2024年2月17日土曜日

埼玉戸建てリフォーム(まとめ1)最悪だった理由

埼玉戸建てリフォームのまとめです.

今までに関わった仕事上の製品やprojectをひっくるめて、今回のリフォームが最悪でした.

リフォームまとめ1回目は、「今回は何故最悪だったのか」を書きます.

その前に、、、このリフォームより以前で最悪projectは何だったか?

それは、社会人なりたての頃に関わった、ソニーマグネスケールでの業務用VTRでした.わたしが入社するよりも前に設計されたVTRです.
「性能が悪い」と海外の客が怒り、現場で性能upせよとわたしがUK送りになりました.
業務用VTRは、クルマと似て寿命が尽きかかった部品を交換して生き永らえます.ところが、その業務VTRをUKの客先で調整してわかったのは、
 「このマシンは客先で性能維持出来ないクソ設計だ!」
激怒しました.
 「他人のクソ設計の尻拭いで俺様をUK缶詰めとは許せん!」
最初のUK出張は1ヶ月間滞在したかな.
そんなUK出張を何度も繰り返しているうちに彼女と仲が悪くなったりして、より一層激怒.
ゼロからビデオ回路の設計をやり直し始めたのは入社3年目だったか.その時、ビクターを退社した従兄弟がソニーマグネスケールに漂着していて、従兄弟が輝度回路設計を担当し、わたしは色回路設計と設計リーダーを担当.その新VTRが完成し海外顧客が高画質を大絶賛していたらしいが、その頃にはわたしはすっかりやさぐれていて、
 「ここまで来るのにどんだけかかってるんだか...」
などと悪態つく不良社員になっていました.そのクソVTR激怒が後々まで尾を引いてソニーマグネスケールを退社しました.後年、従兄弟は自殺しました.
教訓は、
 「設計が悪いとリカバリ不能」
不良設計に関わっちゃいけません.

ところが、このクソVTRを超える災厄級が今回の物件だったのですから恐れ入ります.一口で語るのは難しいのですが、伝わり難いのを承知で定義すると、
「昭和50年代の戸建てという過渡期の産物の、悪い面が総出で噴出した超不幸な物件」

以下では、これでもかと各論に分け入ってゆきますので、読者が付いてこれないかもしれませんが、ゆるせっっ


【年代別の戸建て観】
昭和50年代の過渡期、と書きました.その意味を説明するために、昭和40年代の建物と、昭和60年代の建物はどうだったのか?について先に書きます.

昭和40年代の戸建てだったら、そもそもリフォームする気にならなかったと思います.S40戸建てというと、屋根も外壁もトタンで、もはや2020年を超えて建ってるのが珍しい.健康で文化的な最低限の生活を営むには柱だけ残して全部やり直ししなくちゃいけないくらいです.さすがにそこまでやる気になりません.

次に昭和60年代というと63までしかないので平成年代と呼びます.
平成からは急速に戸建ての信頼性が進化したように思います.でもそれは建物文化的には後退の擦れっ枯らし化だとも思います.
平成以後の戸建てのアイテムは、こんなものでしょう.
 ベタ基礎   →湿気少ない
 断熱材強化  →壁床屋根に適用
 壁増強    →耐震性ふすま障子排除
 洋室     →椅子の生活、和室排除
 フローリング →畳排除
 石膏ボード壁 →難燃、劣化少ない施工容易、砂壁排除
 クロス    →施工容易
 白い内装   →明るい
 施工容易   →職人不要
青字は信頼性upアイテム、赤字は職人不要の擦れっ枯らしアイテムです.
平成の戸建てでは2つの流行が同時進行したと思います.
 1)断熱、湿気防止 →信頼性up
 2)職人芸を要する和室が下火に、施工容易な洋室が主流に →擦れっ枯らし化

それではS50戸建てってどうなのか?
いろいろと中途半端なんですよ.過渡期ですから.

S50戸建ての断熱の観点:
壁におざなりに断熱材は入っているけれど、スカスカで効かない.
床の断熱なし.
屋根・天井裏の断熱なし.
何の役にも立たない、なーんちゃって断熱.

S50戸建ての基礎の観点:
布基礎=土間ですから、湿気が多い.湿気は劣化の原因.

S50戸建ての壁材の観点:
砂壁、聚楽壁、合板壁、石膏ボード、クロス、これらが混在した過渡期の産物.
砂壁・聚楽壁なんかで健康で文化的な生活なんかできるか、ボケ!
合板壁は数10年後に湿気で接着剤が加水分解されてボロボロになる.どひさん!
一部には石膏ボード+クロスが使われていたりする.(現代風)

S50戸建ての湿気の観点:
S50にもなるとアルミサッシが一般的になり気密性が向上しました.しかし、なにせ断熱がおざなりだし布基礎から湿気が上がって来ますから、暖房すると至る所で結露が生じるという地獄絵図.結露すると、壁も床も合板はダメになります.あまりにも結露が酷いと石膏ボードですら劣化します.
皮肉にもS40戸建てだと、隙間風が吹きすさんでいたので結露が生じにくいという笑えないmeritがありました.(笑)
平成以降は気密も断熱もちゃんとしているので結露も減り信頼性が向上しました.

S50戸建ての耐震性の観点:
S50は物件によるバラツキが大きいです.
筋交い、火打ち、抜け止めの有無は物件によってバラバラです.
和室志向の物件だと耐力壁が少ないので耐震性の弱さは克服し難いんじゃないですかね?
過渡期なんです.

S50戸建ての水道管の観点:
もっと古くは脳神経がやられる鉛管でしたが、S50だと鉛管は使われなくなり、鉄管に変わりましたが、鉄管は錆びます.蛇口から味噌汁みたいな錆水が出てきます.そんな家で健康で文化的な生活なんかできません.S50だと塩ビ管を使った物件もあります.
平成になればどれも塩ビ管ですから錆びたりしません.
つまり、S50は過渡期なんです.

S50戸建ての文化的観点:
S50年代に家を建てた人々は昭和1桁~昭和10年代産まれの人々だったでしょう.
その年代の人々にとっての生活風景とは、囲炉裏端の煤けた茶色い世界でした.茶色の内装なんつう鬱な室内装飾が好まれたのは囲炉裏端の刷り込みでしょう.
また高貴な家には、雪見障子を装備した和室と、庭には石灯籠と鹿威しと錦鯉が泳ぐ池があるのが定番イメージ.なので、S50戸建てには、和室と洋室が混在しています.
和室が成金の象徴なのだから全部和室にすりゃいいのに、洋室も作るのはなぜかというと、彼らも本音では「洋室の方が便利だ」と判っていたんじゃないですか? でも「高貴なお方は和室なのだ」という意識が邪魔して和洋混在戸建てが出来上がってしまう.
過渡期の悪い思想です.

S50戸建ての庭の観点:
庭なんか要らねぇ、とわたしは思うのですが、ジジイは庭を好むんですよね.
固定資産税を支払ってまでどうして庭なんか欲しいんだろう?
それで、庭があれば庭石を置いたり花壇を作ったりするわけです.
だけど、メンテナンスを怠ると雨が降る度に表土が流出して見苦しいことになる.邪魔.

このように、S50年代戸建てからは、戦前文化→大量生産文化への過渡期の中途半端感が漂います.
建築における大量生産とは、誰でも施工できてしまう工法のことです.石膏ボード+クロスとか、建具は工場で作られた枠を嵌め込むだけ、発泡スチロールの断熱材をパコパコ嵌めてゆくだけ、、、などです.
ところが和室に白木なんか使おうものならカンナで微調整のセカイになりますから難易度高いしメンテナンスが大変です.ロクな事になりません.


今回の物件が災厄級だったところ
「設計が悪いとリカバリ不能」ということです.俺のせいじゃねぇっつうの.以下の写真は全てbeforeです.

鉄管の錆水 →交換
大変な作業でした.引き込み管を掘り返して、鉄管の始まりを探す必要がある.鉄管の直前で切断し、それ以降を塩ビ管に置き換え.床・壁・天井に穴を開ける.施工後に塞ぐ.

花壇の表土流出 →土を減らしてモルタル
石組み花壇ですが、「あ~ぁ、こんなの放置してやがる」と呆れるやら腹が立つやら.目止めモルタルを入れてないので土がドロドロと流出してました.

CB花壇 →撤去
幅2mぐらいのものでしたが、CBが崩壊しかかってました.CBに縦筋は入っても横筋は入らないので、植木の根の膨張圧に負けました.CBを土留めに使うなよ.安直に作るからこうなる.

畳  →撤去してフローリング
古くてかび臭い畳部屋なんか誰も喜ばん
砂壁 →石膏ボード+クロス
ざらざらと砂が落ちてくる.暗い室内.何も良いことがない
白木 →清掃不能
汚れてるけど清掃できず見苦しいまま放置.白木なんかダメよ.

茶色い合板壁
目に入る物が全て茶色とか嫌な家だなぁ.室内が暗い →クロス貼り
老人用手摺が邪魔 →撤去

合板壁がボロボロ →補修

壁にVVFを這わすなよ見栄え悪い
 →壁内を通線

フローリングにCFを貼ってしまった後始末
CFを剥がしてウスイータを貼った.標準施工の両面テープを使えないので接着剤を使って施工したけど、ところどころ剥がれて浮いてくる.今後クレームになるかもしれない.

ドア劣化 →補修
なんでこんなに劣化するのかね? みんなこんな

過去のリフォームがアバウトすぎる(勝手口) →刷新
湯沸し器の配管の残骸が放置されていて、しかも水漏れ.未使用排水口を閉塞せず放置.煙突穴の閉塞がおざなり

床の合板がバラバラに剥がれてしまう(勝手口) →張替え

物置外壁ボロボロ →合板上張り+塗装

使ってないボロい物置 →撤去、大量の廃材が出る

エアコンの無い部屋がある →エアコン新設
元は奥さんが住んでた部屋なんだけど、エアコンなしでよく生きてたな

点検口がほとんど無い →天井点検口を13個増設
配管にも配線にも点検口は必要不可欠.

風呂の劣化が多すぎる
排水口が溶けてるって何なの? 素材はアルミでした →交換
錆水で染まっている →クエン酸で漂白
老人用手摺がそこら中についていて邪魔 →全部撤去
木の下端が腐食.アルミプレートがガバガバ →パテで補修
シリコン目地材が奥まで入ってないので引っ張ったら全部剥がれちゃった.施工が悪い. →やり直し
ラッチが変でドアが閉じない →削って閉まるようにした
タイル欠け、建具塗装
あと、天井を塗装しました.

玄関ドアクローザーオイル漏れ →交換

謎の汚れは石鹸だった →塗装&合板張り

そこら中の網戸が外れてる
原因は外れ止め部品の破損 →3Dプリンタで自作

雪見障子なんかやめろ
和室の障子が27枚もあってめげた

建具のデザインがなんかムカつく →清掃しづらい、和室しね

異常な汚れ
これはキッチンの天井ですが、シーリングライトを外したら初期天井材が信じられない汚れだと判明しました.どうやったらこれほど汚れるものなのか??? 中華屋の天井じゃないんだから...

郵便受けの蓋が行方不明 →部品購入&取付 (panasonic製)

雨戸の戸袋が鳥の巣に →清掃
鳥さんしね

カーポートの屋根が外れ、雨どいも壊れてる →修理

駐車場の輪止めが異常に高くてバンパー擦る →短縮&切断

他にもありますけどこのくらいにしときます.

S50年代の標準的部材が悪い.鉄管や合板壁など.
茶色内装、和室、花壇 などは注文主の思想が狂ってるのが悪い.
それだけじゃなく、おかしな劣化も多過ぎでした.鳥の巣ってなんだよ?
こうゆう癌がなければ、施工期間は半分未満で済んだでしょう.

あーひどかった.

かしこ

8 件のコメント:

  1. 九州モン
    私の自宅も昭和52年築でまさに同じです。10年前に5年かけフルリフォームしました。私は53年生まれでして、死ぬまで建物躯体が持つのを期待してますが、どーなりますやら。

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    1. ふふふ.
      S50物には多かれ少なかれドロドロしたところがありますねぇ.
      伊勢原にあるわたしの実家もS50物で此処と似たような感じの色々な問題がありました.
      壊れたらその都度直せば住み続けるのは大丈夫だと思ってはおりますが、どーなりますか....

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  2. >後年、従兄弟は自殺しました
    その頃('80年代終盤)、私も電機業界に居りましたが、だいたい、
    ・一つのプロジェクトが終盤になると、「一人か二人は入院する者が出る」
    状態でした。まぁでも、
    ・某S社では「死人が出てる」らしい、という噂
    があったので、「ソレ寄りはマシ」と、言ってたのですが、「ホント」だったのですね。。。

    合掌

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    1. 80年代後半はプラザ合意とかで電機業界は曲がり角でしたから屍累々.
      そういえばソフト屋というジャンルが産まれたのもその頃で、メカ屋がソフト屋に転向してメカコンを書いてたりしました.

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  3. ソニータイマーの原因は、そんなところだった? 修理といっても、バイオなみの内部の配線ぐちゃくちゃは、ジャンカーでも、難易度高いから、同じようなものですかね?
    そこまで、設計悪いなら、メンテナンス無理そう。メカ全部取り替えしかないとか、回路基板と、メカの配線ぐちゃくちゃで、つなぎ直しは、フレキケーブルで面倒とか
    ビデオデッキの中をふたあけてみたことあるけど、アナログ回路が、まあ、配線のやまでした。

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    1. ソニーの業務用VTRは厚木の事業部がしっかりとしたメンテナンスをやってたのですが、ソニーマグネスケールは幼児みたいな会社だったのでメンテを放置プレイしてたんです.ひでー

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  4. スズキです。うーん、障子は見ているだけだと部屋と外を分ける最高の建具だと思うのですが、貼り替えとかめんどいですよね。そういう専門のお仕事(表具屋さん)もあるわけですし。

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    1. 断熱性が弱いというか無いので寒い日は寒く、暑い日は暑くなれます.

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