既にFRPを塗ったとのレポート済ですが、先んじていろいろと実験しましたのでその報告です.
恐怖のFRP初体験ですので、イキナリ本番の塗り工程には入りません.まずはFRP樹脂で様々な実験を行いノウハウを得ます.
検証したい事は、、、
・硬化時間
・硬化後の表面のベタつき(ノンパラ)
・硬化後の表面のベタつき(インパラ)
・合板表面が湿っているときの接着力劣化
・アセトンによる洗浄
・アルコールで洗浄できるか?
・ノンパラへペンキ上塗り
・インパラへペンキ上塗り
・滑り止め骨材を試す
・塩ビパイプにFRP樹脂
・FRPにシリコン接着剤
【実験体】
先日、中華WiFiカメラについてレポしましたが、カメラを屋外に設置するために雨避けの庇を3DPで作りました.ところがFDM方式3DPで印刷した物は、水を透過してしまいます.樹脂を積層するのでミクロな穴だらけだからです.なので表面に防水塗装をしなくちゃいけません.防水といえばFRPですから実験体になってもらいます.
↓もうひとつの実験体として、合板にもFRP樹脂を塗ります.合板の右半分は濡れ雑巾で湿らせておきます.湿った材料にはFRP樹脂の接着力が弱いと言われるのでその検証のため.
【ノンパラFRP樹脂の取扱い】
↓30gのノンパラFRP樹脂を取り分けました.やや黄色です.ねっとり感は光造形の樹脂と同等です.有機溶剤臭がかなり強く換気が必要です.取り分け作業中に指にFRP樹脂が付着したのでアルコールで拭いたら除去できました.いちいちアセトンを使わなくても済みそうでよかったです.
↓硬化剤は1%ですから0.3ml投入です.無造作にかき混ぜます.現在の気温は28℃.
↓合板へ塗った状態.
【インパラFRP樹脂の取扱い】
ノンパラFRPの表面はベタついて始末が悪いです.1回塗りにせよ、2回塗りにせよ、最終塗りはインパラの必要があります.
所有しているFRP樹脂はノンパラですが、これにパラフィンを3%程度投入するとインパラになるそうです.パラフィンは100mlボトルで¥500ぐらいです.パラフィンを有機溶剤に溶かしてある感じです.
塗り作業は以上.
【アセトン洗浄】
使い終わった筆の洗浄の実験です.塗布作業中にローラーをアセトンに漬けておかないと固化してしまうそうです.アセトンを入れる密閉容器を探したのですがやめて、ポリ袋で済まそうと思います.ポリ袋がアセトンで溶けてしまわないかの確認です.問題無さそう.
【硬化速度の観察】
↓残った樹脂を観察して硬化速度を観察します.(硬化剤1%、気温28℃)硬化剤投入後15分.まだトロトロ.
↓硬化剤投入から40分.粘度が上がって来ました.塗れるのはここまででしょう.
↓硬化剤投入から50分.ギリギリ液状ですが、粘度が高すぎて塗るのはもう無理です.
硬化剤投入から2時間後 ゼリーではないがまだ柔らかさが残っている状態
【ノンパラFRPの表面ベタつき】
ノンパラFRP樹脂の表面ベタつきは、時間の経過と共に薄れてゆきますがゼロにはならないというのが実感です.2日間も経てばサラサラ気味になりはしますが、完璧とは言えません.ノンパラFRP表面はベタつきの他にも問題があります.
1)上塗りペンキが付着しなくてダメ (後述します)
2)アルコールを垂らすとベトベトになってもう最悪.表面がアルコールで溶ける
↓酸素を遮断すれば固化するのだとすればこのように水にジャブ漬けして数時間放置したら表面まで固化してツルツルになるんじゃないでしょうか? 残念ながら、これは効果なかった.ベタつきは残ります.
【インパラFRPの表面はベタつかないのか?】
数時間後、完璧に表面まで固化しています.全く問題なし.
また、アルコールを垂らしてもベタベタになりません、優秀です.
【湿った合板へのFRP樹脂の密着度】
塗布後5時間経過してからFRP膜をピンセットで剥がしてみました.湿り気のあった合板からはFRP膜がビロビロと剥がれます.乾燥した合板からはなかなか剥がれません.乾いた合板へ塗るべしとの通説は正しいようです.
【ノンパラのベタつく表面への塗装】
ノンパラFRP面に水性エマルジョン塗料(黒)を上塗りしてみました.
上塗りしてから24H経っても、爪で黒塗料が剥がれてしまいます.上塗り黒塗料が酸素を遮断するのでFRP表層が固化すると期待したのですがそうはならず、いつまでもFRP表層がベタついているため黒塗料が固着しないのです.これではダメです.
ノンパラFRPの表面にはペンキ塗りはダメみたいです.上塗りはインパラFRP樹脂(トップコート)でなければダメと判断します.費用がかさむ、手間がかかる、ショックでかい.
【インパラのサラサラ表面への塗装】
インパラFRP表面は固化してスベスベしています.それは良いのですが、表面にパラフィン膜が薄く張っているはずですからペンキの乗りは悪いと思われます.水性/油性を上塗りしてみます.
本来は表面を薄く削ってプライマーを塗るなどの下地処理が必要とされますが、ここでは下地処理をせずに、インパラFRP表面に直接塗ります.
・インパラ表面へ塗った水性エマルジョン塗料 →びろ~っと剥がれて全然ダメ
・インパラ表面へ塗った油性塗料 →爪でこすると剥がれしまう
・なにもしないインパラFRP表面への塗装はダメと判断する
・なにもしないインパラFRP表面への塗装はダメと判断する
【滑り止め骨材】
滑らないように表面をザラザラにする添加物.細かくて粒径が均一な砂です.500gで¥200ぐらい.FRP樹脂の10%ぐらい追加するらしいです.
薄塗りした部分は骨材が表面に凸をつくり、滑り止めの効果がありそうです.
厚塗りした部分は0.5mmぐらいの厚みだと思いますが、骨材が樹脂内部に沈み込んでいて表面はスベスベです.骨材を表面に出したいなら厚塗りしないのが良さそうです.
【塩ビパイプにFRP樹脂】
FRP樹脂の溶剤はキシレンだと思います.(アセトンじゃなく)
なので塩ビパイプ+キシレンの関係性と思っていただくとして、塩ビパイプにFRP樹脂を塗って何が起きたか?
・塩ビパイプが溶けてデロデロになったりはしなかった
・塩ビとFRPは溶着しない (塩ビ表面が少し溶けて艶が無くなる程度)
・塩ビ表面のFRPはパリパリと剥がれてしまう
【FRPにシリコン接着剤】
コーキング材としてシリコン接着剤を使う場面があるでしょう.FRPにシリコンは接着できるのでしょうか? それを確かめます.
ノンパラ/インパラ樹脂を塗った板に、シリコン接着剤をスライムのように置きます.
まずはノンパラを剥がしますが、しっかりと接着しているので引っ張っても千切れるだけで接着面から剥がれる事はありませんでした.爪で擦ると取れてしまいます.
インパラも状況は同様です.
どちらが優れているか? 強いて言えばインパラの方が接着力が優れるように感じました.僅かな差ですけれど.インパラは表面にパラフィンが析出しているので接着力が激落ちすると予想していたのですが、シリコン接着剤はパラフィンが在っても無問題のようです.
・硬化時間
硬化剤1%投入、気温28度にて.
塗れるのは40分まで.
1時間で固化するがまだ柔らかい.
完全に固化するには3時間はかかる見込み.
・ノンパラFRP硬化後の表面のベタつき
酸素に触れる表面はなかなか硬化しないというメカニズム.
表面を触るとベタつくけれども樹脂が指に付着するほどではない.
酸素遮断のため水にジャブ漬けしてもベタつきは残る.
アルコールを垂らすとベッタベタになって悲惨.
・インパラFRP硬化後の表面のベタつき
パラフィン3%投入にて、数時間で表面まで硬化してツルツルになった.
アルコールを垂らしても無問題.優秀.
・合板表面が湿っているときの接着力劣化
湿り気のあった合板からはFRP膜がビロビロと剥がれた.
乾燥した下地にFRP樹脂を塗るのは必須.
・アセトンによる洗浄 →ポリ袋で実施可能
・アルコールで洗浄できるか? →指についた樹脂の除去ぐらいはアルコールで可能
・ノンパラ表面にペンキの上塗りはできるか?
水性エマルジョン塗料はだめだった.油性塗料もダメだった.
・インパラ表面に何もせずペンキを上塗りしたらどうなるか?
水性エマルジョン塗料も油性塗料もダメだった.
・滑り止め骨材
細かくて粒径均質な砂のようなもの.10%ほど投入して使う.
厚塗りすると樹脂内部に取り込まれてしまって滑り止めの役に立たない.
・塩ビパイプにFRP樹脂
溶けはしないが溶着もしないので、安定的に塗れたとは言えない.
・FRPにシリコン接着剤
無問題です.コーキングOKです.
以上です.
かしこ
さっぶ! 急に晩秋のかほりが・・・。
返信削除おおっ、これはまた保存版の頁が増えました。
ノンパラって使ったことなかったんですが、やっぱり時間を置いても完全には硬化しなんですね。しかし、こういうちゃんとデータを取ってする様子が、さすがメーカーの技術者さんだなぁっと。自分も、昔の職場でもFRPをちょこっと(手直し・養生程度)使いましたが、場末の町工場の作業などヤッツケでやっちゃいましてたから^^;)。
おはよーございます
削除実際にやってみて、通説はだいたい合ってました.
これでサーフボードの修理にも自信がつきました.
わたしは湘南に住んだことはございません!