2022年11月22日火曜日

オペアンプ教室 by日清紡

日清紡が電子部品というのがどうにもしっくり来ない、そんな回路設計者は多いのではないでしょうか? かつてのJRC日本無線が今では日清紡になっています.

JRCというとオーディオ用OPAMPで有名なMUSESシリーズを作っています.日清紡になってもディスコンせずに造り続けて欲しいです.(今のところ大丈夫そうですが)

「オペアンプ教室」というのが日清紡のサイトにあります.
同ページで解説されているのはOPAMPのdatasheetに必ず記載されているSPECです.
 1)オフセット、バイアス
 2)open gain
 3)スルーレート
 4)電源雑音除去比 PSRR(SVR)
 5)入力換算雑音

1)微小なDC信号を増幅するような設計要求って今の世の中にはあまり多くないと思います.なのでオフセットやバイアス関連は、DC誤差をもたらす元凶ぐらいに考えておけばとりあえずいいんじゃないだろうか? DCにシビアな用途ならCMOS OPAMP使っとけと.アナデバはこの手のお堅いOPAMP製品が豊富で偉い会社だなぁと思います.軍事用の系譜なんですかね?

2)open gainが足りねぇ!なんてことはまずないです.ケアする場面はないと思います.
分母の巨大数値で結果ゼロみたいなもんでさー

3)スルーレートを気にしたことはそんなにないです.OPAMPをコンパレータとして使った時に、電源電圧に向けて振り切るスピードがスルーレートで制限されていて気になったことはあります.あと50MHzぐらいのパルス増幅するとき、OPAMPの選定でスルーレートに着目したことはありました.
小信号増幅ではスルーレート限界に悩まされる場面はほとんど無いと思います.ノコギリ波を10Vぐらいまで増幅したい時は要注意かもですが.
設計の時にアタマの隅にあるぐらいですね.

4)電源雑音除去比は、日清紡の資料ではSVRと書かれているけど何の略なのかは知りません.わたしはPSRRと呼びます.電源ノイズがアンプに混入する程度を表します.
設計の際には常に頭をよぎる不吉な項目です.
なぜ不吉かというと、PSRRってだいたい80dBぐらいしかないんですよ.それに比べてSNRは帯域の広さ狭さによりけりですけど100dBぐらいは実現できます.それに比べたら、電源ノイズには弱いなぁといつも思って背筋が寒いんです.とにかく電源を綺麗にせねば.

5)フツーのOPAMPのノイズは5nV/√Hzとかで、そのせいで音声帯域でSNRの上限が100dBとか110dBぐらいに制限されてしまいます.
VTRのヘッドアンプで優秀なのは0.5nV/√Hzなんてのもあったけど、OPAMPでそこまで優秀なのを知りません.

1~5のようなdatasheetに書かれているSPECは、楽な設計ではあまり気にしなくてもいいです.ならばシビアな設計では気にすべきかというと、気にしてもあまりアテにならないもんです.
例えば、フィルターを作ったときに、カットオフ周波数付近でノイズが増えたりするのですが、そのスペクトラムは同じ品番でもセカンドソースによって異なります.そういうのはdatasheetのSPECでは察知できません.実装して測定してみて、良い製品を探さなくちゃいけない.

音質も聴いてみなけりゃわからなくて、JRCの製品で比較しても、5532は落ち着いた音、4558は華やか、MUSESはまろやか、みたいな違いを感じますが、そういった音質の差はdatasheetでは判りません.

音質にせよノイズにせよ、ICダイのレイアウトの良し悪しに左右されるとわたしは思っています.ICダイ上でのクロストークによって大振幅信号の陰に隠れた小振幅がマスクされたり位相応答が狂ってしまったりしてるんじゃないかと.でもそうゆうダイナミックな性能はdatasheetには表示されません.
高性能DAC設計はともかく、一般的なアナログIC設計でクロストーク解析はわたしが知る限りではやってませんでした.フロアレイアウトは経験的にやってるみたいでした.だとすれば、OPAMPの動特性の良し悪しも在って当然という気がします.

OPAMPのSPEC項目を知っているに越した事はないが、知っていてもどうにもできないという不毛なハナシでした.カーナビ買ったけど、沖縄の地図データは一生使わないみたいなかんじ.なんだかなーなセカイを徘徊しましょう.

かしこ

9 件のコメント:

  1. 津久井街道で2022年11月22日 15:22

    PSRRはぼCMRRなので、ボルテージフォロワーは歪みだらけになるはずですけど、そんな説明教科書にないですね。

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  2. 「ほぼCMRR」でした

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    1. そういえば日清紡サイトにはCMRRの解説はなぜかなかったです.

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    2. ハワイのレンタカーにNYの地図データがあっても使う気がしない残念さ...

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  3. >日清紡が電子部品というのがどうにもしっくり来ない
    日清紡と言えば、謎の動物たち(馬とか)が、
    「ニッシンボー」と歌い出す、これまた超ナゾな宣伝、
    と言うイメージしかありません。
    (まぁ、彼らも「コンシューマープロダクト」は、あまり作ってないから、ああいう、
    「イメージ宣伝」しか出来ないのでしょうけど。だったら、
    「私たちが、あの『5532』を作ってるんですよ!」とかのほうが、まだ良いんじゃないか?
    (まぁ、これも「一部から」反発を受けそうですが。)と言う気がしなくありません。)



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    1. あれじゃすっかり自虐系CMのカテゴリであります.

      電気系展示会で日清紡を見かけるので電子デバイス事業をマジメにやってるみたいでよかったです.すぐに中華へ転売されたりしたら僕らのMUSESが無くわー

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    2. 5532のオリジナルってNE5532なのかな?

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  4. オペアンプの聴き比べはやったことないですが、自分はたぶん理解できないと思います。

    日本の製造業も統廃合が行われているんですね。

    今から20年前はメモリサイズの関係で、全国地図は高かったです。
    地図のバージョンアップも全国ではなく、地域単位でやっていたはずです。

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    1. オペアンプの聴き比べは微妙な差しかないのでそんなに気にしなくても良いレベルです.
      それ言ったらハイレゾもそんなに気にしなくてもOKといえばOKであります.

      さすがにPCから出てくる音声信号は悪音ですけど.
      あと¥2000ぐらいで買えてしまうUSB audioも悪音です.
      こいつらはハイレゾとかOPAMPとかいう以前の問題.

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