2023年9月15日金曜日

アリスとテレスのまぼろし工場(初日)

アニメ作家が有名になり、作家の名前がブランドになり、ブランド商売が出来て、連続して大作アニメを作れるようになる。そんな恵まれた人がいる。

その一方で、優秀なんだけど、雇われ監督を何本かやった後は単発で絵コンテをやらせてもらうだけに墜ちちゃう人も大勢いる。ヒラ的にはそういう優秀だが恵まれないアニメ作家がメインスタッフに抜擢されるのを願って止まない。

ブランド化するアニメ作家とそうでないアニメ作家の違いって何処で生じるんだろう?

自分の名前ブランドでしか仕事をしないアニメ作家は一人だけ居る。というか一人しか居ない。新海誠だよ。彼は自分で企画を立てて金を集め、自分の名前で制作してきた。アニメ制作スタジオに所属して仕事をもらった経験がない。「言の葉」で大手制作会社の目に留まり快進撃中。「君の名は」には「名前を売る努力に怠りなし」という裏の意味があったに違いない。

あの宮崎駿ですらキャリアの振り出しは東映動画のサラリーマンだった。「カリ城」で監督をやらせてもらったが興収最悪で絵コンテ描きの恵まれぬ境遇へ堕ちる。それを救ったのはアニメージュ編集部の鈴木Pと、金を出した徳間。それでもトップクラフトというわけわからんスタジオしか与えられず、不出来な「ナウシカ」を作ってブランディングに成功、ジブリを創設し今に至る。名前を売るのに苦労したというわけだ。

高畑勲は一足先にブランド化した宮崎に引き上げてもらった。

押井守は「うる星」で業界では有名人になった。その後「パトレイバー」「攻殻」と作品に恵まれたうえに、Japanimationで海外勢の高評価が逆輸入されたのもあり、ブランディングで苦労した時期の比較的少ないアニメ作家だと思う。

さて、これから「アリスとテレスのまぼろし工場」を見るわけだが、岡田麿里ブランド映画第2段だ。
岡田麿里の出世作というと「あの花」だと思われる。脚本岡田麿里、監督長井龍雪、作画田中将賀のトリオでその後に劇場アニメを数本作る事になる。この3名はアニヲタには知られた人達であって、アニヲタ的な有名度ランクでは、
 田中 > 長井 > 岡田
だと思う。
ところがどういうわけか、岡田麿里が劇場監督2作目に抜擢されて、3人の中でブランディングTOPに上昇するんだから不思議な事もあるもんだなという感慨がわたしにはある。

ブランディングには、本人の才能の他に大手に引き上げてもらうという最後の一撃が必要だが、今回の「アリスとテレス」がまさにそれで、MAPPAがかな~り金を投じているみたいよ。「さよ朝」が興行的に振るわなかったので次回作は難しいだろうと思っていたが、あのMAPPAで作ってると知ったのはかれこれ1年前だったか? 「岡田麿里に作らせたい」「岡田麿里ならブランドになる」と燃えるPがポコポコ出てくる。彼女はどうしてそんなにPに好かれるのだろう?

さて、始まる。

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バルド9隣のスタバ。

残念ながら本作がクチコミで大人気になるよな事はない。

エヴァQっぽい陰鬱な廃墟の映像。storyも陰鬱。

多世界解釈ありき。行き詰まりの世界線に閉じ込められた町。必滅世界線からどうやって抜け出すかを軸として展開するのだが、ラストでその手法が2つ提示されよく解らなかった。行き詰まりの世界線をなるべく長持ちさせようとする勢力も出てくる。

難解風な展開の割には、言ってる事はさほど難解ではなく、
 「怯まずに壊してみなよ、なんとかなるからさ」
である。

そして現状を壊す原動力は、簡単化すれば「若い恋心」なのだが、別の世界線における主人公達の姿が主人公達の行動に影響を与える.しかしそれは「若い恋愛パワー」を構造的に減退させていたと思う。

こりゃスゲェと思ったのが、キスシーンが異常にエロかった。今まで見たアニメで一番エロかった。あの口唇のエロさは半端ない。あの濡れ場は何回でも観たい。

岡田麿里をメジャーブランドに、と奮い立ったPの期待には、文芸作品としても商業作品としても応えられなかったと思われる。前作「さよ朝」の方が上出来だったかもしれない。

少なくとももう一度観る予定です。

#twitterにて、大絶賛の声多数とは言えない。初日なんだからご祝儀相場で褒めちぎってやれよー

9月17日追記: yahoo映画の評価はこうなってます.わたしは★★★をつけました.

あでゅ〜

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