろう・・・?

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    3. 6はあまり見ないインピーです.
      PARC Audioの製品です.

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    4. >PARC Audioの製品
      これですね
      【にわかAVマニアのウッド】ParcAudio DCU-C131W 入手→試聴→苦労
      https://hirasaka001.blogspot.com/2019/11/avparcaudio-dcu-c131w.html
      ※確かに、「6Ω」ってありますね。

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    5. おはよーございます

      そう、これこれ.試聴スピーカー.

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